逆境に生きる雑草にとって、逆境は「耐えること」でも「克服すべきこと」でもありません。それどころか、「逆境をプラスに利用する」というのが、雑草の生き方です。
あるものは、耕されてちぎれることによって、その数を増やします。あるものは草むしりをされると、種を弾き飛ばして、人の体にくっつけます。また、あるものは踏まれると、靴の裏に種をくっつけて、分布を広げます。これらの雑草にとっては、耕されたり、草むしりされたり、踏まれることは、嫌なことではありません。むしろ成功のためのチャンスなのです。
雑草はけっして強い植物ではありません。しかし、自らの弱さを知っているから、雑草はこんなにも強く生きることができるのです。
静岡大学大学院農学研究科教授 稲垣 栄洋 「雑草は本当に強いのか?」からの抜粋