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◇企業システム◇日本IBM、わが国初のクラウドコンピューティングセンター開設

2009-03-02 16:06:27 | システム開発

 【システム開発】日本IBMは、このほどクラウドコンピューティングのサービス拠点「IBM Computing on Demandセンター(IBM CoDセンター)」を幕張事業所(千葉市)に開設し、4月1日よりサービスの提供を開始する。同センターは日本で初、IBMではグローバルで7番目のセンターとなる。同センターのサービスは、①デジタルコンテンツ制作や宇宙開発②金融サービスでのスーパーコンピューティング環境利用③少しでも早くIT環境を整えて新規事業を実行したいユーザー④業務が集中する一定期間だけ現在のコンピューティング環境を拡張したいユーザー-などに最適なサービス。同時にユーティリティ業界、通信業界、製造業向けソリューションを提供し、各業界に最適なサービスを迅速に最適なコストで提供する。さらにソフトウエア製品の提供を行い、ユーザーがクラウドコンピューティング環境の導入・管理を低コストで行うことができるソリューションを提供する。 (日本IBM:09年2月25日発表)

 【コメント】これに先立つ2月11日米IBMは、Amazon Web Serviceのクラウド・コンピューティングを通じてソフトウエアを提供すると発表した。この新モデル「pay-as-you-go」は、ユーザーにAmazon EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)環境でのDB2、Informix Dynamic Server、WebSphere Portal、Lotus Web Content Management、WebSphere sMash、Novel SUSE Linux OSのアクセスを提供するもの。これによりソフトウエア開発者はこれらの技術的リソースの提供をクラウド環境で受けることができるようになる。

 この発表を見ても分かるように今、IBMはクラウドコンピューティング市場を他社に先駆けて開拓しようと必死になっていることがうかがえる。面白いのはLinuxについてはノベルのSUSEを提供すること。もともとIBMはドイツからSUSEを買収したことがあり、SUSEに近い関係にあるとはいえ、現在ノベルはマイクロソフトと提携し、SUSEを市場に広めようとしている。IBMが今回SUSEを提供したことは、マイクロソフトへ対する牽制球なのかもしれない。一方ではIBMと共同歩調を取っているレッドハットが、仮想化技術に特化したとはいえ、最近マイクロソフトと提携したことは、現在いかに業界内部が混沌としているかをうかがわせるものだ。

 今回日本IBMが、わが国初のクラウドコンピューティングセンター「IBM CoDセンター」(日本IBMでは、国内には特定のユーザーに向けたプライベートな施設が1拠点あるのみとしている)を開設したことは、同社のクラウドに対する意欲がいかになみなみならないものかをうかがわせる。ただ、今後クラウドが日本市場でどのような形態で定着するのかは、まだ先が見えてこない。ソフト開発ツールの提供は一つの狙い目であることは確かだが、アプリケーション面はCRM以外はまだ実績がないのが現状だ。

 今回の発表ではアプリケーションも発表された。同社によれば「例えばスマートメーターやデータ通信と音声通信の統合管理、製造ロボット、RFIDなどのスマート化された膨大なアセットと、従来のITアセットおよびインフラを統合管理するための共通プラットフォームを提供し、サービスを行う」としている。今後クラウドがこのようなアプリケーションに馴染む存在になっていくには、まだまだ解決すべき問題が山積している。(ESN)