「藁にもすがる獣たち」（ネタバレ注意）

手にした人に不幸をもたらすお金。
まるでウィルスのように人から人へ伝わっていく。
誰も他人を救おうとは考えず、自分の欲望のままに他人を利用する。

これが、いかにも人間的で面白い。
役者の演技のせいなのか、登場人物が必死に生きている。
そこからエネルギーをもらえる気がする。
大人のエンターテインメントだ。

点数は、8点（10点満点）。

タイトル：藁にもすがる獣たち
製作年：2020年
製作国：韓国
配給：クロックワークス
監督：キム・ヨンフン
主演：チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ
他出演者：ユン・ヨジョン、チョン・マンシク、チン・ギョン、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム
上映時間：109分

「ヤクザと家族 The Family」（ネタバレ注意）

綾野剛、熱演。
主人公はヤクザだが、生い立ちや出会いの結果で、ただ愛に飢えていた人として説得力があった。
「仕方がなかった」という表現は肯定的ではないが、「生きる」ことが自分の大切な人を守ることなら、まさに生きていたのだ。

世の中の変化というのは、勢いがつくと止めることはできない。
いわゆる一般市民がすべて善ではないし、その中から新しい悪が芽生えているのも事実だ。
「反社会勢的」というものの中身は時代とともに変わる。

過去の自分と決別して生きることは非常な苦痛を伴う。
「罪を憎んで人を憎まず」を実践するにも強い心が必要だ。
社会が変わっていくべき方向を、逃げずに描いた作品であるところに感動した。

点数は、10点（10点満点）。

タイトル：ヤクザと家族 The Family
製作年：2021年
製作国：日本
配給：スターサンズ、KADOKAWA
監督：藤井道人
主演：綾野剛
他出演者：尾野真千子、北村有起哉、市川隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補、寺島しのぶ、舘ひろし
上映時間：136分

「ファーストラヴ」（ネタバレ注意）

「公認心理師」という仕事があるのを初めて知った。
心に問題を抱えている人をサポートする仕事というのは、かなりチャレンジングだ。
普通、仕事をしていて過呼吸になることはない。

人間の心の問題は、同じことでも、人によって、感じ方が違うし、寄り添うのはとても難しい。
場合によっては、鈍感な方がよいときもある。
また、自分の心が何に囚われているのかは、自分では認識できないことが多い。
そういう意味では、誰でもが、陥る可能性のある問題かもしれない。

ストーリーで違和感を感じたのが、人に見られることに過度な圧迫感を感じる人間がアナウンサーになりたいかという点だ。
そうだとしても、本番の面接までにあきらめざるを得ないタイミングが何度もあるはずではないか。

最近、北川景子をスクリーンでみる機会が多い気がする。
「ドクター・デスの遺産－BLACK FILE－」では刑事。
「約束のネバーランド」では孤児院の先生。
「さんかく窓の外側は夜」にも、ちらっと出演していた。
いずれも、攻めた役柄で、今後も注目かも。

窪塚洋介が演じる主人公の夫のような人は、なかなかいないと思った。

点数は、8点（10点満点）。

タイトル：ファーストラヴ
製作年：2021年
製作国：日本
配給：KADOKAWA
監督：堤幸彦
主演：北川景子
他出演者：中村倫也、芳根京子、板尾創路、石田法嗣、清原翔、高岡早紀、木村佳乃、窪塚洋介
上映時間：119分

「すばらしき世界」（ネタバレ注意）

まるでドキュメンタリーをみているような感覚にさせられるのは役所広司の力だろう。

世界は確実に生きやすくなっているはずなのに、「生きづらさ」にスポットがあたるのはなぜだろうか。
「きれいでないもの」も本来は世界に存在しているのに、見えづらくなっている不自然さもある。
動物として生きることにエネルギーを使わなくてよくなった分、人間の生きる力が弱くなっていることもある。
他人から迷惑をかけられることに対して、耐性が弱くなっているのだろう。

他人に迷惑をかけたり、不快感を与えることが減ってきて、たまにそういうことがあると、とても目立つ。
目立つものをバッシングする。
人間の行動は理性で抑えることができても、心の中の野性的な部分を開放することができずに、ストレスがたまる。
ストレスのはけ口が、バッシングだ。

「すばらしき世界」とは「自由な世界」だと思う。
バッシングする自由、バッシングされる自由もある。
人を助ける自由、助けられる自由もある。

点数は、9点（10点満点）。

タイトル：すばらしき世界
製作年：2021年
製作国：日本
配給：ワーナー・ブラザース映画
監督：西川美和
主演：役所広司
他出演者：仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、梶芽衣子、橋爪功
上映時間：126分

「さんかく窓の外側は夜」（ネタバレ注意）

心霊系はやっぱり苦手。
志尊淳が演じる三角の自己肯定からの成長物語でもあるが。
平手友梨奈は、演技するところを始めて観た。
独特の世の中に対する怒りを持っている人のように見えた。

軽いところとヘビーなところが混在していて、気持ちの悪さがある。
世の中にはそういうものが混ざり合っているというメッセージが込められているのだろうか。

点数は、7点（10点満点）。

タイトル：さんかく窓の外側は夜
製作年：2021年
製作国：日本
配給：松竹
監督：森ガキ侑大
主演：岡田将生、志尊淳
他出演者：平手友梨奈、マキタスポーツ、新納慎也、桜井ユキ、和久井映見、筒井道隆、滝藤賢一
上映時間：102分