特殊相対性理論・電磁気学・数学

物理の暗黒面や面白い問題など。

グリフィスの電磁気学における起電力の扱い

2020-09-24 15:10:03 | 書籍批判

1. まえがき

 前に述べたようにパノフスキーに始まる起電力の誤りが広がっている。最近、グリフィ
 スの電磁気学を見たが、パノフスキーの説明に似ているが、起電力と電界が区別されて
 おり、何となく言わんとすることが理解できた。

 また、オームの法則の一般化が述べられており、理解が深まった。


2. オームの法則の一般化

 オームの法則は、導体(抵抗体)の電流密度、電気伝導率、電界を j, σ, E として
    jE ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.1)
 と表されている。以前に述べたように、運動する導体棒では棒の速度をv、周囲の磁界を
 B とすると
    j=σ(E+v×B) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.2)
 となる。 したがって、この法則は形の変化しない基本法則ではないと思っていた。しか
 し、
グリフィスによると、導体中の単位電荷当たりに働く力を fとすれば、この法則は
    jf  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.3)
 となる。つまり、電流は電荷に働く力によって(電荷が移動して)発生する。fはどんな
 力でも構わないが、電磁気的な力であれば当然、f=E+v×B となるから、(2.2)が得られ、
 オームの法則が一般化された

 なお、この法則は f があると電流が流れるという意味では無い(このように等号で結ば
 れた法則の解釈は便利な時もあるので誤解されやすい)。つまり、抵抗に電流が流れて
 いるとき、抵抗内部の単位電荷当たりに加わっている力の関係を示している。

 また、よく知られたように、完全導体では、
    f=j/σ → 0
(σ → ∞) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.4)
 となる。したがって、完全導体に流れる電流は電荷保存則と回路を形成する素子の特

 によって決まる。


3. 起電力

 これについても、パノフスキーと同様に
    f=fs+E  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2.5)
 としている。起電力と電界の記号を分けただけ明確になっている(パノフスキーにも
 説明は有ったと思うが、訳が悪いのか起電力の力は電界のような誤解を与えている)。

 そして、起電力と回路の電界の場所を区別した説明もされているが、分かりにくい。さ
 らに、理想電池には抵抗が無いから、完全導体の論理(2.4)を使って、fs=-E として、起
 電力εと電圧Vの関係
    V=-∫abE・dl=∫abfs・dl=∲fs・dl
 を導いている。この結果は正しいが、電池を抵抗とするモデルに違和感がある。本来、
 オームの法則は電流が流れている時の法則であるが(理想)電池は電流に依存しない

 最初に電池のモデルがあって、現実的に内部抵抗を含むモデルを考えるという手順だと
 思うのだが。

4. あとがき

 上のように、電池を抵抗と見て議論すると形式的にはすっきり結論が得られるが、物理
 的な意味はどうだろうか? 以前に説明したように、起電力によって、分離した電荷に
 より発生した電界と起電力が釣り合っている(電流の有無によらず)のが電池とした方
 が分かり安いと思うのだが。

以上

[参考文献] 電磁気学Ⅰ、グリフィス、丸善出版、2019(原本 2017)