共生の小路ーこの時代に生きる私たちの社会に、警鐘とひかりを見いだす人々の連帯の輪をここにつくりましょう。

社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

金子勝氏(立教大学特任教授)スピーチ『嘘つきが国を滅ぼす

2019年03月20日 16時33分01秒 | Weblog

【設楽ダムより緑のダム】 政権交代は市民と野党の本気の共闘で実現 全国の知事を 脱ダム 脱原発 護憲知事に

戦争法廃止運動の再結集を呼び掛けます! 参議院議員定数248 2019年選挙で過半数125以上 知事選挙も野党共闘実現

金子勝氏(立教大学特任教授)スピーチ『嘘つきが国を滅ぼす 公文書と政府統計の改ざん問題の本質』「安倍政治を終わらせよう!2.19院内集会」 2.19 参議院議員会館講堂 動画

2019-02-28 21:29:35 | YouTube

金子勝氏(立教大学特任教授)スピーチ『嘘つきが国を滅ぼす 公文書と政府統計の改ざん問題の本質』「安倍政治を終わらせよう!2.19院内集会」2019.2.19 @参議院議員会館講堂

2019/02/19 に公開
2019/02/19 17:00から参議院議員会館講堂に於いて「戦争をさせない1000人委員会」と「立憲フォーラム」の共催により行われた[安倍政治を終わらせよう!2.19院内集会]での金子勝氏(立教大学大学院特任教授)による講演『嘘つきが国を滅ぼす 公文書と政府統計の改ざん問題の本質』の様子です。

【関連過去動画】
■金子勝氏(立教大学大学院特任教授) スピーチ「安倍政権は退陣を!あたりまえの政治を市民の手で!0414国会前大行動」2018.4.14 @国会正門前
https://youtu.be/2bNgxRT6tTU
■金子勝氏 スピーチ「未来のための公共:共謀罪法案に反対する金曜国会前抗議行動」2017.6.10 @国会正門前
https://youtu.be/Sg3iqPSWC_E
■金子勝氏 スピーチ[戦争法案廃案!9.18国会正門前大集会]2015.9.18 @国会正門前
https://www.youtube.com/watch?v=sIV6L...
■金子勝氏 スピーチ + コール SEALDs【戦争法案に反対する国会前抗議行動】2015.7.31 @国会正門前
https://www.youtube.com/watch?v=afZ74...


拝啓、安倍晋三様。「本当に中国の脅威を理解されていますか?」

2019年02月26日 19時04分09秒 | Weblog
 

2月6日、献金制度を利用し政府へ浸透工作を働いたとされる中国人実業家の永住権を剝脱し、毅然とした中国への対応を世界へ示した豪当局。翻って日本を見ると、中国へのすり寄りとも取れる政財界の動きが目に付きます。今回、AJCN Inc.代表で公益財団法人モラロジー研究所研究員の山岡鉄秀さんは無料メルマガ『日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信』で、この時期に「中国友好」を進める我が国の政策を大いに懸念する理由を、安倍首相宛ての書簡を紹介する形で詳細に記しています。

 

安倍首相への手紙―総理の真意はどこに?

最近、安倍首相に近い方にお会いする度に、「総理は本当に中国の脅威を理解されていらっしゃいますか?」と聞いています。正確に言うと、聞かずにはいられない、という感じです。

中国からのサイレント・インベージョンに晒されているオーストラリアから新しいニュースが入りました。大富豪の中国人実業家の黄向墨(Huang Xiangmo)氏が豪州を離れている間に、豪当局が永住権を無効とし、市民権申請を却下したとのことです。

黄氏はまさに中国共産党が仕掛ける浸透工作の先兵として、その財力で豪州政界に深く入り込み政治的影響力を行使してきた人です。この人との不適切な関係を問われて有力な国会議員が辞職に追い込まれたケースがありました。

開かれた移民国家オーストラリアのやられっぷりも凄いものがありましたが、やっと危機感に目覚めて思い切った処置を取ったことに拍手を送りたいと思います。

日本政府にこんなことができるでしょうか

中国を喜ばせるために東京タワーを真っ赤にライトアップし、中国の外相に「日本人の対中感情が改善していない」と苦言を呈されれば、「交流計画を進めます」と媚びる日本

実際、日本政府は中国に一方的に資するだけの交流事業をいくつも進めています。近く、番組で詳しく論じる予定ですが、私が把握していたよりもずっと多くの交流事業が存在することがわかってショックを受けました。

交流といっても中国から人を招待するだけの一方通行になっていることもわかりました。中国が世界中で進め、西側同盟国が警戒を強めるサイレント・インベージョンの脅威を理解していたら、とてもこのような事業をやっている場合ではないはずです。

それどころか、安倍総理は習近平主席を国賓として日本に迎えようとしています。新天皇に会わせるつもりなのでしょうか。

さて、私が質問した方々は皆、口をそろえておっしゃいました。

「中国の脅威を総理ははっきり認識しています」

でも、それならなぜすり寄る態度を示すのでしょう。党内親中派や財界の圧力だけで説明できるでしょうか?安倍総理には深慮遠謀がある?

中国の脅威以外にも、外国人労働者受け入れや消費増税など、看過できない大問題が山積しています。

 

そこで、先月安倍総理あてに手紙を書いて永田町の信頼できる議員の方々に手渡して来ました。前回の番組中でも触れましたが、ここに公開いたします。10年後、「警告した民間人もいた」という記録のひとつになってしまうのでしょうか?

 

安倍総理あての書簡 全内容

平成31年1月24日

 

日本国内閣総理大臣
安倍 晋三 殿

有権者が憂慮する政策上の重大懸念について

日夜、日本国の内政・外交に尽力しておられるお姿に敬意を表します。

私共は日々動画発信などを通じて視聴者と意見交換をしておりますが、最近の安倍政権の政策には非常に強い憂慮を示す方が多くなっています。以下、主な懸念点を記しますので、視聴者と共有できるご回答を頂けますとまことに幸甚です。

日中関係について

総理は「Silent Invasion(静かなる侵略)」という言葉をご存知でしょうか?

開かれた移民国家であるオーストラリアが中国共産党による中華系移民を利用した浸透工作を受け、危機感を持った学者(Dr Clive Hamilton)が上梓したベストセラーのタイトルです。この、武器を使わない侵略は現在世界中で進行しており、トランプ政権が対決を決意したことはご存じの通りです。

中華系の留学生やビジネスマン一般移民があらゆる分野でスパイ行為や工作活動を実行しており、それを一元的に統括する部局が共産党本部に存在します。

危機感を抱いた米国が中国系留学生の排除や中華系通信企業幹部の逮捕に動いたことから、代わりに日本への浸透工作が激しさを増していると言われています。

かかる事態において、これから中国市場に進出しようとする日本企業は自己責任において行うべきであり、政府が後押しすべきではないことは自明の理ですが、特に下記の政策は中国の浸透工作に自ら迎合するものであり、常軌を逸しています。即時中止を強く要望致します。

  • 先般の日中首脳会談で合意された「日中青少年3万人交換計画」
  • 外務省による中国若手行政官等長期育成支援事業

米国では中国人の留学を制限しようとしている時に、わざわざ工作員を国費で招き入れ、日本の青少年を洗脳教育に差し出すのはまるで中国共産党の工作に協力しているかのようです。

まして、多くの日本国民が奨学金の返済に苦慮しているときに中国の役人を国費で留学させ、同窓会まで作ってあげるとは、これも浸透工作の成果かと思わずにはいられず、とても自民党支持者を含む有権者が納得できるものではございません。

当然ながら、そのようなスキームに選ばれてくる中国青年は、日本政府ではなく、中国政府に選ばれてくるのであって、感謝の対象は日本政府ではなく中国政府です。

中国共産党に忠誠を誓い、とことん指令に従おうとするでしょう。豪州やニュージーランドの例になぜ学ばないのか不可思議としか言いようがありません。

同じ理由で、現行の中国人国費留学制度も廃止すべきです。これは極めて重要な、安全保障上の問題です。

外国人労働者受け入れについて

日本企業はバブル崩壊後、世界のグローバル化にもついていけず、業績悪化のしわ寄せを労働者に押し付けました。政府もそれを後押しした結果、不安定な派遣労働者があふれ、特に若者の貧困化が進みました。これはさらなるデフレ要因となり、少子高齢化を加速させました。

現在、企業の内部留保がGDP総額に匹敵すると言われており、本来ならば賃上げをして労働者の購買力を高めるべきところ、政府はまたもや外国人労働者を導入して労働コスト上昇を防ぎたい経済界の要望に迎合しようとしています。

入国在留管理庁を新設しても、すでに行方不明になっている外国人も多数にのぼり、蓄積した問題の処置から始めなくてはなりません。常識的に言って、新しい組織が稼働して効果的に仕事ができるようになるには一定の時間が必要です。その猶予を与えずに外国人労働者を大量に導入すれば取り返しのつかない事態を招くことになるでしょう。

