おまけの時間

仕事に追われて過ぎゆく日々の“しおり”として。

読み手に解釈が委ねられる本・恩田陸「ユージニア」

2010年01月10日 00時21分04秒 | 本の紹介
この本、本当におもしろくて一気に読んでしまいました。
正月、金沢から帰る電車で読む本を探していたら、
「金沢を舞台に書かれた本」というポップで売られていました。

「金沢の名所とかが随所に出てくるのかな?」
という思いだけで購入。出発まで10分しかなかったもので。

読み始めると、章ごとに語りも聞き手も違うことにまず違和感。

しかし、そのカラクリがわかってくると、
「犯人は何故こんなことを?」
「最後にどういう結末が待っているのか?」
という興味がどんどん膨らんできて、一気に物語に引き込まれます。

そして、最後におとずれる「充たされない感じ」
犯人がわかって“あースッキリ!”という気分からは程遠いものです。
おそらく、この本は単なるミステリーでくくってはいけないのだと思います。

この本にでてくる「忘れられた祝祭」と同様、読み手に解釈を委ねる作りになっている。
そして、「事実とは主観である」ということがこの本の最大の魅力かも。

しかし、「犯人は何故?」という謎解きも当然がら魅力のひとつ。
この本に惹きつけられたものの、読後感がモヤモヤして仕方がない人は読み返すことになるはずです。
僕もそのうちの一人で、読み終わってすぐに頭から読み返してしまいました。
そして、はじめて読んだときには気付かなかったことが様々わかってきます。

しかし、それでも本当の真実にはモヤがかかった感じがします。
それは、犯人の動機の本当のところが隠されているような気がするからです。

自分なりの解釈で“納得”することはできます。
でも、それがあくまで主観であって、やっぱり“真実”とは違うんじゃないか?
結局、この小説で“真実”と“納得”は同時に得られないんじゃないかと思うのです。

量子力学の不確定性を知ったときのような感覚に近いかも。
とにかく、面白い小説だと思いました。
恩田陸の本はまだまだ読んでない本があるので、また手を伸ばしてみよう。


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