Ambivalent Blog

e-Tetsuによる「アート」と「釣り」の生活誌

オープンソース時代の顧客ロックイン戦略

2005-04-03 | ◆ビジネス
昨年、オープンソースをベースとしたビジネスを目論むSourceLabsが設立されたが(その時のエントリー)、同社がApache/MySQL/PHPをセットにしたソフトウェア・コンポーネント(スタックと呼んでいる)をリリースした。

『米新興企業、オープンソースの「AMP」パッケージを提供開始』 ZDNet Japan

ただし、同社が取り扱っているのはそもそもフリーソフトであるから、ソフトウェアはフリーである。収益の源泉は、フリーソフトの稼動テストを通して、フリーソフトを利用して信頼性の高いシステム構築を可能とするノウハウを提供することにある。

オープンソースは、特定のOSやアプリケーションサーバー、データベースからユーザー企業を自由にする。結果として、ユーザー企業は高額のソフトウェアを購入する必要も、その後のメンテナンスを支払う必要もない。また、ベンダー側の都合による高額なアップグレード繰り返す必要もなくなる。つまり、ユーザー企業は、特定のベンダー・プラットフォームへロックインから逃れることができる。

しかし、オープンソースには稼動を保障する特定可能な責任者はおらず、さらに複数のオープンソースの組み合わせ稼動の保障となれば、さらに難しくなる。ただし、今後SOA化が進展すれば、オープンソースの利用は、ますます複数のソフトウェアをいかに連携させられるかがキーとなる。

そうした点に目をつけたのがSourceLabsのような、オープンソースの稼動確認やサポートを生業とする企業である。面白いのは、これが新しい型の、つまりオープンソース時代の顧客ロックインであるように見える点である。ユーザー企業は、オープンソースを活用することで特定のソフトウェア・ベンダーにロックインされることから逃れられるが、オープンソースの組合せ稼動をサポートするオープンソース・サポート・ベンダーにロックインさせられることになる。

なぜなら、オープンソースが複雑化するにつれ、企業はオープンソースを利用したシステムの信頼性を維持するために、これらのベンダーのサポートなくしては立ち行かなくなるからである。ただ、個々のベンダーにロックイン出来るかは、こうしたオープンソース・サポート市場がどのようにセグメント化されるかによるであろう。

ハートフォード生命のビジネスモデル

2005-04-03 | ◆ビジネス
4月1日付けの日経金融新聞によると、ハートフォード生命の日本における個人年金の資産残高が147億ドルとなり、前年同期比の2.3倍となった。同社の全世界の年金保険販売の3割を占めるまでに成長したという。

ちなみにハートフォード生命が日本に進出したのは2000年と、つい最近のことである。しかし、2004年3月末におけるハートフォード生命の日本における販売拠点数は4,931である。そのほとんどが、銀行や証券会社などの代理店であり、そのハートフォード生命自体の従業員数は400名にも満たない(2003年)。営業職員数はわずか55名である。

営業拠点数の推移をみると2001年度までわずか173であったものが、2002年度末に一気に3,536まで増加する。そして2004年度末には4,931である。この拠点数増大のきっかけは2002年10月の保険商品の銀行窓販解禁にある。

この販売チャネルの垣根撤廃がいわゆる保険業界の製販分離を可能とし、販売チャネルを持たない外資系の攻勢を可能としたわけである。大垣氏の言うところの金融アンバンドリングの典型であるが、拠点数の推移とその規模を見ると、その徹底ぶりに改めてアンバンドリングの実情を実感させられる。