基本的に外国人労働者の大量受け入れには反対ですが、少なくとも、入国在留管理庁に一年間の移行期間を与え、外国人労働者の受け入れを延期することを要望致します。

消費税増税について

周知のとおり、米国と中国の対決が世界経済に影響を与えるのは必然です。リーマンショック級のインパクトも想定しなくてはなりません。このタイミングでの消費税増税は中止されることを強く要望いたします。

中国に擦り寄ることの危険性について

昨年の総理の訪中後も尖閣への中国船の侵入は減らず、「中華帝国再興の夢を実現するための静かなる侵略圧力」は世界的に全く弱まっていません。

したがって、日中関係が正常化したとは全く見做せず、この状態で習近平主席を日本に招いて歓待すれば、米国の意思に反して中国に擦り寄っているようにしか見えません。安全保障は米国に頼りながら中国で経済的利益を得ようとするのは無謀です。

中国は尖閣や沖縄への領土的野望を諦めていません。米国は有事の際、たとえ日米安保条約が存在しても、同盟国と呼ぶにふさわしい国しか助けようとしないでしょう。米国民が納得しないからです。

現在の安倍政権は客観的に見て、明らかに経産省と財界の意向を汲んで中国に擦り寄っていると認識されています。

その証拠が前述の中国の工作を幇助するだけの政策です。この流動的で危機的な状況にあっては、米国の同盟国としての重要性を高めることに専念し中国の静かなる侵略に迎合しないことを重ねて切に要望致します。

以上、全国数万人の視聴者、読者、有権者の要望の一部を代わってお伝えいたします。ご考慮の程よろしくお願い申し上げます。

Australia-Japan Community Network (AJCN) Inc. 代表 山岡鉄秀

株式会社On The Board 社長 和田憲治

 

(山岡鉄秀:Twitter:https://twitter.com/jcn92977110

image by: 首相官邸

奥山真司この著者の記事一覧

国際情勢の中で、日本のとるべき方向性を考えます。情報・戦略の観点から、また、リアリズムの視点から、日本の真の独立のためのヒントとなる情報を発信してゆきます。

 

 

 

日刊ゲンダイDIGITAL

安倍首相の“妄想”に露外相激怒 平和条約締結は決裂一直線

公開日:2019/02/26 14:50 更新日:2019/02/26 14:50

 どうやらカンカンのようだ――。安倍首相が「領土問題を解決して平和条約を締結する」と表明していることに、ロシアのラブロフ外相がブチ切れている。

 もはや“牽制”というレベルを超え、ほとんど安倍首相のことを“ウソつき”呼ばわりだ。

 ラブロフ外相は、ベトナムと中国の歴訪前に、両国メディアのインタビューに答え、24日にロシア外務省が公表した。

 安倍首相は6月に平和条約の枠組み合意を目指しているが、ラブロフ外相は「誰も一度も、枠組み案など見たことがない。日本側が何を考えているか、私には分からない」と一蹴。安倍首相が北方領土を含む平和条約締結問題に「必ず終止符を打つ」と意気込んでいることについて、こうこき下ろした。

「正直言って、その確信がどこから来ているのか分からない。プーチン大統領も私も、他の誰も、そうした発言につながる根拠は与えていない」

 

 要するに、「何も決まっていないのに、なに勝手なこと言ってんだ!」ということだ。

■「勝手に話を作るな」と言っているに等しい

 筑波大の中村逸郎教授(ロシア政治)が言う。

「ラブロフ外相は、これまでも4島の主権や北方領土という呼称について発言してきましたが、今回は質が違います。『勝手に話を作るな』と言っているに等しい。ロシア側が一切根拠を与えていないのに、平和条約締結について、確信に満ちて語る安倍首相の姿勢と人格を批判しているのです。安倍首相があまりにも話を盛り、しかも繰り返して口にするので、さすがに堪忍袋の緒が切れたのでしょう」

 さらにラブロフ外相は畳みかけた。

「日本は米国主導の反ロ的な国連決議には賛成するのに、ロシアの提案には反対か棄権ばかり」

 

「5月のトランプ大統領訪日時、ロシアとの平和条約もテーマだという。日本にそこまで独立性がないとは、(呆れて)何も言えない」

 中村教授が続ける。

「日本では、ラブロフ外相に“強硬論”を言わせて、最後はプーチン大統領がうまくまとめるという見方がありますが、違うと思います。日本人は自分たちに都合よく解釈しすぎです。2人のスタンスは同じでしょう」

 安倍首相は25日、ラブロフ発言について「いちいち反応するつもりはない」とダンマリ。国民は現実を直視した方がいい。

 

 

 

 産経新聞

外務省報道官、NYタイムズの元慰安婦問題の記述に「誤り」と反論


またアベ友…経団連会長人事は安倍政権の新スキャンダル

2019年01月16日 23時26分41秒 | Weblog

 

 永田町の裏を読む

公開日:2018/03/08 06:00

 日立製作所の中西宏明会長が日本経団連の次期会長に内定したというのは、それ自体、安倍政権の新しいスキャンダルである。

 中西は安倍のお友達。葛西敬之JR東海名誉会長や古森重隆富士フイルム会長らと共に「さくら会」というインナーサークルに入って、銀座で会食をするなどしてきた。

 日立は本来、偉大なる田舎企業で、経団連に副会長は出しても、会長を出したことはないし、政治とのニアミスを侵したこともなく、それがある意味、健全さの証しであった。

 ところが、中西が社長・会長を務めた2010年代前半からおかしくなった。①古川一夫元社長が経産省主管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」の理事長に②入れ替わるように、経産省の原子力マフィアの望月晴文元次官が日立の社外取締役に③川村隆元社長が経産省のたっての頼みで東京電力の会長に――という、あからさまにベッタベタの官民人事交流に染まっていって、その揚げ句がこの経団連会長内定である。

 

 裏側で働いているのは、安倍晋三首相が最も信頼する側近の今井尚哉総理秘書官を管制塔とする「原発を何としても生き残らせよう」という陰険な戦略である。

 今井ら経産省の原発ルネッサンス派の官僚は、東芝には米ウェスチングハウス社の買収をけしかけて、結果的に東芝滅亡の原因をつくったのだが、同じ時期、日立に対しては英ホライズン社を買収して英国での原発ビジネスに参入するよう促していた。ビジネス的には成り立たないことが分かっていても、「日英両政府が官民で3兆円を投融資し、日立は実質1500億円の負担で済むからやってくれ」という国賊的なプランを描いたのは今井だといわれている。

 なぜこんなバカバカしい話がまかり通ったのかといえば、今井らは、3・11にもかかわらず原発推進路線は間違っておらず、その証拠に日本の原発技術は、こんなに世界各国に歓迎されていて巨大な利益を生む可能性があるのだという「幻覚」を日本国民に植え付けたかったからに違いない。

 

 理論的にも現実的にも先行きがないことが分かり切っている原発ビジネスに、東芝はダメでも日立をのめり込ませようというこの今井路線は一体何なのかと、某参院議員に問うと「役人は国が滅んでも企業が潰れても自分のメンツだけは救いたいという下劣なやつらです」と、にべもない答えだった。

 

 

経団連会長が転換 「原発どんどん再稼働」に飛び交う憶測

公開日:2019/01/16 14:50

 何があったのか――。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長=72)の発言に臆測が飛んでいる。15日の記者会見で、原発について「再稼働をどんどんやるべきだと思う」と語り、原発の「新設」や「増設」も認めるべきだと発言した。さらに、「自治体が再稼働にイエスと言わない。これで動かせない」「公開で討論しないといけない」と、原発推進を全面的に打ち出した。

 臆測が飛んでいるのは、ほんの数週間前、正反対の発言をしていたからだ。年初の報道各社とのインタビューでは、3.11以降、東日本の原発が1基も再稼働していないことを例にあげてこう語っていた。

「国民が反対するものはつくれない。反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダーが無理につくることは民主国家ではない」

「国民が反対するものはつくれない」と口にしていたのに、「どんどん再稼働すべきだ」とは、ここまで意見を変えるのは普通じゃない。そのため「なにがあったのか」といわれているのだ。

 

「安倍官邸から怒られたのではないか、という見方が流れています。原発推進は安倍政権の基本政策なのに、『国民が反対するものはつくれない』と異を唱えた。安倍官邸から激怒されておかしくありません。世論調査では反対が多数ですからね。それで慌てて官邸に聞こえるように“原発推進”を叫んだのではないか、とみられています」(財界関係者)

■安倍官邸に怒られたか?

