ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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WBAライトフライ級王座決定戦 亀田興毅対フアン・ランダエタ

2006-08-02 22:47:46 | スポーツ
曇り。

亀田興毅が世界王座に挑む試合をテレビで見た。
これまで亀田一家はトレーナーの父親を含めて常に強気の発言を繰り返してきた。
もちろんそれには自信を裏付ける厳しい練習と世界を冷静に見据えた戦略があった事は容易に想像できる。

しかし亀田の普段の鋭い目つきは試合になるとどこか弱々しく頼りなさげに見えた。
それは今までの試合でも何度となく目にしてきたような気がする。
とりわけ今日は世界タイトルのかかった試合のせいか、亀田には明らかに怯えのような表情が伺えた。
そんな目を見て、以前からマスコミを前にして強気の姿勢を崩さない亀田は本当の彼の姿ではないと思っていた。

そして思いがけず1ラウンドからダウンを喫してしまったことで、彼の目には明らかに驚愕と絶望が宿っていた。
思えば、彼はそんな自分自身を覆う鎧としてビッグマウスを繰り返してきたのではないか。
そうやって自分を追い込まなければ、世界とは伍していけないということを見極めていたのではないか、と思うのだ。

ビッグマウスと練習量で武装してきた彼は、しかしこの試合で初めてなりふり構っていはいられないところまで追い込まれた。
序盤のピンチを脱してから、中盤は冷静に相手の動きを見極めここぞということころでラッシュを繰り返した。
相手を何度かロープへと追い込んだが、ランダエダは老獪にこれをいなす。

若い亀田の剛のパンチに対して、ランダエダ亀田のガードをくぐって柔らかく長いパンチを繰り出す。
試合運びの点では明らかに経験の差が出ていたし、終盤は完全にランダエダの猛攻で亀田は防戦一方となった。

試合は判定に持ち込まれ、亀田の勝利はもう厳しいと思ったし、むしろこの試合では亀田は勝たない方が良いと思った。
順調すぎて、むしろ今後の彼から大事な何かを奪ってしまうのではないかと思ったからだ。
しかし、彼は僅差で本当に僅差でチャンピオンの座についた。
苦しんで勝ち取った勝利は彼に今までとは違ったものをもたらすはずだ。
それでも、しかし、と思う。
私にはあのリング上での今にも逃げ出しそうな亀田のたよりなく弱い光を宿した目がどうにも気になるのだ。


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