ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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seasons colurs 秋冬撰曲集/松任谷由実

2007-11-17 08:13:43 | 音楽
春夏撰曲集もなかなか渋い選曲だったが、
この秋冬撰曲集も今まであまり目立たなかった曲たちに光を当てている印象がある。

「撰曲集」となっていることからも伺えるように、詩に重きを置いた作品集だと思う。
季節が選曲の条件なのだからその季節のことを歌詞の中で取り上げていることはもちろんなのだが、
どちらを選ぶかといったいったときには、曲そのものの雰囲気やヒットの度合いよりも、より詩のいい方を選んだということではないか。
「恋人はサンタクロース」みたいなキャッチーな曲があえてはずされているのも、そういう理由からではないだろうか。
歌手、作曲家、作詞家といった観点から見るとこのコンピレーションは明らかに作詞家ユーミンに焦点を当てたアルバムだ。

秋のほうは「NIGHT WALKER」がなんと言っても切なかった。
リアルタイムで聞いていた高校時代を思い出して、あの頃の風景がくっきりと立ち上がってきた。
当時聞いていた時よりももっとずっといい曲だなあ、と感じる。
歌はやはり時代とともにあるものなのだと思う。

冬の方は「ノーサイド」に改めて感服した。スポーツマンではないユーミンがそれでも、しっかりとこのスポーツの本質に迫っている。
ラグビーやサッカーは冬のスポーツというイメージが強い。
今でこそ冬でもピッチは青々としているが、10数年前までは冬になると芝は枯れていかにも寂寞とした感じだった。
シーズンの終盤、終わり行く選手は何を思ってボールを蹴るのか。

もう1曲は「Walk on,Walk on by」。収録アルバムは95年の『KATHMANDU』。
僕にとってはもう最近のアルバムという感じだが、こういう曲を選んでくるというのがいかにも渋い。
ユーミンがもっとも得意とするミディアム・テンポの曲でバカラック調のアレンジが印象的。
そのスマートなアレンジに「嫉妬」というネガティブな感情をするっと滑り込ませている。

ユーミンの場合、どうしても曲全体のもつ個性に目がいきがちではあるが、
改めて詩を咀嚼しながら聴いてみると、普段は聞き流していた曲の中にもまた違った良さを発見できる。
このシリーズはまさにそこを意図したアルバムだと思う。


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