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◇企業システム◇NECがSaaSプラットフォーム提供事業を発表

2008-04-02 20:01:51 | システム開発
 NECは今年9月末から、SaaSを中心としたサービスプラットフォーム提供事業を開始する。同事業は①アプリケーションサービス領域②プラットフォームマネージドサービス領域―の2つの領域でのサービスを提供するもの。アプリケーションサービス領域では業種・業際に特化したパッケージソフトウエアのSaaS化を実施する。また、プラットフォームマネージドサービス領域では、アプリケーションの開発から運用までのサービスのライフサイクルを支援するトータルサービスとして提供する。このほか、今回パートナー支援の新制度「SaaSビジネスイノベーションプログラム」をスタートさせる。同プログラムは、パートナーに対するサポートのみならず、アプリケーションベンダーによるSaaS事業化への移行支援も行うことにしている。(08/03/31発表)

 【コメント】SaaSは、OSS、仮想化に続き出て来た新技術だ。今は何かというとSaaSが話題に上るが、その実態はというと、はなはだ心もとない。もともとASPがあり、以前からソフトウエアのオンラインによる提供はあったわけであり、OSSや仮想化ほどの目新しさはないといってもいいほどだ。もし、違いがあるとすれば、①シングルシステム・マルチテナント②マッシュアップの2点を挙げる人がいる。シングルシステム・マルチテナントは昔のTSSみたいなもの。そしてマッシュアップは複数のソフトを組み合わせ1つのソフトのように扱えるもので、現在スイートと呼ばれているような一連のソフト製品のこと。問題は、ASPがカスタマイズできないのに対して、SaaSはできるとする主張だ。果たして事実なのか。一つのシステムを複数のユーザ^が共有して、しかも自由にカスタマイズ可能というのは、ちょっと無理があるように思える。

 SaaSが威力を持つのは、例えば法令の改正がしばしな行われ、1ユーザーごとに対応するのが大変な場合などだ。また、鉄道路線や運賃など日本に1つ作っておいて、それを皆が利用すれば、相互に有益なシステムが構築可能となる。つまり、SaaSは、有効なアプリケーションとそうでないアプリケーションが明確となる。ところが現在のSaaSブームは、それらをごっちゃにして論じられるから、実態が見えてこない。ハンディターミナルは運輸業とか製薬業、生命保険、コンビニ・スーパーなどでは必須のツールとして定着しているが、いわゆる、モバイル端末とは一線を画している。それと同じように、一般のパッケージソフトとSaaSはやはり違う。SaaSはハンディターミナルように特定のアプリケーションには必須のツールとなりうる可能性を秘めているが、一般のパッケージソフトとは置き換わらないのではないか。

 この根拠となる点はいくつかある。一つは前に触れたカスタマイズの限界が挙げられる。1ユーザーごとに特化したカスタマイズがどこまで可能か未知数だ。また、回線がダウンしたらどうなるのか。このことを考えると基幹システムへのSaaS適用は慎重にならざるを得ない。もう1つは価格の点だ。これまでパッケージソフトとの価格の差はどうなるのかが、現時点では見えてこない。SaaSの価格が安くなると、これまでパッケージ販売をしてきたディーラーは黙ってはいまい。そうなるとSaaSの価格が安いという保証はどこにもない。ここまで考えると、今のSaaSブームをもっと覚めた目で見る必要性が出て来よう。(ESN)