遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「入江まで」

2010-09-09 | 現代詩作品
入江まで



……許せないことがある。
許すべきだという人がいる。
不遜といわれても、
一度、この身に飛び込んだ
強靱な憤りは抑えきれなくて
夢なら時またずして醒めるはずが
喉の奥深く滞留している。


……入江の漁民よ。
きみの苦悶を代弁するのではないが、
許せざるものの根拠も、眼には見えない
ダムの排砂の泥水の滞積によるかどうかも
魚類の死骸ともども
誰のせいでもないと通告されて
屍の夢にうなされ続けているという。


……おそらく比類のないダムの死に水で、
見えない殺意は圧縮する。
漁民の過去の暮らしの流れを追い越し
赤い小さなヨコエビのただならぬ発生とは、
二重の許されざるもの、だがそれは
人か組織か、不明のまま答えなき循環性が
近海の小魚を食い荒らす。


……無縁を装う。
神の手があろうとなかろうと
不運を乗り越える道筋は一向に見えず、
厳冬期の雪のひとひらにも
許せないものの欺瞞に溶ける誠意はあるか
今朝は一瞬にして
光の中に還る天のしずくがある。


……問いは無縁のまぼろし(の死者)
あるいは、
永久に滞留することばの圧縮
その悲鳴!



*昨日は台風節気かと思いきや福井あたりから彷徨を変更して、熱帯性に変わっていき、
ほっとしていました。雨もそれほど強く降らず。今朝はすずしくなってそろそろ秋かなといったかんじです。