 しかし、「どんどん再稼働すべきだ」などと乱暴な発言は、逆効果になるのではないか。ただでさえ、国民の多くは「原発反対」なのに、「新設」や「増設」まで持ち出されたら、身構えるだけだ。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。

「好意的に見れば、国民に一石を投じようとしたのかも知れません。コソコソと再稼働を進めるのではなくて、正面から“原発賛成か”“原発反対か”を公開討論すればいいと考えたのかも知れない。ひょっとして原発村の住民である本人は、“原発賛成”の方が多いと思っているのかも。しかし、これは自爆行為ですよ。恐らく、正面から賛否を問うたら“原発反対”“自然エネルギー推進”が多いはずです」

 やっぱり、国民投票で白黒つけた方がいいのではないか。

 

 

安倍政権が進める原発30基体制 伊方の次に再稼働するのは

公開日:2018/09/27 06:00

 四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じた広島高裁の仮処分決定について、25日、同じ広島高裁の別の裁判長が四国電の異議を認め、再稼働を容認する決定を出した。またしても、原発再稼働に積極的な国の姿勢を追認する司法判断が下された形だ。

 安倍首相は23日の英紙フィナンシャル・タイムズへの寄稿で「経済成長の確保と化石燃料の削減は、共に重要な課題だ。それは再生可能エネルギーのコスト削減と再生可能エネルギーの信頼性向上を意味する」と再生可能エネルギー推進に前向きな発言をしているが、疑わしい。

 というのも、今年7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」では、原発は「重要なベースロード電源」と位置づけられ、経産省は2030年度の電源構成に占める原発比率を20~22%と明記。この数値は原発約30基の稼働を意味している。現在日本で稼働中の原発は5基だが、停止している原発の再稼働や、新しい原発の増設を想定しているということだ。

 

 気になるのは、次にどの原発が再稼働するのかということ。「原子力規制を監視する市民の会」の阪上武氏はこう言う。

「可能性が高いのは、日本原子力発電の東海第2原発(茨城県)です。原子力規制委員会から原子炉設置許可と工事計画認可が下りると、運転期間延長認可が取得できるので、早ければ2年後に再稼働する可能性もあります。もうひとつは東京電力の柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)で、昨年12月に規制委員会の審査に合格し、地元の検証委員会の判断を待つ段階となっています」

 全国の原発で運転差し止めの仮処分が係争中だが、国民の不安をよそにこのまま再稼働がどんどん進んでしまうのか。

 

 

 

大阪北部地震で注目…活断層“直撃リスク”のある「17原発」

公開日:2018/06/20 06:00
 17日の震度5弱(M4.6)の群馬・渋川の地震に続いて、18日は震度6弱(M6.1)の地震が大阪北部を揺らした。ともに、内陸部の活断層で発生する直下型地震だが、日本列島には、なんと2000以上の活断層が走っている。東西で起きた連日の直下型地震は、一刻も早い脱原発を促しているようだ。ところが、九電は16日、玄海原発4号機を再稼働。新潟県の花角知事は、選挙中の姿勢を一転させ、柏崎刈羽原発の再稼働容認の姿勢に転じている。

 群馬の地震は、内陸直下で断層が押されて上下にずれた。大阪の震源地付近には大阪府内を南北に走る断層帯や、兵庫県から大阪府へ東西に走る断層帯が集中。有馬―高槻断層帯の水平ずれと、生駒断層帯の上下ずれが同時に起きたとみられている。

 日刊ゲンダイが、全国の原発と断層帯を調べたところ、原発近くに大きな断層帯が走っていたり、敷地内にも断層が確認されていることが分かった(別表)。
川内原発(上)(C)日刊ゲンダイ
 

 原子力規制委の新規制基準では、活断層の真上に原発の重要施設を建設することは禁じられている。

「電力会社は、大きな断層帯は真上ではなく原発の周辺だと言い、敷地内の断層は活断層ではないという理屈で、規制委も追認しています。安全は横に置き“再稼働ありき”で進めてきているのです」(反原発の市民団体関係者)

 佐賀県・玄海原発の周辺には、川久保断層など8本も断層帯があるが、九電の「敷地内には活断層がない」という主張がまかり通り、今年3月に3号機、先週16日には4号機が再稼働した。

 花角新知事が、任期中の再稼働を示唆した柏崎刈羽原発の敷地内には23本もの断層があり、一部は6、7号機の真下を通る。東電は「20万年前以降は動いておらず活動性はない」と言い張るが、立命館大教授の高橋学氏(災害リスクマネジメント)が、あきれてこう言う。

 

「そんなの詭弁ですよ。断層になっている以上、いつ動いてもおかしくありません。現在、日本列島は、太平洋プレートが北米プレートを、フィリピン海プレートがユーラシアプレートを押していて活発化しています。マグマだまりを押し出すので、火山の噴火が頻発していますが、内陸部の断層のズレも引き起こします。これが直下型地震です。今後も各地で頻繁に起こることは間違いありません」

 高橋教授によると、2000本以上の活断層というが、無名の断層も含めれば、実際には数万本以上はあるという。すべての断層がいつズレてもおかしくない。それなのに、原発再稼働に邁進とは愚の骨頂である。

「1973年のオイルショック以来、クリーンなエネルギーとして原発が語られてきましたが、政府も国民もプレートや活断層などの問題からは目をそらしてきました。地震の脅威を目のあたりに、大きなお荷物がようやく見えてきたと言えます。仮に、全原発の稼働を止めても、原発に放射性廃棄物が残っている以上、地震や津波が襲えばおしまいです。廃炉と簡単に言いますが、廃棄物を取り出す方法も、持っていく場所も決まっていません。放射能が緩和されるには、200年以上かかるといわれています。日本列島には、1基の原発も建ててはいけなかったのです」(高橋学教授)

 一刻も早く、脱原発に舵を切って、知恵を出し合うしかない。今も、プレートは活断層をグイグイ刺激している。

 

国連が原発作業員の被ばく危惧も…安倍政権またもガン無視

公開日:2018/08/18 14:50  更新日:2018/08/18 15:02

「日本政府は即刻対応しなければならない」――。国連人権理事会に各国の人権状況などを報告する特別報告者が16日、東京電力福島第1原発事故の除染作業員ら数万人が被ばくの危険にさらされている、として「深刻なリスク」を懸念する声明を発表した。

 声明では〈作業員には外国人労働者やホームレスが含まれているとの情報がある〉とし、これらの作業員は〈被ばくのリスクを十分に知らされず、経済的な苦境から危険な作業を強制されるなど搾取されている恐れがある〉と指摘。さらに、人材派遣会社を通じて作業員を雇用していることも〈労働者の権利侵害が起きやすい状況〉を招いている可能性があると警鐘を鳴らし、日本政府に対応を求めた。

 人権理事会は47カ国の人権理事国から構成されていて、現在、日本も人権理事国だ。その人権理事会の特別報告者が福島原発作業員の健康被害に疑義を唱えているのだから、政府としては「早急に対応する」と答えるのが当たり前。だが、外務省は「声明はいたずらに不安をあおり混乱を招く。風評被害に苦しむ被災地の人々をさらに苦しめかねず遺憾」とガン無視するつもりだ。

 

 安倍政権は「共謀罪」法の時も、同法がプライバシーや表現の自由を制約する恐れがあると指摘した人権理事会のケナタッチ特別報告者に対して「指摘、批判は全くあたらない」と真っ向から反論していた。ところが、今年3月にスイス・ジュネーブで開催された人権理事会で、日本やEUが共同提出した北朝鮮の人権侵害についての決議が採択されると、一転して〈歓迎します〉だ。自分たちの提案なら「OK」だが、自分たち以外の指摘は「NO」とは、ご都合主義にもホドがある。一体、どのツラ下げて人権理事国なんて言っているのか。

 福島原発では先月、2号機の原子炉建屋最上階の床面の放射線量を計測したところ、排水口付近でガンマ線とベータ線の合算値で最大毎時630ミリシーベルトが確認されたばかり。事故から7年経っても高線量の場所はあちこちに点在しているのだ。人権理事会が作業員の健康状態を不安視するのは当然だろう。安倍政権が人権など屁とも思っちゃいないことがよく分かる。

 

党内からも驚き 安倍陣営が血道上げる地方議員“接待攻勢”

公開日:2018/08/15 06:00

 9月に行われる自民党総裁選。国会議員票の8割を固めた安倍陣営は、地方票でも石破茂氏(61)に大差をつけようとシャカリキになっている。ただ、もともと安倍首相(63)は人気がないだけに支持を得るのは簡単じゃない。地方票を稼ぐために、露骨な接待攻勢をかけている。

「現職の総理総裁でここまで総裁選に血道を上げる人は見たことがない」――。多くの自民党議員は驚いているらしい。

 実際、安倍首相は、国会会期中から国政より総裁選を優先。「西日本豪雨」の時、被災者を見捨てて自民党議員50人と「赤坂自民亭」と称する酒宴で酒盛りをつづけていたのも、総裁選対策だった。

 歴代の総理総裁と大きく違うのは、“首相官邸”や“総理公邸”に地方議員を頻繁に招いていることだ。1日に2組、3組と招待することもある。7月25日には、愛知県議と山口県議を公邸に、岡山県議を官邸に招いている。信じられないのは、「西日本豪雨」の被災者が苦しんでいた7月9日と10日にも、総裁選の票固めのために、地方議員を官邸と公邸に招待していることだ。“被災者”よりも“総裁選”という考えは、「赤坂自民亭」でドンチャン騒ぎしていた時だけではなかった、ということだ。

