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◇企業システム◇ノベルが「世界的な不況がLinuxの採用を急速に加速」と発表

2009-03-23 11:37:52 | システム開発

 【システム開発】米ノベルがスポンサーとなり米IDCが実施した市場調査により、「世界的な不況がLinuxの採用を急速に加速している」ことが判明した。同調査は09年2月に実施され、対象となったのは従業員100人以上の企業のIT管理者300人以上。回答企業の多くがLinuxの高い経済性に魅力を感じており、半数以上が09年にLinuxの導入を加速すると回答した。また、調査対象者の72%以上が09年にサーバーとしてのLinuxを積極的に検討している、あるいは導入の拡大を既に決定していると答えている。さらに、デスクトップについても68%以上が同様の回答を寄せている。 (ノベル:09年3月17日発表)

 【コメント】Linuxが経済性で優位に立っているのは、OSS(オープンソースソフトウエア)の代表的ソフトウエアであることから、当たり前といえばそれまでだが、これまでサポート面などにコストがかかり、トータルコストではウインドウズに対して必ずしも優位とはいえないのでは、などの疑問が生じていたことは事実であろう。しかし、ここに来て世界同時不況の激流に放り投げられた企業にとって、LinuxなどOSSのコスト面での優位性は、仮にイニシャルコストでの優位性であったとしても、何物にも代えがたいメリットであることは疑う余地はないというのが、今回の調査結果から読み取れる。

 今回の調査では、アジア/太平洋地区が一番Linux採用の拡大に積極てきであるという調査結果が出ていることも注目されるところだ。このことは、これまでアジア地域においてAsianuxなどLinuxの標準化などの地道な取り組みの成果だともいえなくはなかろう。それと、アジア/太平洋地区は、マイクロソフトとは一定の距離感で対応してきたことも、比較的自由にLinuxを採用できる土壌となっているのかもしれない。また、回答者の67%は、LinuxとWindows間の相互運用性および管理性がOSを選択する際の最も重要な要素の一つであると回答しているが、このことが解決されないと、Linux採用の機運が例え盛り上がったとしても、導入をためらうユーザーが多くなるという結果に終わることも考えられる。

 LinuxとWinndows間の相互運用性や管理性を考える場合、仮想化の存在の比重が高いことも今回の調査結果からも反映されている。つまり、今回の調査結果では、回答者の半数近くが仮想化への移行がLinuxへの移行を加速していると回答しているのだ。これはわが国において、マイクロソフトが仮想化をキーワードとしてLinuxベンダーとの提携を加速させていることからも裏づけられる。マイクロソフトは、仮想化事業についてレッドハットに続き大塚商会などとも協業を発表したばかりであり、仮想化によってユーザーがLinuxへ傾斜することを黙って見ているのではなく、積極的にかかわりを持ちたいというのがマイクロソフトの狙いであろう。

 ユーザーのLinux採用で問題になるのが、デスクトップ分野であろう。今回の調査では「調査対象の72%以上が09年にサーバーとしてのLinuxを積極的に検討している、あるいは導入の拡大を既に決定していると答え、さらにデスクトップについても68%が同様の回答を寄せている」としている。日本市場では日本語対応の問題を含め、越えなければ問題も少なくなく、必ずしもこの数字を鵜呑みできないことも事実である。しかし、Linuxをデスクトップ環境にも採用しようという動きは近い将来出てくることは間違いないことであろう。今年1月にアシスト(社内ではLinuxPCへ移行済み)は、神戸の食品スーパーのトーホーがマイクロソフト・オフィスからOSSのオープンオフィスへ移行したと発表した。このようなケースはわが国ではまだまだ特殊なケースだが、近い将来、特殊なケースとはいえない状態となっているかもしれないの。(ESN)