とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

神護寺展(東京国立博物館)

2024-07-27 23:59:00 | 博物館
東京国立博物館にて、神護寺展を鑑賞。

神護寺は京都市街地から少し離れた高尾にひっそりと建つ山寺といったイメージだった。
その歴史は1200年以上に及び、平安遷都を提案した和気清麻呂が建立した高雄山寺を起源とする。
唐で密教を学んで帰国した空海が活動拠点としたとのこと。
824年に同じく清麻呂が建立した神願寺と合併し神護寺が誕生。
その後、荒廃したものの、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、後白河法皇、源頼朝の支援を受けた文覚により復興して今に至る。

空海の時代に制作され、密教の世界観を表す両界曼荼羅(国宝)が展示の目玉だ。
色彩は残っていないが、金泥、銀泥で描かれた細密な線が往時のまま残っている。
空海の思想は、自然界、人間界の真理を理解し、生活に役立てることで、世界をよくすることだと思える。
両界曼荼羅の金剛界は宇宙レベルを、胎蔵界は原子レベルを探求することで、世界を理解するということではないだろうか。
現在の科学(サイエンス)の原型をこのとき既に思い描いていたのかもしれない。

このような考えを人々に理解してもらい、広めるためための手段が仏像だったのかなと感じた。
仏に人格みたいなものはなくて、真理に沿うことをやればうまくいくし、真理に反すればうまくいかないという当たり前のことを示しているのかなと。
真理というのもあくまでも法則であって、いつもこうなるというものではなく、ある程度の確率のふれ幅のあることだとすると科学である。
科学を信じて、理に適うことをすれば、結果が伴う、というとシンプル過ぎるが、物事をシンプルに捉えることで、多くの事績を残せたのではないかと思えた。




「大いなる不在」(ネタバレ注意)

2024-07-27 23:30:00 | 映画
幼少時に両親が離婚し、ずっと会っていなかった父親が認知症にかかり、父親の再婚相手の義母の姿もなくなっていた。
主人公の卓(たかし)を森山未來が演じる。
卓の妻の夕希を真木よう子が、卓の父親の暘二を藤竜也が、暘二の妻の直美を原日出子が演じる。

藤竜也が現実と妄想の境目が曖昧になっている暘二を迫真の演技で魅せる。
元大学教授の暘二のプライドと独善が絡み合って、暴発する様がリアルで怖い。

父親への愛憎を人間愛が少しずつ上回って、父親も義母も悩み多き普通の人間と受け容れるまでの卓の心情の移り替わりを森山未來が丁寧に演じている。
卓は脇役中心のそれほど売れていない俳優という設定だが、俳優が役の心情を理解する能力が生かされているのだろうか。

認知症になったときに、どこまで元の人間性を保てているのかはわからないが、許せるかどうかも人それぞれでいいのだ。

点数は、9点(10点満点)。

タイトル:大いなる不在
製作年:2024年
製作国:日本
配給:ギャガ
監督:近浦啓
主演:森山未來
他出演者:真木よう子、原日出子、藤竜也
上映時間:133分