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◇企業システム◇NTTデータが独BMWの情報子会社を子会社化

2008-08-05 11:39:00 | SI事業

 【SI企業】独BMWとNTTデータは、BMWグループ98%出資の情報システム子会社である独サークエント社の発行済株式の72.9%を、NTTデータの完全子会社である在ドイツのNTTデータヨーロッパ社を通じて、BMWグループから譲り受けることで合意した。これまでNTTデータは日本国内で企業の情報子会社を買収する「ITパートナー戦略」を展開してきたが、今回これを海外にも広げたもの。サークエントはNTTグループの一員となることで、ヨーロッパにおける大規模顧客に対しグローバルサポートを提供できるようになる。なお、NTTデータは08年1月に製造業向けSAPに強みを持つ独アイテリジェンス社と資本提携をしており、今回のサークエントの子会社化を加え、今後ヨーロッパでのIT事業の拡大を図る。 (08年8月1日発表)

 【コメント】長らく事業の低落傾向に悩んでいた日本IBMを救ったのは、IBMが全世界規模で展開している「グローバリー・インテグレイテッド・エンタープライズ」戦略だといわれている。これまで日本IBMは米IBMの子会社とはいえ、日本国内市場を相手に事業拡大を実現してきた。ところが日本市場は永遠に拡大を続けるわけではなく、どうしても規模の拡大には限界が生じる。そうなると日本市場のみを相手とする事業戦略を転換し、世界を対象とするビジネスモデルに切り替える必要が出てくる。IBMの「グローバリー・インテグレイテッド・エンタープライズ」戦略は徹底していて、日本IBMの総務部門の人件費を下げるため、総務の業務を中国にアウトソーシングしたりすることを平然と行う。また、世界共通の業種区分により各国の重複部分の無駄を排除するなど、今IBMは徹底したワールドワイド戦略が功を奏している。

 今回、NTTデータがBMWの情報子会社のサークエントを子会社化した件は、日本のSI企業がワールドワイドでの事業戦略に成功できるかどうかの試金石になろう。というのは日本IBMの事例を見ても分かる通り、日本のIT企業はもう日本市場のみを相手にしていたのでは、成長がおぼつかないことははっきりしている。自動車や電機などの日本の大手企業は既にワールドワイドでの事業展開が当たり前となっており、当然それをサポートるSI企業を求めてくる。ところが日本のIT企業やSI企業はこれまで日本語という安全地帯に守られ、日本市場だけに安住してきた。しかし、この日本市場だけのビジネスモデルは現在破綻しかかっている。顧客である日本の企業が世界に飛び出し、逆に中国とかインドのSI企業が日本市場を目指し、上陸しつつある。つまり“惰眠”をむさぼっているうちに日本のIT企業・SI企業は抜き差しならない状況に陥ってしまったわけだ。

 NTTデータはこれまで日本国内で企業の情報子会社を買収する「ITパートナー戦略」を展開し、従来の官公庁市場一点張りからの脱却を図り、それなりの成果を収めてきた。今後の問題は、これらの情報子会社の親会社がワールドワイド化する事業展開にNTTデータがどう対応するかだ。その答えの一つが独サークエントの子会社化であろう。NTTデータは08年1月に独アイテリジェンスと資本提携し、SAP ERP事業に乗り出したが、これもその一環に組み込まれよう。NTTデータの脱官公庁戦略のもう一つは、国内の中小企業市場開拓である。いずれにしてもNTTデータのワールドワイド戦略の成否は、日本のSI企業全体の今後の成長に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。(ESN)