官邸、公邸に連日ご招待(C)日刊ゲンダイ

 この官邸と公邸での接待攻勢、実は、安倍首相の不人気が原因だという。

「もともと、安倍首相は、地方票を固めるために全国各地に足を運ぶつもりでした。4月以降、大阪、北海道、滋賀、埼玉……と、全国を行脚していた。ところが、この地方回りに、受け入れ先は内心、大ブーイングだったといいます。もともと、安倍首相に対して不信感を持っているうえ、受け入れの準備が大変ですからね。さすがに、首相周辺も気づいたのではないか。7月以降は、安倍首相が現地に行くのではなく、官邸や公邸に招待するようになった。これなら、地方議員も、普段は入れない官邸や公邸に行けて喜ぶし、お客さまとしてオモテナシできる、というわけです。地方議員のなかには、官邸詣での後、銀座や赤坂に繰り出すことを期待している者もいるかも知れませんね」(自民党関係者)

 どうやら安倍陣営は、9月の総裁選まで、官邸や公邸への招待をつづけるつもりらしい。しかし、県議や市議への接待が、はたしてどこまで有効なのか。

 

「たとえ地元の国会議員や県議、市議が命じても、党員が『はい、わかりました』という時代じゃありませんよ。なにしろ、地方にはアベノミクスの恩恵はまったく及んでいない。人口減と衰退が加速しているだけです。格差がどんどん開いている。しかも、西日本豪雨で分かったように、安倍首相は地方を見捨てている。どこまで、安倍首相に党員票が集まるのか疑問です」(政治評論家・本澤二郎氏)

 ここまで「地方票対策」をやりながら、もし石破茂氏が地方票の4割、5割を奪ったら、たとえ“総裁3選”を果たしても、安倍政権はそう長く持たないのではないか。

 

日刊ゲンダイDIGITAL


【権力の内幕 検証・加計疑惑】第2部

2018年09月25日 14時18分55秒 | Weblog

東京新聞 TOKYO Web

 

第2部(1)内閣改造機に官邸攻勢 強まる「早くしろ」

2016年5月、国家戦略特区の諮問会議であいさつする安倍首相(左)。内閣改造で石破地方創生相(右)が閣外へ出たのを機に、半世紀ぶりの獣医学部新設が加速した=東京・首相官邸で

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 二〇一六年八月三日、首相官邸。赤いじゅうたんが敷かれた階段に勢ぞろいした新閣僚の中に、特区制度を所管する地方創生担当相だった石破茂(61)の姿はなかった。首相安倍晋三(63)の内閣改造に文部科学省の担当者は身構えた。「いよいよ獣医学部開設の動きが本格化するかもしれない」

 学校法人「加計(かけ)学園」の計画に基づき、愛媛県と今治市が国家戦略特区で獣医学部を開設しようと国に申請してから一年余り。文科省は学部開設に慎重な姿勢を崩していなかった。

 「残念だが仕方ない」。日本獣医師会顧問の北村直人(71)は、石破が閣外に出たことに複雑な思いを抱いていた。「獣医師は足りている」と学部新設に否定的だった獣医師会にとって、石破はよき理解者だった。県と市が一五年六月に特区を申請した直後、獣医学部新設に必要な四つの条件を設けたのが石破だった。

 いわゆる「石破四条件」は、学部新設の際、既存の獣医学部では対応が困難なことや獣医師の新たな需要があることなど、その必要性の証明を求めるものだった。獣医師会の理事会では、北村が「石破大臣と折衝をし、一つの大きな壁を作っていただいている」と発言している。

 安倍はライバルの石破を別の閣僚ポストで引き留めようとしたが、石破はポスト安倍をにらんで閣外を選んだ。後任には安倍に近い衆院議員の山本幸三(69)が就いた。北村は「四条件がある限り、大臣が代わったぐらいで簡単に学部新設が認められるわけがないと思っていた」と振り返る。

 内閣改造から一週間後、山梨県内の別荘に滞在していた安倍は、加計学園理事長の加計孝太郎(67)らと夕食を共にし、翌朝はゴルフに興じた。加計はその後、大臣就任祝いとして山本と文科相の松野博一氏(55)、農林水産相の山本有二氏(66)を相次ぎ訪問する。三人とも学部開設に関係する所管庁のトップだった。

 時を同じくして官邸サイドは規制突破へ向け、文科省への圧力を強めていく。

昨年7月の国会で顔を合わせた和泉首相補佐官(左)と前川前文科次官(右)。「背後に官邸の圧力があった」と証言した前川氏に、和泉氏は真っ向から反論した

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◆迫る期限…首相側近 文科省に圧力

 首相安倍晋三(63)のブレーンの一人、内閣官房参与の木曽功(66)が、文部科学省事務次官室に、同省事務方トップの前川喜平(63)を訪ねてきた。二〇一六年八月下旬のことだった。

 木曽は同省で局長級の国際統括官を務めたOBで、前川の先輩に当たる。この年の四月、加計(かけ)学園傘下の千葉科学大の学長に就任、学園理事にもなっていた。

 たわいない話の後、木曽が最後に切り出した。「獣医学部新設の手続きを早く進めてもらいたい」。さらに「国家戦略特区の諮問会議で決定したことに、文科省は従えばいい」と畳み掛けた。

 木曽は働き掛けを否定するが、前川は学園からの要請と受け止めた。獣医師会が後ろ盾としていた地方創生担当相の石破茂(61)が閣外に去った内閣改造から三週間。木曽の来訪は、始まりにすぎなかった。

 その翌月九日、安倍が議長を務める特区諮問会議が官邸で開かれた。同会議は特区選定の最高機関。民間委員の八田達夫(75)は「獣医学部の新設は極めて重要だが、岩盤が立ちはだかっている。強力に解決を推進したい」と意気込んだ。

 その二時間前、前川は首相補佐官和泉洋人(ひろと)(65)から官邸に呼び出された。和泉は国土交通省の元技官。地方創生や国土強靱(きょうじん)化を担当する首相の側近だ。官邸で重要政策を企画立案する首相補佐官は、首相の威光を背景に各省の事務次官をしのぐ力を持つようになっていた。

 前川が四階の補佐官の執務室に入るなり、和泉は前置きもなく早口でまくしたてた。「総理は自分の口から言えないから私が代わって言う。獣医学部新設について文科省の対応を早く進めろ」。時間にして五分足らず。「総理は言えない」という和泉の言葉に、前川は圧力とともに政権の後ろめたさをかぎ取った。

 問題発覚後、和泉は国会で「次官として、しっかりフォローしてほしいと申し上げた」と述べたが、「総理は言えないから」というくだりは否定した。本紙は改めて和泉に質問状を送ったが、回答はない。

 和泉は民主党政権時から官邸に入り、三年余り構造改革特区に携わった。前川は和泉を「特区制度のエキスパート」と評し、「国家戦略特区で獣医学部を開設しようという知恵を付けられる人は彼しかいない。学部開設のキーパーソンだ」と指摘する。

 前川は一カ月後、再び和泉に呼び出され、進捗(しんちょく)状況の説明を求められた。「とにかく早く開学したいという焦りを感じた」

 学園を誘致する愛媛県今治市はこのとき、獣医学部の開学時期を一八年四月と見据えていた。開学の準備期間を逆算すれば、年度内の一七年三月末までに文科省に設置認可を申請しなければ間に合わない。

 タイムリミットが半年後に迫っていた。北里大以来、半世紀ぶりの獣医学部開学に向け、文科省にさらなる圧力がのしかかった。(敬称略、肩書は当時。この連載は、中沢誠、池田悌一、池内琢、井上靖史、中野祐紀、伊藤隆平、小坂亮太が担当します)

(2018年8月14日)

 

第2部(2)首相の威借る内閣府 真相… 官僚ら口閉ざす

獣医学部の早期開学を迫る内閣府とのやりとりを記録した文科省の内部文書。「官邸の最高レベルが言っている」と、官邸の関与をうかがわせる文言が記されていた

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 「平成30年4月開学を大前提に逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。これは官邸の最高レベルが言っている」

 加計(かけ)学園の獣医学部開設を巡り、昨年五月に明るみに出た文部科学省の文書。日付は二〇一六年九月で、表題は「藤原内閣府審議官との打合せ概要」とある。

 発言の主とみられるのは内閣府で特区事業を取り仕切っていた審議官の藤原豊(55)。藤原は一五年四月、学園や愛媛県の幹部らに「国家戦略特区で突破口を開きたい」と開学に向けた支援を約束した人物だ。

 文書からは、獣医学部を今年四月に開学させる前提で、最短のスケジュールを作成するように文科省に迫ったことがうかがえる。その上で「これは官邸の最高レベルが言っている」と虎の威を借りて強く迫った様子が浮かび上がる。

 この文書は省内の関係部署で共有されており、ある職員は「官邸の最高レベルは総理のことかと当時、話題になった」と振り返る。

 大学や学部を新設する場合、国家戦略特区で規制を突破しても、開学には文科省の認可が必要となる。内閣府職員の一人は「藤原さんは省庁を押し切って規制緩和をしたという実績作りに躍起だった」と語る。

 問題発覚後、文書を作成した文科省の担当者は「こうした趣旨の発言があったのだと思う」と省内のヒアリングに答えた。だが、内閣府は発言を否定。藤原も国会で「獣医学部の新設で総理から指示を受けたことは一切ない」と答弁した。

