下記の三角関数を含む広義積分の収束を判定する問題があった。あるサイトに証明が
載っていたので紹介する。この方法は ∫0∞ sin(x)/x dx の収束の証明にも使える。
1. I=∫0∞ sin(x²) dx (フレネル積分) は収束
An=(-1)ⁿ∫√(nπ)√{(n+1)π} sin(x²) dx (n=0,1,2,・・・) ・・・・・(1.1)
とおくと、(-1)ⁿ sin(x²)≧0 ( √(nπ)≦x≦√{(n+1)π} ) なので
An > 0 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1.2)
である。つまり、An は正項級数である。
また、
An≦∫√(nπ)√{(n+1)π} dx=√{(n+1)π} - √(nπ) =π/[ √{(n+1)π} + √(nπ) ] → 0・・・・(1.3)
だから、An → 0 となる。
つぎに、(1.1)において x=√y と変換すると、dx=dy/(2√y) であり
An =(-1)ⁿ∫nπ(n+1)π sin(y)/(2√y)dy = {(-1)ⁿ/2}∫nπ(n+1)π sin(x)/(√x)dx
An+1 =-{(-1)ⁿ/2}∫(n+1)π(n+2)π sin(x)/(√x)dx
となる。z=x-π と変換すると
An+1 =-{(-1)ⁿ/2}∫nπ(n+1)π sin(z+π)/√(z+π)dz = {(-1)ⁿ/2}∫nπ(n+1)π sin(z)/√(z+π)dz
={(-1)ⁿ/2}∫nπ(n+1)π sin(x)/√(x+π)dx
An+1 -An ={(-1)ⁿ/2}∫nπ(n+1)π sin(x){1/√(x+π)-1/√(x)}dx
このとき、
{(-1)ⁿ/2}sin(x)≧0 , {1/√(x+π)-1/√(x)}<0
なので、
An+1 -An < 0・・・・・(1.4)
となり、An は単調減少数列となる。
ところで、
I=∫0∞ sin(x²)dx = Σn=0∞ ∫√(nπ)√{(n+1)π} sin(x²)dx = Σn=0∞ (-1)ⁿAn
となる。
つまり、(1.2)(1.3)(1.4)から、An 交代級数のアーベルの定理の条件を満たし、I は収束
する。
2. I=∫0∞ xsin²x/(1+x²) dx は発散
I=∫0π xsin²x/(1+x²) dx + ∫π∞ xsin²x/(1+x²) dx >∫π∞ xsin²x/(1+x²) dx
となる。
x≧π → 1+x²<2x² だから
I > ∫π∞ xsin²x/(1+x²) dx > ∫π∞ xsin²x/(2x²) dx = (1/2)∫π∞ sin²x/(x) dx・・・・(2.1)
ここで
An =(1/2)∫nπ(n+1)π sin²x/(x) dx
とおくと(2.1)は
I > Σn=1∞ An ・・・・・・・・(2.2)
となる。y=x-nπと変換すると
An =(1/2)∫1π sin²(y+nπ)/(y+nπ) dy = (1/2)∫1π sin²(y)/(y+nπ) dy
このとき、 y+nπ≦(n+1)π だから
An ≧(1/2)∫1π sin²(y)/{(n+1)π} dy =[1/{2(n+1)π}]∫1π sin²(y) dy=1/{4(n+1)}
となる。すると(2.2)から
I > Σn=1∞ An ≧ (1/4)Σn=1∞ 1/(n+1) → ∞
したがって、I は発散する。
3. I=∫π∞ sin(x)/xa dx (a>0) は収束
ここで
An =(-1)ⁿ∫nπ(n+1)π (sinx)/xa dx
とおく。すると
I=Σn=1∞ (-1)ⁿAn
である。また
An > 0
は明らか。また
An+1 -An = (-1)ⁿ⁺¹∫(n+1)π(n+2)π (sinx)/xa dx - (-1)ⁿ∫nπ(n+1)π (sinx)/xa dx
右辺第一項を y=x-π と変数変換すると、同様に
An+1 -An = (-1)ⁿ∫nπ(n+1)π (siny)/(y+π)a dy - (-1)ⁿ∫nπ(n+1)π (sinx)/xa dx
= ∫nπ(n+1)π (-1)ⁿ(sinx) {1/(x+π)a - 1/xa } dx < 0
となるから、An は減少数列である。
したがって、以下のように An → 0 なので、アーベルの定理から I の収束が言える。
(1) a=1 のとき
An =∫nπ(n+1)π (-1)ⁿ(sinx)/x dx
≦ ∫nπ(n+1)π 1/x dx = log{(n+1)π} - log{nπ} = log{(n+1)/n} → 0
(2) a < 1 のとき
An =∫nπ(n+1)π (-1)ⁿ(sinx)/xa dx
≦ ∫nπ(n+1)π 1/xa dx=(1/(1-a)) [ {(n+1)π}(1-a) - {nπ}(1-a) ]
= (π(1-a)/(1-a)) { (n+1)(1-a) - n(1-a) } → 0・・・・・・(3.1)
となる。というのは
x → ∞ のとき、0 < b=1-a < 1 として、ロピタルの定理から
(x+1)b - xb ={(1+1/x)b - 1}/(x-b)
→ b(1+1/x)b-1(-1/x2)/(-bx-b-1) = (1+1/x)b-1/(x1-b) → 0
となるからである。
(3) a > 1 のとき
(3.1)から a-1 > 0 となり
An ≦ (π(1-a)/(1-a)) { 1/(n+1)(a-1) - 1/n(a-1) } → 0
となる。
なお、
J=∫0∞ sin(x)/xa dx = ∫0π sin(x)/xa dx + ∫π∞ sin(x)/xa dx
と分解できるが、
0< a≦1 のとき、sin(x)/xa は 0 < x≦π において有界なので、J は収束。
(a>1 のときは検討中)
以上
[2020/11/29] An → 0 の条件を追加し、書き直した。