開業医の妻のたわごと

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@人間万事塞翁が馬

古き良き時代(とき)

2008年06月12日 00時45分04秒 | Weblog
私は昔、長屋が並んでいる小さな街並の小さな家に住んでいた。

高2で家を立て替えるまで、家にはお風呂も無かった。

家の前の道は車1台分の道幅しかないような所。


数日前、

いつものようにチャリンコでスーパーにお買い物に行った日、

私がその昔、住んでいた家(今の家から徒歩30分ぐらいの所)の近くに

今も住んでいる70歳ぐらいの女性とレジで会った。


なつかしくなって思わず私は声をかけた。

「こんにちは!」

その女性は何十年も会ってないのに、私にすぐ気づいてくれた。


「アラ、○ちゃんやね? な、トマト食べる?」

彼女はトマトを一箱抱えながら私にそう言った。

私が「トマト好きです!」と答えると、

近くにあったビニール袋にトマトを3個詰めて私にくれた。


私が

「あら、せっかく買われたのに減らしてしまうから申し訳ないです。

私、今、何もお返しするものもなくて。」と言うと、

その女性は微笑んで次のように言った。


「ええねんわ。どうせ普段は2人暮らしやから、こんなに食べへんのやけどな、

今日は息子夫婦が帰ってくるから、いっぱい買ったんや。

残ったら、息子たちが持って帰るだけやしな。

あんたのお母さんにはいつもお世話になったり、色んなものもらったり

してるんやわ。」


嬉しかった。

彼女のあったかい心におおわれて私は思わずニコニコした。

そう、その時、とてもとても幸せな気持ちになったんだ。


私は何度も彼女にお礼を言って、自転車で帰ると言う彼女に

『気をつけてね』とつぶやきながら、ちょっと曲がりかけた背中を見送った。


いいな。何だかいいな。人と人との何気ない繋がり。


今はすっかり無くなってしまったように思っていたけど、

母の年代の人の気持ちの中には、まだそのまま残っているんだ。


帰宅後、夫にその話をしたけど、

東京、横浜の中心地育ちの夫にはよくわからないようだった。



夏が来て、トマトを見たり、トウモロコシをゆでたりすると、

無性に昔がなつかしくなって、胸がキュンとする私。


そしてその時、

私の心の中に、田舎の祖父母と、若い頃の私の母と幼かった日の兄と私が

必ず登場するんだ、夢のように。


その夜、トマトを頬張った時・・・、不覚にも涙がポロリと落ちた。

もう返る事は絶対ないのね、あの古き良きとき。
コメント (2)
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