 内閣府は記録も残していないというが、ある職員は「藤原さんは『省庁とのやり取りは必ず記録に残せ』と口うるさく言っていた。記録がないなんてありえない」と証言する。

 官邸の関与をうかがわせる記録は一六年十月、官房副長官の萩生田光一(54)が文科省の局長に伝えた内容を記したとみられる「萩生田副長官ご発言概要」にも残っていた。「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成三十年四月開学』とおしりを切っていた」

 安倍晋三(63)の側近で文教族の萩生田は加計学園の名誉客員教授も務める。萩生田は今月、取材に局長との面会は認めたが首相や官邸に関連した発言は否定した。「文科省が自分たちの都合で作ったメモ。局長からは『問題解決のために副長官の名前が省内で使われる傾向があり、私もその一員で申し訳なかった』とおわびがあった」と説明した。

 取材班は改めて関係者に接触したが、文科省との協議に同席した内閣府幹部は記者と顔を合わすなり、逃げ出した。萩生田と面会した文科省局長は「話すことはない」と口をつぐんだ。

 ある文科省職員は申し訳なさそうに、こう答えた。「すみません。誰が漏らしたか、すぐ分かるので」(敬称略、肩書は当時)

 
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(2018年8月14日)

 
 

第2部(3)ライバル出現に焦り 「加計ありき」に誤算

鳥インフルエンザが発生した鶏舎を消毒する自衛隊員。京都産業大はこのころから獣医学部新設の検討を始めていた=2004年3月、京都府内で(陸上自衛隊第3師団提供)

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 首相官邸サイドが文部科学省への圧力を強めていた二〇一六年秋。国家戦略特区で獣医学部の新設を目指していたもう一校、京都産業大は着々と準備を進めていた。「提案内容には自信があった。加計(かけ)学園は最初からライバルとは見ていなかった」。中心になって計画を進めた元教授の大槻公一(76)が振り返る。

 京産大は一九八九年に生物工学科を新設、獣医学部につながるライフサイエンス(生命科学)研究に早くから取り組んできた。加計学園の加計孝太郎(67)が理事長になる十年以上前で、はるかに先行していた。

 獣医学部の検討を始めたのは〇四年。国内で七十九年ぶりに発生した鳥インフルエンザの猛威が京都にも及んでいた。

 感染症リスクの研究を本格化させようと、〇六年には鳥インフルエンザ研究センターを開設。センター長に鳥インフルの研究で世界的権威の大槻を招いた。大槻は「大学幹部から『獣医学部をつくる作業も任せたい』と特命を受けた」と明かした。

 府は一五年、周辺四県と連名で、京産大の獣医学部設置を文科省や農林水産省に要請。綾部市に用地を確保し、一六年三月、京産大と共同で特区を申請した。加計学園が特区申請の際、愛媛県と今治市の陰に隠れたのとは対照的だ。

「獣医学部新設を巡る国の対応は不公平だ」と話す京都産業大の大槻公一元教授=鳥取市で

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 申請では加計学園に九カ月の後れを取ったものの、京産大は十月に開かれた特区ワーキンググループで、各委員に二十一枚の詳細な資料を提示。いかにライフサイエンス分野の獣医師が求められているか、創薬研究で京都にどれほど強みがあるかを熱心に説明した。府の担当者は「委員に評価してもらえた」と手応えを感じた。

 大槻は申請前に内閣府地方創生推進室次長の藤原豊(55)を訪ねたときのことを鮮明に覚えている。「今治はずっと前から努力している。今ごろ持ってくるなんて遅いんじゃないか」。京産大には批判的な藤原だったが、最後に「また説明してほしい。宿題です」と言ってつぶやいた。「(今治側にも)同じように宿題を出しているんだが」

 今になってみると、大槻は「藤原さんは焦っていたんじゃないか。今治の計画は十分でなかったのかもしれない」と思う。実際、今治市が準備した資料は京都の七分の一の三枚だった。

 大槻たちは特区認定に手応えを感じていたが、首相の安倍晋三(63)が議長を務める特区諮問会議は一六年十一月、獣医学部開設に新たな要件を追加した。それにより京産大は計画断念に追い込まれることになる。 (敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

第2部(4)ルール変更「友達」有利 「京産大外しの筋書き」

2016年11月1日、内閣府から文科省に送信されたメールの添付文書。特区認定の条件の原案に「広域的に」などと手書きで加筆していた。メールには、萩生田官房副長官(当時)から指示があったと記されていた

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 二〇一六年十一月九日、首相官邸。首相の安倍晋三(63)が議長を務める国家戦略特区諮問会議は、半世紀ぶりに獣医学部を新設する方針を決定した。焦点はどの地域を特区に認定するかだった。諮問会議は新たな条件として「広域的に獣医学部のない地域に限り認める」とつけ加えた。

 突然のルール変更に動揺したのが京都産業大だった。関西圏には大阪府立大の獣医系学部が既にあり、空白地帯の四国に開設しようとするライバルの加計(かけ)学園に有利な条件だったからだ。このとき学園は、まるで開学が決まっているかのように、建設予定地でボーリング調査を始めていた。

 水面下で行われたルール変更に官邸の関与をうかがわせるメールがある。

 メールは諮問会議の八日前に内閣府から文部科学省に送られたもので、学部開設の条件を記した文書が添付されていた。「獣医学部のない地域」としか書かれていなかった文科省作成の素案に、手書きで「広域的に」と加えてあった。

 この修正で、学部を新設できる地域は一気に狭められた。メールには「直すように指示がありました。指示は藤原審議官いわく、官邸の萩生田副長官からあったようです」とあった。「藤原」とは内閣府審議官藤原豊(55)、「萩生田」は安倍側近の官房副長官萩生田光一(54)のことだ。

 昨年六月に文科省でメールが見つかると、萩生田は指示を否定した。特区を所管する地方創生担当相山本幸三(69)は会見で「修正は自分が指示した」と説明。文科省にメールを送った内閣府職員を「文科省からの出向者で、陰に隠れて本省にご注進した」と非難した。

 だが、この職員がこぼすのを周囲は耳にしている。

 「萩生田副長官の指示は文科省の担当者も聞いていた話。自分はスケープゴートにされた」。萩生田は取材に「藤原から報告を受けたが、修正の指示はしていない」と改めて否定した。

 その後も「一八年度に開学」「一校に限る」という条件が追加され、京産大は断念に追い込まれた。

 文科省関係者は「京産大外しとしか考えられない。京産大は一九年度なら開学できると言っていましたから」と証言する。元京産大教授の大槻公一(76)は取材に「首相のお友達にしかやらせない。筋書き通りなんだと思った」と憤った。

 安倍はよく「規制の岩盤に穴を開けた」と自慢するが、その穴に加計学園だけを通すようなルール変更だった。内閣府は一七年一月、獣医学部を開設したい事業者を公募した。手を挙げたのは当然、加計学園だけ。まるで出来レースだった。 (敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 
 

第2部(5)新設4条件 置き去り 「議論せぬまま特区認定」

2017年1月20日、加計学園を獣医学部開設の事業者に選んだ国家戦略特区の諮問会議であいさつする安倍首相(中)。首相はこの日まで学園が学部開設を目指していたことを知らなかったと答弁している

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 二〇一七年一月二十日、首相官邸で開かれた国家戦略特区の諮問会議は、愛媛県今治市で獣医学部を開設する事業者に加計(かけ)学園を選んだ。後に首相の安倍晋三(63)が国会答弁で「学園の学部開設計画を初めて知った」としたのがこの日だ。

 「国家戦略特区に指定した今治市で、画期的な事業が実現します」。諮問会議の席上、議長の安倍は学園の構想を持ち上げた。

 そのころ、文部科学省関係者は顔をしかめていた。「中身はスカスカ。どこが特殊な獣医学部なんだ」

 愛媛県と今治市が一五年六月に特区を申請した後、内閣府は「既存の大学では対応できない」「新しい分野のニーズがある」など、学部の新設に必要な四つの条件を設けた。

 ところが、特区ワーキンググループで審議が始まっても、どこからも具体的な獣医師需要は示されぬままだった。

 それにもかかわらず、民間委員たちは規制緩和に前のめりだった。「四条件を満たすかどうかの立証責任は文科省にある」と主張する委員も。獣医学部の必要性がない根拠を示さなければ、新設を認めると言い出した。

 実は学部開設が現実味を帯びてきた一六年十月、文科省は市の担当者を内々に呼び出していた。「最悪の場合を想定し、四条件に見合う構想かどうかを確認するためだった」という。

 説明したのは同行した学園の担当者。文科省関係者は「内容は抽象的で、これでは四条件をクリアできないと思った」と証言する。省内では「開学を一年延期したほうがいい」との意見まで出たが、一八年四月の早期開学を実現したい内閣府に押し切られた。「四条件を満たしているのか、誰も議論しないまま特区に認定された」。関係者は今も釈然としない思いでいる。

