特殊相対性理論・電磁気学・数学

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無限直線電流線と円リング電流線の間に働く力

2020-07-24 20:45:00 | 電磁気学(磁界)

1. まえがき

 無限直線電流線C₁と円リング電流線C₂の間に働く力を求める。図のように直線と円リ
 ングの電流をI₁, I₂とする。円リングの半径をa、その中心と直線の距離をbとする。



2. 計算

 2.1 b>a のとき

  C₁、C₂上の線素ベクトルをそれぞれds₁、ds₂とする。円の中心と線素ds₂とx軸との角
  をθとする。ds₁の座標は (0,y)、線素間の距離ベクトルを r とする。するとビオ・サ
  バールの法則とローレンツ力からC₁に働く力は
    F₁=(μI₁I₂/4π)∲[C₁]∲[C₂] ds₁×(ds₂×r)/r³・・・・①
  となる。
    r=<-b-acosθ, y-asinθ, 0> , ds₁=<0, dy, 0> , ds₂=-adθ<-sinθ, cosθ, 0>
    ds₂×r=adθ<0, 0, (y-asinθ)sinθ-(b+acosθ)cosθ>
        =adθ<0, 0, ysinθ-bcosθ-a>
    ds₁×(ds₂×r)=adθdy<ysinθ-bcosθ-a, 0, 0>
  となり、力はx成分しかないのでスカラーで表す。
    J={∲[C₁] ds₁×(ds₂×r)/r³}x
     =adθ∫-∞ (ysinθ-bcosθ-a)dy/{(b+acosθ)²+(y-asinθ)²}3/2 

  となる。ここで、u=y-asinθと変換すると
    J=adθ∫-∞ (usinθ+asin²θ-bcosθ-a)du/{(b+acosθ)²+u²}3/2 
  となる。ここで、usinθはuについて奇関数なので削除でき、偶関数は区間を半分にし
  て2倍となるから
    J=2adθ∫0 (-acos²θ-bcosθ)du/{(b+acosθ)²+u²}3/2 
     =-2a(acosθ+b)cosθdθ∫0 du/{(b+acosθ)²+u²}3/2 
  となる。ここで、u=(b+acosθ)tanφ と変換すると
    J={-2a(acosθ+b)cosθdθ/(b+acosθ)³}∫0π/2 (b+acosθ)cos³φ dφ/cos²φ
     ={-2acosθdθ/(b+acosθ)}∫0π/2 cosφ dφ=-2acosθdθ/(b+acosθ)
  となる。これを①にいれると
    F₁=(μI₁I₂/4π)∲[C₂] J =(μI₁I₂/4π)∫π -2acosθdθ/(b+acosθ)
     =-(μI₁I₂/π)a∫0π cosθdθ/(b+acosθ)    (偶関数だから)
        (u=tan(θ/2) と変換して)
     =-(μI₁I₂/π)a∫0 {(1-u²)/(1+u²)}/{b+a(1-u²)/(1+u²)} 2du/(1+u²)
     =-(μI₁I₂/π)2a∫0 {(1-u²)}/{b(1+u²)+a(1-u²)} du/(1+u²)
     =-(μI₁I₂/π)2∫0 a(1-u²)/{(b-a)u²+(b+a)} du/(1+u²)
     =-(μI₁I₂/π)2∫0 [ -b/{(b-a)u²+(b+a)} +1/(1+u²) ] du
     =-(μI₁I₂/π)2∫0 [ {-b/(b-a)}/{u²+(b+a)/(b-a)} +1/(1+u²) ] du・・・・・②
     =-(μI₁I₂/π)2 [ -{b/(b-a)}√{(b-a)/(b+a)} tan⁻¹u/√{(b+a)/(b-a)} +tan⁻¹u ]0  
     =-(μI₁I₂/π)2 [ -{b/√(b²-a²)} π/2+π/2 ]
     =μI₁I₂{ b/√(b²-a²) - 1 }
  となる。

 2.2 b<a

  このとき、②の被積分関数は、b<aから、c=√{(b+a)/(a-b)} とおくと
    F₁=-(μI₁I₂/π)2∫0 [ {-b/(a-b)}/{u²-c²)} +1/(1+u²) ] du
     =-(μI₁I₂/π)2∫0 [ {-b/(a-b)}(1/2c){ 1/(u-c)-1/(u+c) } +1/(1+u²) ] du
     =-(μI₁I₂/π)2 [ {-b/(a-b)}(1/2c) log{ |u-c|/|u+c| } +tan⁻¹u ]0
     =-(μI₁I₂/π)2 [ 0+π/2 ]

     =-μI₁I₂
  となる。a,bに無関係となる。

3. 計算2

  別の計算として、2つの回路の相互インダクタンスと仮想変位の原理を使ってみる。
  回路C₁, C₂の自己インダクタンスをそれぞれL₁, L₂とすると
  磁界のエネルギーは
    W=(1/2)(L₁I₁²+L₂I₂²)+MI₁I₂
  である。仮想変位の原理により
    F=-dW/dx
  となるが、今回は、bの変化によって、自己インダクタンスは変化しないから、x→b
  として
    F=-(dM/db)I₁I₂
  となる。

 3.1 b>a のとき

    M=μ{ b-(√(b²-a²) }
  だから、
    F=-μI₁I₂{ 1-b/(√(b²-a²) }=μI₁I₂{ b/√(b²-a²) - 1 }

 3.2 b
    M=μb
  だから
    F=-μI₁I₂
  となる。

以上



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