昭和50年代。
私は消費者金融会社に就職した当時の頃でした。
お客様に融資するにあたり社内での貸付規定がありました。
勤務年数や持ち家かどうか。収入など年齢や家族構成も検討しながら支店長が融資可否や融資金額を決裁するわけです。
その貸付規定の中で日本国籍を有しない者は貸付不可とありました。
当時の事です。
何故?貸付不可なのか。新入社員の私は支店長に質問したのです。
すると支店長は
『外国人は住民票がないねん。だから転居されると次の転居先がわからへん。日本人は住民票があって戸籍もあるから追跡調査や親族が判明するやろ?借りた本人が行方知れずになったとしても親や兄弟、親族に連絡すると居場所が分かったり場合によっては代わって払ってくれるからな。外国人は、それが出来へんからリスクが高い。そやから貸付不可なんや。別に差別して貸さないわけと違うで。』と説明してくれたのです。
昭和58年春の頃です。今のように貸金行法などない時代です。
ま、正直、なんでもありの時代でしたが。
私の上司であった当時の支店長は常識人でしたね。(^。^)
私が配属された支店は少し行くと鶴橋でしたので韓国や朝鮮国籍の方々の多いエリアでした。
『ここはY君も知っての通り外国人が多い地域やからお客様からの問い合わせ電話や新規ご来店で外国人の方も来られるから十分に配慮して窓口で応対せなあかんよ。』
凄くデリケートなことです。
少し言葉を間違えたら大変。
私も気をつけて対応したのですが。
トラブルが起きてしまったのです。
ある日、支店に新規融資の申し込みで男性が来店されました。
私はご本人確認書類の提示をお願いすると国民健康保険証一点だけ出されたのです。
お客様からお預かりしバックヤードへと。
バックヤードには支店長が待機してました。
お預かりした国民健康保険を支店長に見せると
『お断りやな。』一言でした。
『え?何でですか?』そう尋ねたところ。
『国民健康保険には番号があるやろ?この番号で日本国籍か、そうでないかわかるんや。とにかく断りやな。直ぐお帰りさせたらあかんよ。審査しますって言ってバックヤードに戻っておいで。』
私は支店長の指示に従ってお客様へ審査すると伝えてバックヤードへと戻りました。『Y君、一応、情報センターに照会かけてみて。』
当時は電話でセンターに連絡をし名前と生年月日を伝えると、その方の借入状況や事故情報を教えてくれてたのです。
情報センターは、その後、端末に変わり、やがて銀行関連、信販関連、消費者金融関連が一本化されますが当時は、それぞれの業界のみしか顧客の債務状況は分からなかったのです。
私は電話で情報センターへ問い合わせすると?
その方の借入は全くありませんでした。
『支店長、借入ないですけど。どうやって断りますか?』
借入があれば、それを理由に断れたのですが無いのですから困ったのです。
『そやなぁ。もし?お客様から何で、あかんねん?って言われたら総合的判断です。と伝えとき。』
この時は軽い気持ちで私も支店長の指示通りしようとカウンターでお待たせしていたお客様のところへと戻り『申し訳ございません。ご融資は出来ません。』と伝えたところ。
『あー!?何でやー!俺は、どこも借りてへんぞー!どういうこっちゃ?』急に声を荒げるお客様。『はい。総合的判断です。』
すると男性のお客様は更に激昂。
『なんやとー?総合的判断だぁーー?どんな判断やねん!言うてみぃーー。』
困り果てた私をみかねたのかバックヤードに居た支店長がカウンターにやってきました。
『お客様、私が支店長のM田と申します。ご融資が出来ないのは、この者が申し上げた通り当社の基準で総合的に判断・・』支店長の言葉をさえぎるように男性は『何を、かしこまって言うてんじゃ!俺が日本とちゃうから断ってやろー?そうなら、そうと言わんかい!』
支店長は至って冷静に『そうでしたか。お客様は日本人ではないのですか。でも、それは違います。あくまでも当社の規定によるものです。』
『ほな、その規定を言えや!』
『社外秘ですので申し上げることは出来ません。総合的というのは当社はお客様の属性などを基にスコア式で行なっております。とだけお伝えさせていただきます。ご融資出来ないものは出来ません。』毅然と対応した支店長に対して少しずつ冷静さを取り戻していったお客様は
『俺は韓国人や。大手は、どこ行っても貸してくれへん。ある大手の消費者金融から、それを理由に断られた。たぶん、あんたんとこも、同じなんやろうと俺は思う。俺かて好き好んで韓国人として日本で生まれたわけやあらへん。こうやって普通に働いて月給もらってんねん。でも急にお金が要るときって日本人も韓国人もないやろ?な、店長さん。そう思わんか?』