 学園の構想が特区に認められると、後は文科省の審査を残すだけとなった。大学や学部を新設する場合、審査を申請する約一年前から文科省に相談するのが一般的だが、申請までに学園に残された時間は二カ月余りしかなかった。

 「あまりに出来が悪く、事前相談は通常の倍近い週二回ペース。一回の相談も四、五時間かかっていた」と文科省関係者は突貫工事ぶりを打ち明けた。「それでも他の大学並みのレベルにも届いていなかった」

 学園は一七年三月、文科省に獣医学部の設置を申請した。「審査で相当厳しいことを言われる可能性がありますよ」。担当者の指摘はその後、現実となる。(敬称略)

(2018年8月14日)

 

第2部(6)設置審も認可ありき 文科省「4条件議論しないで」

2017年11月、加計学園の獣医学部新設を「可」とした設置審専門委の最後の会合が開かれたビル。専門委の会合は非公開で、マスコミを避けるため都内の会場を転々とした=東京都千代田区で

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 安倍政権が創設した国家戦略特区で、獣医学部開学という長年の夢を実現しようとしていた加計(かけ)学園理事長の加計孝太郎(67)。開学へ最後のハードルとなったのが文部科学省の「大学設置・学校法人審議会(設置審)」の審査だった。

 設置審は大学新設にあたり、大学教授らが教育内容や設備・経営を審査する。獣医学部を審査する専門委員会の委員の一人は、二〇一七年四月に文科省内で開かれた最初の会議のことが今でも記憶に残っている。

 世界に冠たる獣医学部とうたいながら、学園が出してきた計画は「既存の大学にすら及ばない未成熟な内容だった」。公務員獣医師の確保が目的なのに公衆衛生の教授がいない。日帰りで実習するのに片道四時間かかる。委員は「不備が多すぎて細かい点は目をつぶるしかなかった」と話す。

 五月に入り「加計疑惑」が表面化すると、設置審も「いいかげんなことはできない」と慎重姿勢に。直後の一次意見では、計画を抜本的に改善しなければ新設は認めないとする「警告」を出した。学園は一学年の定員を百四十人に減らすなどしたが、八月に再び注文が付き、最終判断は十一月にずれ込んだ。

 その間、首相の安倍晋三(63)は、野党が真相解明のために開会を求めた臨時国会の冒頭、衆院を解散。選挙は自公が圧勝し、疑惑追及の機運はしぼんだ。

 十一月二日、都心のビルの一室。「学園の改善は付け焼き刃だ」「もう仕方ない」。七回目を数えた専門委の会議でも意見は割れていた。特区による獣医学部の開設は一八年四月と期限が切られており、もう結論を先に延ばせない。議論は三時間に及んだ。座長から「意見がまとまらないなら、委員会を解散して新メンバーで審査し直しますか」と投げかけられると、委員は皆、押し黙った。

 結局、忸怩(じくじ)たる思いを抱えながら「開設は可」という結論を出した。ある委員は「与党が選挙で圧勝しなければ結論は違ったかもしれない」と振り返る。

 半月後、設置審の答申を受け、文科相の林芳正(57)は学部新設を認可した。委員の一人は「認可ありき。文科省から『(学部新設に必要な)四条件を満たしているかは議論しないで』と何度もくぎを刺された。初めから仕組まれた審査だと思った」と明かした。

 なんとか今年四月の開学にこぎ着けた加計学園。獣医学部長の吉川泰弘(71)は学園幹部にこう愚痴をこぼしたという。「さんざん設置審でいじめられたよ」

 ただ、これで疑惑の幕引きとはならなかった。(敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 
 

第2部(7)「いいね」文書で窮地 政権に「不都合な真実」次々

愛媛県作成の「首相案件」文書について、4月11日の衆院予算委で「コメントする立場にない」と7回繰り返した安倍首相。直後の共同通信の世論調査で、首相の説明に「納得できない」との回答が79.4%に上った

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 吐く息が白い二月の早朝。東京都内の閑静な住宅街から、経済産業省ナンバー2の経産審議官の柳瀬唯夫(57)が姿を現した。

 首相秘書官当時の二〇一五年四月、加計(かけ)学園や愛媛県の幹部らと首相官邸で面会した人物。取材班は「本件は首相案件」という柳瀬の発言を記した県作成の文書を入手し、話を聞こうと外で待っていた。

 柳瀬は突然の来訪に驚くそぶりも見せず、「そんなこと言うとは思えないけど。会ったという記憶がないんだよ」と繰り返した。

 文書には首相の安倍晋三(63)と学園理事長の加計孝太郎(67)が会食し、獣医学部の話題が出たという記述もあった。事実なら「学園の学部開設計画を知ったのは一七年一月二十日」とする安倍の国会答弁がうそだったことになる。

 その確認を求めると、平静を保って歩いていた柳瀬が突然、声を上ずらせた。「本当、それ? 全くない、全くない」

 三月に入ると、安倍政権にとって「不都合な真実」が次々と明るみに出た。

 森友学園をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題や防衛省が「存在しない」としてきた陸上自衛隊のイラク派遣時の日報問題。さらに追い打ちを掛けたのが「首相案件」文書だった。

 四月初めに本紙などが文書の存在を報道すると、政権批判がさらに強まった。

 「うそをついているのは県の担当者か柳瀬さんか」。そう野党が攻め立てると、安倍は「県の文書に国はコメントする立場にない」と言い逃れた。そこへ新たな「加計ありき」を示す文書が突きつけられる。

 五月下旬、国会の要請で県が提出した二十七枚の新文書。学園側から受けた報告を記録した文書には、一五年二月二十五日に安倍と加計が面会し、安倍が「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とコメントしたとあった。安倍の国会答弁と矛盾するだけでなく、直接関与をうかがわせる物証に国会に衝撃が走った。

 安倍と学園側は面会を否定したが、県知事の中村時広(58)は提出した文書を「何も改ざんする必要がない。ありのままの報告書類」と信ぴょう性を強調した。

 窮地に立つ安倍。与党内からも説明責任を問う声が上がり、今秋の自民党総裁選に暗雲が立ち込めようとしていた。そんなとき、県の関係者はあるうわさを耳にした。「首相と加計理事長の面会を『事務局長のうそだった』ことにし、幕引きさせようとたくらんでいる」

 そんな話をいまさら誰が信じるのか-関係者は、このときはうわさを歯牙にもかけなかった。(敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 
 

第2部(8)「面会はウソ」と助け舟 官邸の圧力 疑念晴れぬまま

疑惑発覚後、初めて記者会見する加計学園の加計孝太郎理事長(右)。参加は地元記者クラブ限定で、30分足らずで切り上げた。首相答弁と食い違う説明に、取材班は再取材を申し込んだが、断られた=6月19日、岡山市で

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 五月下旬の土曜の昼下がり。普段より人がまばらな本紙編集局に、何の前触れもなく一枚のファクスが流れてきた。

 送り主は加計(かけ)学園。二〇一五年二月、首相の安倍晋三(63)が学園理事長の加計孝太郎(67)と面会し、「新しい獣医学部の考え方はいいね」とコメントしたという愛媛県文書について、次のように釈明していた。

 「当時の担当者が、実際にはなかった総理と理事長の面会を引き合いに出し、愛媛県と今治市に誤った情報を与えた」。二人の面会は学園側がでっち上げたものだと、報道各社に一斉に通告してきたのだった。

 二日後には国会で安倍出席のもと、加計・森友学園問題の集中審議が控えていただけに、関与が疑われた安倍に助け舟を出した格好となった。野党は「ウソの上塗り」と批判。与党のある副大臣も「何かを隠すためにウソを重ね、新しいウソをつかないといけなくなった。そう見られても致し方ない」と突き放した。

 学園の説明通りなら、安倍の名前を使って県や市をだまし、獣医学部をつくったことになる。それでも安倍は平静を保った。「なぜ怒らないのか」と追及されても「私は常に平然としている」とはぐらかした。

 学園に計九十三億円を補助する県と市に、学園事務局長の渡辺良人が謝罪に訪れたのは、ファクスから五日も後だった。記者たちの前でニヤつきながら「その場の雰囲気で、ふと思ったことを言った」「たぶん僕が言ったんだろう」とあいまいな発言に終始した。

 疑念が膨らむ中、沈黙を続けてきた加計が突然、記者会見を開いた。大阪が地震に襲われた六月十八日の翌朝。開始二時間ほど前、地元・岡山の記者クラブ加盟社だけに通告してきた。

 加計は「記憶にも記録にもない」と安倍との面会を否定。予定より早く会見を打ち切った。加計が県知事の中村時広(58)に謝罪する動きもあったが、県の関係者は「面会はオープンで、その後に会見してくださいと暗に伝えると、連絡が来なくなった」と明かした。

 同じころ、獣医学部を視察した愛媛県議福田剛(49)は驚いた。図書館の本棚はスカスカで専門書はほとんど見当たらなかった。「無理して開学にこぎ着けたのだろう。本当に先進的な教育ができるのだろうか」

