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◇企業システム◇北欧の大手IT企業のEDB社がIBM汎用機とレッドハットLinuxの組み合わせを選択

2008-05-23 10:44:59 | システム開発

 レッドハットは、北欧最大級のITサービス企業のEDBビジネスパートナー社が、オラクルデータベースを含むアプリケーションのプラットフォームとして、Red Hat Enterprise LinuxとメインフレームのIBM System zの組み合わせを採用したと発表した。EDBは多岐にわたった分野にITサービスを展開しており、既にLinuxを基盤とするITサービス全般をRed Hat Enterprise Linuxを標準プラットフォームとして提供している。(08年5月21日発表)

 【コメント】今回の発表のキーポイントは、IBMのメインフレームとRed Hat Linuxとの組み合わせだ。IBMのメインフレームIBM System zは“Linuxメインフレーム”であり、全世界的に見ると隠れたベストセラー機種だ。マスコミはオープンシステム以外は関心が薄く、特にメインフレームのことなぞは眼中にない。ところが、日本をはじめ全世界の大手ユーザーはIBM System zを注目しており、実際に売れている。これは過去のメインフレーム資産を生かすという意義以外にも、メインフレームの持つ安定性や統合性にユーザーが注目していることにほかならない。オープン系のサーバーを大量に導入したユーザーは今、統合化のため仮想化ソフトを導入して悪戦苦闘している。メインフレームはもともと仮想化技術の母体となった機種であり、このことだけ取ればオープン系のサーバーの先を行っている。そして、メインフレームの弱点だったOSをLinuxに切り替え、オープン化を実現させたのがIBM System zである。

 今回、EDBはこのIBM System zにRed Hat Linuxを搭載したところにミソがある。Red Hat LinuxはLinuxの世界ではデファクトスタンダード化しており、IBMのメインフレームを組み合わせれば最強のコンビネーションとなる。レッドハットはこの組み合わせについて「セキュリティ面で大きなメリットがあるばかりでなく、論理パーティション(LPAR)といった仮想化技術を利用することで、アプリケーションをセキュアに独立させながら、同時にリソースをうまく配分できるといったメリットがある」と指摘し、
さらに「サーバーやストレージを一元的に導入・管理し、物理セキュリティを大きく向上させることができる」とも言っている。

 昔から、集中か分散かの議論が続いているが、結論は出ないであろう。企業における製造、販売の関係と同じだ。製造と販売が別々だから売上げが上がらないとして製販一体化をするが、社長が変われば製造と販売を分け、それぞれの専門性を追求させる。そして、また、社長が変われば製販一体化に踏み切る。集中か分散かも同じで、これまで分散化(オープン化)の嵐が吹き荒れていたが、今はサーバーやストレージの統合化がユーザーの重要な課題となっている。企業内に無数に置かれていたパソコンも、セキュリティ上の観点からシンクライアント化し、サーバーに統合されつつある。まさにこれまでの分散指向から集中へと、昔の道へ戻りつつある。そして集中化が完了すると、今度は逆に分散化へと向かい始める。

 今後の企業システムは集中化(統合化)へと向かうことは確実であるが、一方プラットフォームを支えるOSはというと、マイクロソフトのWindowsとLinuxの一騎打ちが始まろうとしている。このような状況下、これまで一人勝ちしてきたマイクロソフトは危機感を強めており、次々に手を打とうとしている。その一つがこれまでのクローズド策を止め、オープン化政策への変更である。その成果としてマイクロソフトのOpen XMLがISO/IECで国際標準として認められたことが挙げられる。もし、国際標準として認められないとすると、マイクロソフトのOfficeはオープンソースソフトウエア(OSS)のOpenOfficeにその座を開けわたさなければならないところであった。さらに、今回マスコミでも大きく取り上げられているヤフーの買収である。この背景には独自のOfficeソフトを無料で提供し始めたグーグルの躍進に対する危機感がある。グーグルはOSSを駆使したビジネスを展開中で、もし、このままグーグルの一人勝ちが続くとOSSがマイクロソフトに取って代わる存在になることが予想され、マイクロソフトは必死だ。

 今回、レッドハットから発表された北欧最大級のIT企業のEDBがIBMのメインフレームとRed Hat Linuxの組み合わせを選択したことは、その背景にマイクロソフト対OSSという構図が隠されていることを見逃すべきでない。近い将来、貴社のシステムもWindowsをベースにするのかOSSをベースにするのかの判断を求められることになろう。(ESN)