あまりに多くの人々が、他人と自分を比べ、他の誰かのような人生を歩みたいと願っているように感じます。自分の意志を大切にして、自分自身に生き切るのが、人生で何より大事なことではないでしょうか。
世の中を少しでも良くするために、“自分にしかできない何かで貢献できた”“私は私のベストを尽くせた”と言える満足感と喜びさえあればいい。その貢献を他の人に知ってもらったり、評価してもらったりする必要はありません。「自分は自分の仕事をした」と自分自身が思えることに、本当の充実があり、幸福があるのだと思います。
時間はかかりましたが、私の場合は、生きている間に努力の結果が表れたので幸運でした。ですが、たとえ自身の人生の中で結果が出なかったとしても、未来にいつか花開くと信じて、下り坂の中でも研究を続けてきました。
そうした信念で、目標を立てて、自分のベストを尽くす。達成できたら次の目標を立てて、また頑張る。この繰り返し、努力の過程こそ重要なのだと考えます。
私は移民で、英語も完璧ではありません。ネイチャー誌で論文を発表するような優秀な研究者に囲まれ、“私なんて小さな存在だ”と思ってしまうような時もありました。“私は脇役だから、立派な研究者を支えられればいい”と、目標を低く設定することもできたかもしれません。でも、私はそうしませんでした。
自分には、自分にしかできないことがあると信じてほしい。自身を決して卑下せず、その才能を最大限に発揮できるよう、そして、常に新しい自分を発見し続けられるよう、主体的に挑戦を続けてほしい。特に若い世代に、こうした思いが伝われば幸いです。
ノーベル生理学・医学賞受賞者 カタリン・カリコさんに聞く