 七月下旬、国会閉会。安倍は最大の窮地を脱した。

 一年以上にわたり政権を揺さぶり続ける疑惑は首相官邸に集中する権力の内幕をあぶり出した。首相の友人が官僚らから厚遇され、逡巡(しゅんじゅん)する行政の現場には、首相の威を借りたさまざまな圧力がのしかかった。

 「記憶にない」という言い逃れやうそがまかり通る国会で、疑惑の霧は晴れないままだ。権力の傲慢(ごうまん)を許さないためには、有権者の手で、真の言論の府を取り戻す必要がある。 =おわり

(敬称略、肩書は当時。この連載は、中沢誠、池田悌一、池内琢、井上靖史、中野祐紀、伊藤隆平、小坂亮太が担当しました)

(2018年8月14日)

 

 


 


【権力の内幕 検証・加計疑惑】

2018年09月25日 13時56分59秒 | Weblog

東京新聞 TOKYO Web

 安倍晋三首相の友人が経営する加計学園の獣医学部新設を巡り、「加計ありき」で行政がゆがめられた疑惑が浮上、「本件は首相案件」とする内部文書が発覚し、首相の関与が最大の焦点となった。「一強支配」の権力の内幕で何が行われたのか。徹底検証した連載15回(第1部2018年7月15日~21日付朝刊、第2部7月29日~8月5日付朝刊)を掲載する。

【権力の内幕 検証・加計疑惑】

第1部(1)悲願の裏に「首相案件」 腹心の友 蜜月40年

岡山理科大獣医学部の入学式であいさつする加計孝太郎理事長=愛媛県今治市で

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 「いろいろご心配をおかけしたが、予想をはるかに上回る志願者が集まった」

 瀬戸内海の潮風が穏やかな四月三日、愛媛県今治市の丘陵に開学した岡山理科大獣医学部の入学式があった。運営する学校法人「加計(かけ)学園」理事長・加計孝太郎(67)は壇上の金びょうぶの前で胸を張った。

 式を終えて出てきた百八十六人の新入生の中には、高揚と不安が入り交じった女子学生(18)もいた。

 「動物園で働くのが夢。でも、あの獣医学部なの?って言われるかも」

 この一カ月ほど前、本紙取材班は獣医学部開学にまつわる県作成の一通の内部文書を入手していた。

 「要請の内容は総理官邸から聞いている」

 「かなりチャンスがあると思っていただいてよい」

 開学三年前の二〇一五年四月二日、内閣府地方創生推進室。学園や県の幹部らが次長の藤原豊(54)=現経済産業省貿易経済協力局審議官=から、「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と獣医学部新設の秘策を聞いた様子が生々しく記されてあった。

 「本件は首相案件」。引き続き官邸で面会した首相秘書官の柳瀬唯夫(56)=現経済産業審議官=からも強力な後ろ盾を得ていた。

 「やはり加計ありきだったのか」。取材班は二人の出勤時などに疑問をぶつけたが、柳瀬は「覚えてない」と繰り返し、藤原は「内閣府に聞いて」の一点張りだった。

 加計には三月下旬、岡山市での岡山理科大の卒業式後に質問しようとしたが、職員に阻まれた。今治市での入学式の取材は、地元の記者クラブに限定され、質問の機会を得られなかった。

 加計が獣医学部新設に動きだしてから十年余り。悲願が実現する大きな要因となったのは、加計を「腹心の友」と呼ぶ首相の安倍晋三(63)が、政権に返り咲いてすぐに導入した国家戦略特区制度だった。

安倍晋三首相の妻昭恵氏が2015年12月に投稿した首相(右から2人目)と加計孝太郎氏(左端)、増岡聡一郎氏(右端)らの写真=一部画像処理

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◆米留学で出会い「晋ちゃん」「加計さん」

 ワイングラスを手に、男たちがソファでくつろぎ笑みを浮かべる。

 東京駅八重洲口にほど近い「鉄鋼ビルディング」四階の会員制ラウンジ。二〇一五年十二月二十四日夜、首相夫人の安倍昭恵(56)が自身のフェイスブックに一枚の写真を発信した。付けたコメントは「クリスマスイブ。男たちの悪巧み」。そこには夫で首相の安倍晋三(63)と三学年上の加計(かけ)学園理事長、加計孝太郎(67)らがいた。

 「二人は互いに『晋ちゃん、加計さん』と呼び合う仲。二人とも、よく駄じゃれを言うんですよ」。集まりを主催した同ビル専務の増岡聡一郎(55)は二人の親密ぶりを口にしながらも、「これはビルの竣工(しゅんこう)祝いの会。悪巧みどころか、加計学園の獣医学部の話は一度も出なかった」と話す。

 一二年のクリスマスイブも、二人は都内の飲食店で昭恵らとともにテーブルを囲んだ。この八日前に行われた衆院選で、自民党は三百近い議席を獲得して政権を奪還。党総裁の安倍の首相返り咲きが確実視され、店の前には大勢の報道陣が待っていた。参加者全員の飲食代を店に支払ったのは加計側だった。

 二人の出会いは約四十年前の米国留学時代にさかのぼる。安倍は成蹊大を卒業後、米ロサンゼルスにある南カリフォルニア大で学んだ。当時の日本人留学生は数十人。同じ頃、牛丼チェーン吉野家の社費留学生だった西洋フード・コンパスグループ会長の幸島武(64)が回想する。

 「国会議員や大企業の役員の子どもばかりで、外車で通学する人も多かった。日本人学生同士でゴルフをすることがはやり、安倍さんともラウンドを回った」。ロス近郊の語学学校で学んでいた加計も後年、安倍とゴルフを楽しんだ思い出を経済紙に寄稿している。

 二人は帰国後、先代の敷いたレールに乗る。

 祖父の岸信介は元首相、父晋太郎は元外相という安倍は、父の秘書を経て国政入りすると出世の階段を上り、五十一歳で小泉純一郎政権の官房長官に抜擢(ばってき)された。一方の加計は、一代で学園を中国・四国有数の私学グループに発展させた父、勉(〇八年死去)を支え、〇一年に理事長を引き継いだ。

 帰国後も二人の関係が途切れることはなかった。ゴルフ仲間にとどまらず、安倍は一時、学園の役員を務め、年十四万円の報酬を得ていた。学園関係者は「二人の仲は学内で半ば公然の事実だった」と話す。

 年に二度、留学経験者が集う同窓会「アメリカ会」に、安倍は今もお忍びで顔を出す。「異国で暮らした心細さもあり、あの時の学友は特別な存在だ」。幸島は安倍と加計の蜜月ぶりをそう推し量る。

 出会いから約三十年。五十二歳になった安倍は〇六年九月、戦後最年少で首相の座を射止めた。同じ年、加計は獣医学部開設という野心に火が付いた。(敬称略、肩書は当時。この連載は、中沢誠、池田悌一、池内琢、井上靖史、中野祐紀、伊藤隆平、小坂亮太が担当します)

(2018年8月14日)

 

第1部(2)経営者の顔 前面 加計氏「志願者20倍」に商機

岡山理科大獣医学部の建設現場(手前)。加計孝太郎氏が初めて訪れたのは2006年だった=2017年5月17日、愛媛県今治市で

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 今年四月、愛媛県今治市に開校した加計(かけ)学園グループの岡山理科大学獣医学部は、中心市街地から外れた丘陵地にある。理事長の加計孝太郎(67)が初めて、この地を訪れたのは二〇〇六年のことだ。

 高台の更地に立つと瀬戸内海が一望できた。「見晴らしもよくて、いい場所ですね」。加計は一目で気に入ったようだった。「少子化で大学の学生集めは大変だが、獣医学部ならば、どこも志願者は二十倍ぐらいある」。市長の越智忍(60)=現県議=に、自信たっぷりに持論を説いた。

 後日、岡山市の学園本部に招かれた越智は、大学から中高、専門学校まで傘下に収める一大私学グループを目の当たりにする。「学生のニーズをつかみ、学園を発展させてきた手腕に、教育者というより経営者の面を強く感じた」。加計にそんな印象を抱いた。

 〇一年に父から学園の経営を引き継いだ加計は事業を拡大し、大学や学部の新設を進めた。〇四年、千葉県銚子市に開校した千葉科学大学もその一つ。誘致した当時の銚子市長、野平匡邦(まさくに)(70)は加計のことを「国家資格に直結させた特定の理工系学部のみを選択するという経営哲学を持ち、大学経営をビジネスとしてとらえていた」と話す。

 若者人口の減少に悩む今治市にとって、大学誘致は長年の悲願だった。

 獣医学部が開校した一帯は、今治市などが一九八〇年代から計画を進めてきた大規模開発エリア。広島県尾道市と橋で結ぶ「しまなみ海道」の開通を見越し、住宅地や商業施設と共に大学開設が想定されていた。

 しかし、バブル崩壊後は開発は縮小し、大学誘致は難航した。タオルと造船の街だけに繊維や造船の学科を検討したこともある。市内の短大を四年制にする話も出た。ベテラン市議は「来てくれるなら、どこでもよかった」と振り返る。

