江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

動物界霊異誌 河童その5 河童を助けて不思議な卵をもらう

2023-07-27 21:46:03 | カッパ
5、河童を助けて不思議な卵をもらう (仮題) 動物界霊異誌 河童その5
                 2023.7
寛政の初め、芸州(広島県)山縣郡羽生村(不明)庄屋・六左術門の家に、武士の姿をした者が来た。
その者の姿形は、人に違うことなくて端正であった。その者は、
「我は森源左衛門と申すもので、この川に久しく住んでいるものでございます。
近頃の洪水で、淵の中の岩に光りあるものが流れ着き、石の間にはさまりした。それを、一族のものどもが、大いに恐れております。何卒(なにとぞ)、人を使って、この物を取り除いてはくださいませんでしょうか?」
と言った。

六左衝門は大いに驚き、
「さては、お前は、川童であるな。
それなら、その願いは、聞き入れる事は出来ない。
お前をはじめ一族を召し捕り、村人への害をとり除いてやろう。」
と怒った。
すると、この者は、
「御怒りは、全く間違っております。我等が生活は、人間と異ることはありません。非義の振る舞いを禁じていますので、人を害することは決してありません。何卒(なにとぞ)石の害を除いてください。お願いいたします。」
と言った。
「それならば、望みのままにしよう。」と答えた。
そして、水泳の達者な者に淵に飛び込ませて様子を見させた。岩に挟まれ光るものを、取って戻って来た。

翌日、源左衛門が、六左衛門の家に、卵六つを手みやげに持ってきて、置いていった。

しかし、六左衛門はそれを怪しんで捨てた。
その後、又三つ持って来た。
「先に持ってきた卵は、お食べになりましたか?」と聞いた。
六左衛門は、「捨てた」と正直に答えた。
源左衛門は言った。
「さてさて、惜いことでございますね。これは、ク夕と言う鳥の卵でして、大変に貴重なものです。
こんどのは、早く食べて下さい。
大変に効果のあるものです。」と言った。
それで、六左衛門は、食べてみた。
すると、胸と腹の間が涼しく、気持ちが明るくなり、身が健(すこや)かになった感じがする、と言った。

この事を或る殿様に申し上げた。
殿様は、ク夕と言う鳥の事について、いろいろと尋ねさせたが、知る人は無かった、との事である。

この、源左衛門は、大小の刀を帯びていたそうである。
また、眷属は三百人ばかりである由(よし)を語ったとの事である。
その後しばしば来たが、その身に臭気があったので、
近づく事を嫌い、縁側にすわってもらって、話をしたと言う。(中略)


播州の玉屑(人名)は、川童(かっぱ)の毛を持っていた。
その色は、狐の毛のようであったが、水に入れれば、その形が見えなくなった。怪しいものである。
(ありのまま)動物界霊異誌 より


最新の画像もっと見る

コメントを投稿