縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

天国にいちばん近い市場 ~ 釧路『和商市場』

2009-11-06 23:19:52 | もう一度行きたい
 先日、初めて釧路に行った。釧路といえば、我が国でも有数の漁獲量を誇る漁業の町、旧十條製紙(現日本製紙)に代表される紙の町、そしてアイスホッケーの町である。釧路湿原、タンチョウなどの自然も思い浮かぶ。
 もっとも今回は阿寒湖や摩周湖を回った帰りにちょっと寄るだけであり、さして期待はしていなかった。ところがどうして、なかなか味のある(おいしい?)町だった。

 釧路には期せずして二泊した。帰りの飛行機が霧のため欠航になり滞在が一日延びたのである。
 釧路空港は市内から車で小一時間、釧路湿原を越した先にある。空港というのに近くに飲食店や土産物屋はおろかガソリンスタンドすらない ど田舎、もとい大変自然の豊かな所にある空港だ。
 空港に行く一本道、あたりが妙に白いな、ガスっているなと思ったが、まさか欠航するとは思わなかった。折り返し飛ぶはずの飛行機が、この霧のため東京で出発を見合わせてしまったのである。結局、妻と二人、乗ってきたバスで夜道を市内へと引き返し、そして昨日と同じホテル、それも隣の部屋に泊まった。

 “ふりだし”に戻る。いったいこの3時間は何だったのだろう。ただ、疲れだけが・・・。

 ここで、普通なら、踏んだり蹴ったり、散々な目にあい、「もう釧路になんか来るものか。」となるところだが、今回は違う。二人で「今度、いつ釧路に行こうか。」などと話している。なぜか? その答えは『和商(わしょう)市場』にある。

 『和商市場』はJR釧路駅のすぐ側にある。市民の台所であり、そして釧路の一大観光スポットでもある。
 ここのシステムというかサービスが凄い。その名は、誰が呼んだか“勝手丼”。まず丼のご飯を買い、そこにお気に入りの魚介類を買って載せ、自分好みの海鮮丼を作って行くのである。多くの店で、ウニ、イクラ、エビ、ホタテ、ホッキ貝、鮭など獲れたての魚介類が、食べやすいよう、丼に載せやすいよう、少量で売られている。あたかも お店の一部がお寿司屋さんのネタケースといった感じだ。市場の中にはちゃんと食事するスペースもある。
 この勝手丼、元々は貧乏旅行のライダーにも新鮮でおいしい魚介を食べてもらおうと、市場のある魚屋さんのご主人が、ライダーにご飯だけ買ってこさせ、その上に魚介を少しずつ載せてあげたのが始まりだという。ご主人の温かい心づかいが、名物・勝手丼を生んだのである。

 が、実は我々は勝手丼を食べてはいない。我々は市場でカニを、毛ガニを食べたのである。
 市場の中を、これ おいしそう、あれもおいしそう と目移りしながら歩いていたが、ふと ある店の前で立ち止まった。
  「このカニ、安い。」
 聞けば、茹でたときに足が一本取れたカニだという。わけありのカニだ。料理屋には卸せないし、贈答にも使えないが、味はまったく問題ないとのこと。多少小ぶりだが、これで一杯1,000円は安い。明日が日曜で店が休みのため特別サービスかもしれない。
 我々はお店の人に身の詰まったカニを選んでもらい、そしてカニを食べるのに必要な、ハサミ、ボール、新聞紙等を貸してもらった。さあ、いざ、テーブルへ。

 ちょっと待て! 何かが足りない。カニといえばお酒、それも日本酒。誰かが叫ぶ(どっち?)、「酒や! 酒や! 酒買うてこい!」(『浪花恋しぐれ』より)。
 こんなとき市場は便利だ。ちゃんと日本酒も売っている。地元の純米酒をゲットし、我々は心行くまでカニを堪能した。うまい。日本酒がかにみその生臭さを消してくれる。「う~ん、かにみそはやっぱり毛ガニだね。」あまりのおいしさに、ついついカニをもう一杯買ってしまった。土曜の昼下がり、カニとお酒で二人は至福の時間を過ごした。

 市場で買った魚介類をその場で食べられる、おまけにお酒を買って飲むことができる、ここ『和商市場』はのん兵衛には堪らない場所だった。