江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

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『浪華奇談』怪異之部 13.縮地の術(しゅくちのじゅつ) 瞬間移動の術

2024-04-13 23:09:47 | 怪談

『浪華奇談』怪異之部 13.縮地の術(しゅくちのじゅつ) 瞬間移動の術

                2024.4

瓦町(かわらまち)に炭屋(すみや)儀助と言う者がいた。
山小橋(やまおばせ)寺町の心眼寺(しんがんじ)へ灸の治療を受けに行った。その帰り路、酉の刻(とりのこく:17時から19時)に、堺すじ八幡すじに於いて、水道の泥を積んだ上を飛び越える拍子に、忽然(こつぜん)として御城の南の方の法眼坂(ほうげんざか)の麓、算用曲輪(さんようぐるわ)の大溝の中へ飛びこんでしまった(移動、転移)。

はっと驚き、そこが何処かもわからず、傍らにいた夜発(やはつ:道ばたで客引きする遊女。夜鷹。)の女に道筋を聞いたが、ただ何となく恍惚(ぼー)として歩いて行った。東町奉行の御屋敷の前とおぼしき所で、道行人に堺すじを尋ねて、帰ろうとした。が、これはどうした事か、又、ぼーっとして大門前にいたる門前に出た(再移動)。百度詣でなどをしている人々がいて大変に賑わっていた。
よく見れば天満天神の門の前であった。

またまた驚いた時に、少し正気に戻った。
それより十丁目(1000m位か?)の小山屋と言う砂糖を売る店の主人が知人であったので、しばらく休んで、その後は無事に家に帰った。

これは、縮地の術と行って狸の所為(しわざ)である。ここにある物を一里も離れた場所へ移動させることが出来る。

或るものが、京の三条室町を深更(よふけ)におよんで歩いていると、六七歳ばかりの小児がただ一人で立っているのを見た。
それで、近くに寄って、
「何処の家の子かね?どうして、こんな時間に此所(ここ)にいいるのかい?」と言葉をかけた。
その子供は、一切ものを言う事はなくて、うつむいていた。そして、顔をあげて、大きな眼をカッと見ひらいた。
この男は、大いに驚いて気絶して卒倒した。

しばらくして、夜露などが、顔や体をぬらしたので、正気づいて、あたりを見ると壬生野(みぶの)に伏していたとの事であった(転移)。

これらも、老狸(ふるだぬき)の縮地の術である。



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