ところで,弟子たちの多くの者はこれを聞いて言った。
「実にひどい話だ。誰がこんな話を聞いていられようか」
(ヨハネ伝6-60/新共同訳)
「ひどい」と訳されているスクレーロス(σκληροσ)とは,
新約聖書ギリシャ語辞典(織田昭著)によれば,
「硬い,粗野な,厳しい,耐え難い」という意味が紹介されている。
だが,辞書的意味をもって聖書を解釈するということは,
結果的には自分の聞きた . . . 本文を読む
ヨハネ伝は第四福音書と呼ばれていて、
共観福音書(マルコ伝・マタイ伝・ルカ伝)との異質性が指摘されている。
私も、原典にてこれらの福音書を読解してきて、
ヨハネ伝の特異性に注目せざるを得ない。
なぜ、ヨハネ伝のイエスの言葉(12章以前)は、意味内容が余りないのか?
たとえば、イエスが「わたしと父は一つだ」(7-2)と言えば、
群衆は、なぜイエスと神が一体なのかの根拠を問うが、
イエ . . . 本文を読む
以前の投稿記事で、パウロにとって、
イエス・キリストの十字架の前で自分自身を吟味する(δοκιμαζω:ドキマゾー)ことが、
如何に重要なことかを語った。
すなわち、キリストの恵みによって救われた者であるからこそ、
キリストに照らして自分自身の行いを吟味する必要があるのである。
(自分が恵みにあるからといって、全くの無反省に居直るのは、少なくともパウロの主張した福音ではない)
同様のこと . . . 本文を読む
イエスのことを公に言い表さない霊はすべて、神から出ていません。
これは、反キリストの霊です。(ヨハネ書Ⅰ4-3/新共同訳)
「言い表さない」と訳された部分は、原語(ネストレ)においても誤訳はない。
正確に訳せば「宣言しない(ο μη ομολογει)」となるのだろうが、
まあ、同じ意味だ。
新共同訳及びネストレの意味に従えば、
まるで、イエスはキリストであると公言しない者は、
反 . . . 本文を読む
それゆえ、イエスは彼に向かって言った。
あなた方は奇跡と驚異を見なければ、決して信じない。
(ヨハネ伝4-48)
イエスを熱狂的に迎えんとする群衆に対し、
イエスが言ったとされる言葉である。
「あなた方は、奇跡を見なければ信じない!」と。
この「あなた方」が誰を指すかによって、
この聖句の意味合いは変化してくる。
ヨハネ福音書記者の意図からすれば、「あなた方」とは、
息子の癒しを . . . 本文を読む
あなたは良いぶどう酒を今まで取っておかれました。
(ヨハネ福音書2-10/新共同訳)
イエスが起こした最初の奇跡である「カナの婚礼」。
結婚式でぶどう酒が足りなくなり、
イエスが水をぶどう酒に変え、
この貧しき新郎新婦を祝福したと解釈されている「カナの婚礼」。
これ、明確な誤訳というよりは、人間勝手な曲解である。
使徒ヨハネはイエスの受難の序曲を記述せんとしていること、
さらには . . . 本文を読む
愛には恐れがありません。
・・・・・・・・・・・
私たちが愛するのは、
神がまず私たちを愛したからです。
・・・・・・・・・・・
目に見える兄弟を愛さない者は、
目に見えない兄弟を愛することができません。
・・・・・・・・・・・
神を愛する人は、兄弟を愛すべきです。
(ヨハネ書Ⅰ4-18~21/新共同訳)
キリスト教の教えは「愛」であるという、
そして新約聖書で最も「愛」を強烈に説いたのが . . . 本文を読む
新約聖書を読み解く際に、最も必要なことは、
旧約聖書を十分に理解することである。
「新約が旧約を土台にしている」からではない。
使徒パウロもローマ書序言において指摘しているように(ローマ書1-2)、
まさに旧約聖書において、イエス・キリストが呼吸しているからだ。
(パウロ当時、まだ旧約聖書は今の形に形成されていなかったから、
ここでいうところの旧約聖書とは、モーゼ五書・預言書・詩篇を指す) . . . 本文を読む
「わたしはある」ということを信じないのであれば、
あなた方は罪のうちに死ぬことになる。
「あなたは一体どなたですか?」
「わたしはあなた方について、語るべきこと裁くべきことがある」
(ヨハネ福音書8-24~26/新共同訳)
翻訳された聖書を読む際に、最も注意せねばならないことは、
訳者が翻訳する際に、自分の先入観を混入させることである。
その良き例が、上記の聖句である。
「文字上」に . . . 本文を読む
死に至らない罪を犯している人を見たら、その人のために神に願いなさい。
そうすれば、神はその人に命をお与えになります。
これは死に至らない罪を犯している人の場合です。
死に至る罪があります。これについては、神に願うようにとは言いません。
(ヨハネ書Ⅰ5-16・17)
上記の聖句は、ヨハネ文書最大の誤訳である。
上記の聖句より判断すれば、罪は「死に至る罪」と「死に至らない罪」があって、
「死 . . . 本文を読む