支店長はあくまで冷静に。
『お客様のおっしゃることは分かります。私個人的には国籍でどうこう思うことはありません。しかし私も雇われの身分です。会社の方針には従うしかございません。また、お客様が韓国の方なのか、日本の方なのかご来店されて分かるわけでもありません。あくまでスコアに基づき支店長としての決裁範囲でない方にはご融資したくても出来ないのです。』
お客様は納得はされませんでしたが。
『別にあんたらが悪いわけとはちゃうのは分かってるで。借りられへんもん、しゃーないけど。そやけど。俺の気持ちも察してくれや。』
お客様はお帰りされました。
本来、このような事は許されるべきではありません。お断りの理由は日本国籍でなかったのは事実だったのです。
私は、今でも当時の事は忘れようがありません。
そして
私の心に一本の針が刺さったまんま現在でも残っています。
この日、営業を終わってから。
『Y君、今日みたいな事、これから何度か経験するよ。心が痛むけどあくまでも仕事や。でも自分の中で絶対に差別心は持ったらあかんで。必ず、そんな心は見抜かれるから。』
この支店長の言葉は忘れていないつもりだったのに。
支店長は、人を差別や偏見で見ない方なのです。
人の学歴や出自、お金持ちとかビンボーとか
全く関係なく人としてしか見ない支店長でした。
『Y君、俺らの仕事自体が世間から差別や偏見で見られる事が多いねん。クレジットカード申し込みしてもサラ金ってだけで断られる。だから今日のお客様の気持ち、俺は凄くわかるねん。』
そう。
消費者金融の社員ってだけで
差別や偏見を私は、その後、何度も経験して行ったのです。
私は消費者金融会社に就職した当時の頃でした。
お客様に融資するにあたり社内での貸付規定がありました。
勤務年数や持ち家かどうか。収入など年齢や家族構成も検討しながら支店長が融資可否や融資金額を決裁するわけです。
その貸付規定の中で日本国籍を有しない者は貸付不可とありました。
当時の事です。
何故?貸付不可なのか。新入社員の私は支店長に質問したのです。
すると支店長は
『外国人は住民票がないねん。だから転居されると次の転居先がわからへん。日本人は住民票があって戸籍もあるから追跡調査や親族が判明するやろ?借りた本人が行方知れずになったとしても親や兄弟、親族に連絡すると居場所が分かったり場合によっては代わって払ってくれるからな。外国人は、それが出来へんからリスクが高い。そやから貸付不可なんや。別に差別して貸さないわけと違うで。』と説明してくれたのです。
昭和58年春の頃です。今のように貸金行法などない時代です。
ま、正直、なんでもありの時代でしたが。
私の上司であった当時の支店長は常識人でしたね。(^。^)
私が配属された支店は少し行くと鶴橋でしたので韓国や朝鮮国籍の方々の多いエリアでした。
『ここはY君も知っての通り外国人が多い地域やからお客様からの問い合わせ電話や新規ご来店で外国人の方も来られるから十分に配慮して窓口で応対せなあかんよ。』
凄くデリケートなことです。
少し言葉を間違えたら大変。
私も気をつけて対応したのですが。
トラブルが起きてしまったのです。
ある日、支店に新規融資の申し込みで男性が来店されました。
私はご本人確認書類の提示をお願いすると国民健康保険証一点だけ出されたのです。
お客様からお預かりしバックヤードへと。
バックヤードには支店長が待機してました。
お預かりした国民健康保険を支店長に見せると
『お断りやな。』一言でした。
『え?何でですか?』そう尋ねたところ。
『国民健康保険には番号があるやろ?この番号で日本国籍か、そうでないかわかるんや。とにかく断りやな。直ぐお帰りさせたらあかんよ。審査しますって言ってバックヤードに戻っておいで。』
私は支店長の指示に従ってお客様へ審査すると伝えてバックヤードへと戻りました。『Y君、一応、情報センターに照会かけてみて。』
当時は電話でセンターに連絡をし名前と生年月日を伝えると、その方の借入状況や事故情報を教えてくれてたのです。
情報センターは、その後、端末に変わり、やがて銀行関連、信販関連、消費者金融関連が一本化されますが当時は、それぞれの業界のみしか顧客の債務状況は分からなかったのです。
私は電話で情報センターへ問い合わせすると?
