江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

本性寺

2012-06-09 | まち歩き

本性寺は浅草の北、今戸に在る法華宗のお寺です。

剣客商売(池波正太郎著、新潮社)の主人公・秋山小兵衛の前妻であり、息子大治郎の母でもあるお貞の墓が在るお寺です。また、小兵衛の弟弟子で、大治郎の恩師でもある嶋岡礼蔵が仮埋葬されたお寺です(「剣の誓約」、剣客商売(一)に収録)。


本性寺の門をくぐると、左手に「秋山自雲」という方のお墓が在ることに気が付きます。剣客ファンならば、誰しも「秋山親子のモデルになった、剣の達人だろうか?」と先ずは思うところですが、実はこの方は侍では無く、各地の寺社に祀られる有名な痔の神様です。実在した人物で、痔病に苦しんだ後に亡くなったのですが、自分が死んだら痔病に苦しむ人を救いたいとの生前の誓願により、痔の神様として祀られるようになりました。名前の読みは「あきやまじうん」では無く、正しくは「しゅうざんじうん」と読みます。


池波先生が秋山自雲を意識して剣客商売の秋山親子を創作されたかどうかは定かではありません。しかし、池波先生の作品を拝読すると、読者が気付かないような細部まで調べ上げたうえで書かれていることが分かることからも、池波先生が主人公の妻の墓が在ると設定する重要なお寺に関わることとして、秋山自雲のことを知らなかったということは無いと思われます。古地図[1]には、本性寺の文字の脇には「秋山自雲神儀」と記されており、先生がこれを見落とすことは無かったはずです。また、先生自身が待乳山の生まれで、この辺りの地理には明るかったはずということからも、秋山自雲のことは当然知っていたと考えるのが妥当だと思われます。


[1] 今戸箕輪浅草図 嘉永六年(1853年)


本性寺 東京都台東区清川1-1-2

JR常磐線・地下鉄日比谷線・つくばエクスプレス 南千住駅より約1.5km 徒歩約19分

東京メトロ銀座線・都営浅草線・東武伊勢崎線 浅草駅より約1.5km 徒歩約19分


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