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◇企業システム◇日本IBMが世界で5番目のクラウド・コンピューティング・センターを開設

2008-08-07 14:03:46 | システム開発

 【システム開発】日本IBMは、日本で初めて、クラウド・コンピューティング環境を提供する施設「IBMクラウド・コンピューティング・センター@Japan」を晴海事業所内に開設した。IBMは07年6月の米国シリコンバレーに続き、これまでアイルランド、中国、南アフリカでクラウド・コンピューティング・センターを開設してきた。IBMは08年2月に革新的なコンピューティング活用のビジョン「New Enterprise Data Center(NEDC)」を発表した。このNEDCは、現在IT基盤が抱える課題を解決し、コスト削減や運用効率恵を達成すると同時に、グローバル化が進む市場において、企業が競争力を高め、持続的な成長を維持していくためのIT基盤の確立を目指している。NEDCの実現により、サーバーやストレージ、ネットワーク、ミドルウエアなどのIT資源を意識することなく、ビジネス目標に合わせた迅速な「ITサービス」の提供ができるようになる。 (08年8月1日発表)

 【コメント】これまでのコンピュータシステムの利用形態は①メインフレームによる集中処理システム②オープンシステムによるクライアント・サーバーシステム③インターネットによるWebシステム―といった変遷を辿ってきた。そしてこの次にくる利用形態として注目されているのがクラウド・コンピューティングである。このクラウド・コンピューティングは、ユーザーはインターネットのクラウド(雲)の後ろにあるサーバーなどの接続先を意識する必要はなく、単にサービスを受け取るだけでいいシステムを指す。つまり、クラウド・コンピューティングとはあくまで利用形態に着目した考えといえる。

 06年8月にグーグルのエリック・シュミットCEOが最初にクラウド・コンピューティングという言葉を使ったと言われる。翌年の07年11月にはIBMは「Blue Cloud」計画を発表し、その名が広く世界に知られるようになっていった。さらにIBMは08年2月にクラウド・コンピューティング機能を取り入れた次世代IT基盤「New Enterprise Data Center(NEDC)」を発表し、サーバーやストレージ、ミドルウエアなどのIT資源を意識することなく、ITサービスを提供するデータ・センター構想を打ち出し、クラウド・コンピューティングの実現が大きく一歩前進使用としている。

 クラウド・コンピューティングを具現化したシステムの一つがSaaSといえる。SaaSは導入企業側にはサーバーを置かず、パソコンによりサービスだけを従量制(使った分だけ払う)で受け取ることができる。つまり導入企業はどのサーバーに接続しているかは意識する必要はない。ただ、SaaSがすぐにもユーザーを拡大できるかというと、必ずしもそうではない。その最大のネックはコストを除くと企業ユーザーの意識にある。今後企業ユーザーが、自社ではサーバー、ストレージ、ミドルウエアを導入しないというシステム文化に切り替えれば、クラウド・コンピューティングの時代は意外に早くやってくるが、そうでないと絵に書いた餅で終わってしまう可能性もある。しかし現在、SaaS以外にも、Web2.0、Webサービスなどクラウド・コンピューティングを形成するために必要な技術の成果は着実に増えつつある。これらを考えると、今回日本IBMがクラウド・コンピューティング・センターを開設した意義は大きいと言える。(ESN)