その方の借入は全くありませんでした。
『支店長、借入ないですけど。どうやって断りますか?』
借入があれば、それを理由に断れたのですが無いのですから困ったのです。
『そやなぁ。もし?お客様から何で、あかんねん?って言われたら総合的判断です。と伝えとき。』
この時は軽い気持ちで私も支店長の指示通りしようとカウンターでお待たせしていたお客様のところへと戻り『申し訳ございません。ご融資は出来ません。』と伝えたところ。
『あー!?何でやー!俺は、どこも借りてへんぞー!どういうこっちゃ?』急に声を荒げるお客様。『はい。総合的判断です。』
すると男性のお客様は更に激昂。
『なんやとー?総合的判断だぁーー?どんな判断やねん!言うてみぃーー。』
困り果てた私をみかねたのかバックヤードに居た支店長がカウンターにやってきました。
『お客様、私が支店長のM田と申します。ご融資が出来ないのは、この者が申し上げた通り当社の基準で総合的に判断・・』支店長の言葉をさえぎるように男性は『何を、かしこまって言うてんじゃ!俺が日本とちゃうから断ってやろー?そうなら、そうと言わんかい!』
支店長は至って冷静に『そうでしたか。お客様は日本人ではないのですか。でも、それは違います。あくまでも当社の規定によるものです。』
『ほな、その規定を言えや!』
『社外秘ですので申し上げることは出来ません。総合的というのは当社はお客様の属性などを基にスコア式で行なっております。とだけお伝えさせていただきます。ご融資出来ないものは出来ません。』毅然と対応した支店長に対して少しずつ冷静さを取り戻していったお客様は
『俺は韓国人や。大手は、どこ行っても貸してくれへん。ある大手の消費者金融から、それを理由に断られた。たぶん、あんたんとこも、同じなんやろうと俺は思う。俺かて好き好んで韓国人として日本で生まれたわけやあらへん。こうやって普通に働いて月給もらってんねん。でも急にお金が要るときって日本人も韓国人もないやろ?な、店長さん。そう思わんか?』
支店長はあくまで冷静に。
『お客様のおっしゃることは分かります。私個人的には国籍でどうこう思うことはありません。しかし私も雇われの身分です。会社の方針には従うしかございません。また、お客様が韓国の方なのか、日本の方なのかご来店されて分かるわけでもありません。あくまでスコアに基づき支店長としての決裁範囲でない方にはご融資したくても出来ないのです。』
お客様は納得はされませんでしたが。
『別にあんたらが悪いわけとはちゃうのは分かってるで。借りられへんもん、しゃーないけど。そやけど。俺の気持ちも察してくれや。』
お客様はお帰りされました。
本来、このような事は許されるべきではありません。お断りの理由は日本国籍でなかったのは事実だったのです。
私は、今でも当時の事は忘れようがありません。
そして
私の心に一本の針が刺さったまんま現在でも残っています。
この日、営業を終わってから。
『Y君、今日みたいな事、これから何度か経験するよ。心が痛むけどあくまでも仕事や。でも自分の中で絶対に差別心は持ったらあかんで。必ず、そんな心は見抜かれるから。』
この支店長の言葉は忘れていないつもりだったのに。
支店長は、人を差別や偏見で見ない方なのです。
人の学歴や出自、お金持ちとかビンボーとか
全く関係なく人としてしか見ない支店長でした。
『Y君、俺らの仕事自体が世間から差別や偏見で見られる事が多いねん。クレジットカード申し込みしてもサラ金ってだけで断られる。だから今日のお客様の気持ち、俺は凄くわかるねん。』
そう。
消費者金融の社員ってだけで
差別や偏見を私は、その後、何度も経験して行ったのです。