Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

住友信託に見る新しい金融ビジネスのモデル

2005-04-17 | ◆ビジネス
4/14の日本経済新聞朝刊の記事。

『企業の不動産流動化、住友信託、地銀と提携――まず道銀とファンド』

これは地方銀行の中小企業顧客の不動産を住友信託が束ねて流動化するという話である。束ねることにより、これまで規模が小さいが故に流動化が困難であった中小企業の不動産が資金調達手段として活用できる。

これは、流動化案件組成のアイデアとしても面白いが、地銀と住友信託の関係がこれからの金融ビジネスのモデルを示しているようで興味深い。住友信託銀行は、そもそも三井住友銀行との関係は弱く、メガバンクに依存した営業網は構築が難しい。それゆえに、地銀を自らの営業網として活用し、営業網を持たない自らは流動化商品の組成に徹するという方針を打ち出したわけである。

やむを得ない選択肢であるという見方も出来るが、先日エントリーしたハートフォード生命のケースのように、持たないことを前向きに捉えると他社より優位なポジションに立てる可能性があるのではないか。

Salesforce.comがMS Officeをリプレースする?

2005-04-17 | ◆ビジネス
Salesforce.comのCEOであるMarc Benioffが同社のイベントにて語ったこととしてのInternetnews.comからの引用。(元の記事全文は"Salesforce.com: The MS Office Killer"

"We don't do applications like Word or Excel," Benioff told internetnews.com. "But there are elements of Microsoft Office, like SQL Server, that we want to replace."

つまり、やや飛躍はあるが、これまでのCRMの領域からMS Officeとも重複する領域へも進出するという。また同社がMultiforceと呼ばれるWebベースのオンデマンド型オペレーティング・システムを開発するのだという。また、Benioffが語ったこととして、記事では以下のように伝えている。

Customer relationship management was only the first step in the master plan, Benioff told the audience of partners, analysts and press. The company is going after all kinds of business processes, including recruiting, project management, product development, scheduling, budgeting and human resources.

ヒューマン・リソースから、プロジェクト・マネージメント、製品開発、スケジュール管理などあらゆるビジネス・プロセスの領域へオンデマンド型で進出しようという意気込みである。

今後の展開が非常に興味深いSalesforce.comであるが、オンデマンド型で満足する顧客層を一通りカバーした後の成長戦略が同社が確立された企業となるのか否かのキーとなると考えられる。ひとつの危険は、より複雑なニーズに応えるためにアプリケーションがコントロール不能となるリスク、もうひとつは同じビジネスモデルで間違った事業領域へ進出してしまうこと、ではないかと思う。

今回の記事を読んでいると、二つのリスクのうち二つ目が現実のものとなるのではないかという懸念が持ち上がる。CRMの領域はSiebelのようにモノリシックな統合型アプリケーションの領域であったが故に、モジュール型のSalesforc.comの成功もあったのではないかと思う。同じ成功パターンを繰り返すためには、対象領域を慎重に選択することが必要ではないか。また、MS Officeのような過剰なまでに水平型のマーケットへ進出することは、ビジネスモデルの大きな転換を伴いリスクも大きそうである。

どうなるんでしょうね。
先週はSiebelのCEOが交代した一方、Sforce関連のニュースも多かったです。
Salesforce.com's Goal: Become An On-Demand Information Provider -- InformationWeek
セールスフォース、新CRMパッケージの詳細を発表--6月にリリースへ -- ZDNet Japan 
Salesforce.com: The MS Office Killer -- Internetnews.com

足踏みするSOA?

2005-04-17 | ◆ビジネス
しばしば同じタイミングで全く異なる文脈から出たニュースが符号する。今回もそんなケース。

1つは日本IBMが天城にてソフトウェア会社やシステム・インテグレーターなど23社を集めてSOAの可能性について議論したという話。

『日本IBMが伊豆・天城にソフト会社/インテグレータ23社の幹部を集め、SOAの可能性を議論』 Nikkei ITPro

オンデマンド型ソリューションの展開を目論むIBMがパートナーへの啓蒙活動を行ったものと理解できる。ただ、記事では「参加したパートナの多くはSOAに関して、まだ勉強/検討フェーズ。関心は高いものの、採用には慎重な姿勢をとる企業が多かった」とあるように、IBMが望むスピード感で市場は動いていないという現状を映し出している。

もう1つは、SOAの重要な要素技術であるWebサービスが抱える課題に関する話。

"Web Services Still at an Impasse" Internetnews.com

例としてWebサービスのセキュリティーに関する仕様で、MicrosoftとIBMが中心になって進めるWS-Securityの仕様とSUNが中心となっているLiberty Allianceの策定する仕様に重複があり、開発者の混乱を招いていることが挙げられている。

Liberty Allianceの問題に関しては以前も取り上げたが、Webサービスの標準確立において大きな障壁となる可能性を孕む。Webサービスの標準策定はマーケット主導で進んでいるが、そこには主導者となれなかった者が離反して、独自仕様による顧客囲い込みに走る危険が付きまとう。今回もし同じことが起これば、SOAというビジョンの実現は困難となり、JAVAと.NETといった相容れないアーキテクチャーの共存を許すことになる。結果的にIT業界の利することにはならないであろう。

来週ガートナーのイベントがアメリカにて開催され、複数のベンダーがWS-Securityに準拠したシステム連携の実証実験を行うという。そこにはIBMもMicrosoftもSUNも参加する。是非表面的にだけでなく、実体としてもうまく連携してくれるといいのだが。

Gartner Application Integration and Web Services Summit