 あきらめかけていた二〇〇六年ごろ、手を挙げたのが加計学園だった。

 今治市出身で、後に学園事務局長となった渡辺良人が、地元県議と高校の同級生だった縁で話が進んだが、市企画課長だった渡辺徹(62)は「獣医学部と言われ、最初はピンとこなかった」と語る。文部科学省の規制で、獣医大学の新設が認められないことさえ知らなかった。

 いかに規制の壁を越えるか。学園と市が目を付けたのが、規制緩和を目的に小泉政権が導入した構造改革特区制度だった。 (敬称略、肩書は当時)

 
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(2018年8月14日)

 

第1部(3)獣医師会に危機感 親しい政治家は「安倍晋三さんです」

2017年6月の日本獣医師会総会後、国家戦略特区による獣医学部開設に疑念を示す北村直人顧問(中)=東京都内で

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 愛媛県今治市に獣医学部を新設しようと、加計(かけ)学園や市が動きだしたのは二〇〇六年。動向に神経をとがらせていたのは獣医師でつくる「日本獣医師会」だった。

 〇七年二月、東京・赤坂の料亭。元衆院議員で獣医師会顧問の北村直人(71)は、加計学園理事長の加計孝太郎(67)と向かい合った。「今治市に獣医学部をつくりたいんです」。そう語る加計だったが、北村には獣医学教育への熱意は感じられなかったという。

 「親しい政治家はいるんですか」と水を向けると、予想外の答えが返ってきた。「安倍晋三さんです」。時の首相の名前だった。北村の脳裏に加計学園の名前が刻み込まれた。

 この頃、農林水産省では獣医学部開設の布石が打たれようとしていた。獣医師の需給見通しを探るため、有識者による検討会が発足。農水省関係者は「獣医師が足りないとの結論が出るよう上から指示されていた」と証言する。だが、「獣医師は足りている」と獣医師会が待ったを掛けた。検討会の報告書は明確な表現を避け、両論併記となった。

 学園と市が構造改革特区で学部開設に挑んだのは、報告書が出て半年後の〇七年十一月。以来、毎年のように特区を申請したが、大学の設置認可を握る文部科学省に阻まれた。元同省幹部は「真剣に取り合う雰囲気でもなかった」と話す。

 獣医学部開設の動きはいったん下火となったが、一二年末、獣医師会に再び危機感が高まる。安倍の二度目の首相就任だ。翌年三月の理事会では「安倍政権に代わり、文科相からの指示で担当局長、課長が規制緩和の方向に転換しつつある」と危ぶむ声が上がった。北村は「安倍さんが総理に返り咲き、再び加計側の動きが活発になった」と言う。

 「麻生会長へ相談し、文科省に抗議の声明文を提出していただいた」「麻生会長も総理と会談され、説明を尽くされている」。理事会の議事録からは、自民党の獣医師問題議員連盟会長で副総理の麻生太郎(77)の政治力で、対抗したことがうかがえる。

 北村は一四年三月、東京・南青山の日本獣医師会で、加計と再び対面した。うつむく加計に「安倍さんに言われて来たんですか」と尋ねると、加計は顔を上げた。「獣医学部をつくりたい」。面会は十五分足らずで終わった。北村は加計が「仁義を切りに来た」と感じた。

 加計はその後、政界への接近を強める。相手は安倍の側近の文科相、下村博文(64)だった。 (敬称略、肩書は当時)

 
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(2018年8月14日)

 

第1部(4)下村文科相に接近 パー券代取りまとめ

下村博文事務所の日報には、加計学園がたびたび登場する

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 首相の安倍晋三(63)が二〇一二年末に政権を取り戻すと、側近の下村博文(64)は大学の認可権限を持つ文部科学相に就いた。取材班が入手した一四年の下村事務所の日報からは、加計(かけ)学園が繰り返し接触してきたことが浮かび上がる。

 「ご留任おめでとうございます。お祝いをしたいと思います」。一四年九月、内閣改造で下村が文科相に再任されると、学園は下村事務所にお祝いを伝えた。学園からの陳情を事務所が文科省につないだ形跡もある。日報には「事務方を通じてお願いをいたしました」との報告がある。

 学園理事長の加計孝太郎(67)は下村夫人とも縁がある。広島加計学園が〇六年、米国の学校と提携した際、夫人は米国で調印式に参加。一三年からは学園の教育審議委員になっている。

 昨年六月には「加計マネー」の存在も明らかになった。下村を支援する政治団体「博友会」が一三年と一四年、加計学園からパーティー券の代金として百万円ずつ受けたのに、政治資金収支報告書に記載していなかったと週刊誌が報じた。

 政治団体は一回のパーティーで、個人や企業から二十万円を超える支払いを受けた場合、相手の名前や金額を収支報告書に記載しなければならない。博友会は一三年十月に九百八十四万円、一四年十月に千九百四十九万円のパーティー収入を計上しているが、学園の名前はなかった。

 下村は会見を開き、百万円は加計学園の秘書室長が「十一の個人と企業から預かったもの」で、いずれも二十万円以下だから記載の必要はないと説明した。学園も下村に呼応するように「当学園と関係のある個人や会社の合計十一名のパーティー券代」と報道機関にファクスを送った。

 本紙が入手した「パーティー入金状況」というリストには、両年とも加計学園の名前と百万円の入金が記されている。全体では学習塾や教材会社が一枚だけ買っているケースが多く、百万円は際立つ。

 文科省は〇三年の告示で獣医学部の新設を規制していた。構造改革特区で獣医学部を開設したいという愛媛県と今治市の申請にも厳しい意見を出し続けた。学園が下村に接近した一四年も省内の空気は冷ややかなままだった。

 「今治市側に何度言っても、規制に穴を開けるような説得力ある提案はされなかった」と当時の文科省幹部。それが一五年に入ると、実現に向け、大きく動きだすことになる。 (敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

第1部(5)「首相と面談」後、一変 「何とか実現」秘書官動く

2015年4月2日に加計学園幹部らが柳瀬首相秘書官と面会した首相官邸。これを機に獣医学部開設の動きが加速する

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 加計(かけ)学園が愛媛県今治市に獣医学部を開学する三年余り前のこと。学園幹部らは焦りを募らせていた。

 二〇一五年二月十二日、学園と県、市の幹部が一堂に会した。学園幹部が学部新設の進捗(しんちょく)を報告したが、状況は芳しくなかった。

 「下村文部科学大臣が一歩引いたスタンスに変化している」。幹部はその理由に、自民党獣医師問題議員連盟会長で副総理の麻生太郎(77)の存在を挙げた。新設に反対する獣医師会に近い麻生への配慮から、文科相の下村博文(64)が後退しているという危機感だった。

 一連の協議内容を記した県の文書からは、学園の戦略が浮かび上がる。学園側は理事長の加計孝太郎(67)と首相の安倍晋三(63)の面会に期待をかけたが、なかなか実現しなかった。

 そこで「官邸への働きかけを進めるため」として学園の本拠がある地元・岡山選出の官房副長官加藤勝信(62)に会ったものの、「日本獣医師会の強力な反対運動がある」「既存大学の反発も大きく、文科大臣の対応にも影響」と後ろ向きな話ばかり聞かされた。

 すでに新潟市が国家戦略特区で獣医学部の設置を申請しており、新潟に決まるかもしれないという心配もあった。だが、その後、潮目が大きく変わる。

 「理事長と安倍首相が面談したので報告したい」。学園から連絡を受け、県は三月三日に打ち合わせをした。その際、学園幹部から「二月二十五日に理事長が首相と十五分程度面談し、首相からは『そういう新しい獣医大学の考えはいいね』とのコメントがあった」という報告があった-県文書にはそう記されてある。

 二人は面談を否定しているが、潮目が確実に変わったことを示す事実がある。首相秘書官の柳瀬唯夫(57)が学部実現に向け、動き始めたのだった。

 四月二日、首相官邸小会議室。学園や県、市の幹部ら六人が長いテーブルに横一列で並んだ。自治体の課長が官邸を訪れるのは異例中の異例であり、遅れて現れた柳瀬はまくし立てた。

 「本件は首相案件となっており、何とか実現したい」。もし安倍と加計の面談がなければ、柳瀬がなぜ精力的に動いたのか疑問が生じる。首相と秘書官は「一心同体の間柄」(秘書官経験者)だからだ。

 これを機に停滞していた計画が動きだした。県関係者が述懐する。「官邸に呼ばれたことで、国にオーソライズ(公認)されたと受け止めた。それまでなかった流れが生まれた」(敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

第1部(6)官邸を後ろ盾に権勢 秘策を伝授 特区のプロ

国家戦略特区を取り仕切っていた藤原豊次長(当時)。愛媛県文書には藤原氏から「国家戦略特区の手法を使って突破口を開きたい」と県や今治市に持ちかけたと記録されている=昨年6月、国会で

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 長年実現してこなかった加計(かけ)学園の獣医学部を開設するため、首相秘書官の柳瀬唯夫(57)らが推し進めた秘策、それが国家戦略特区だった。

 国家戦略特区は首相の安倍晋三(63)が二〇一三年に創設した肝いりの政策だ。「自らドリルになって岩盤規制に穴を開ける」。規制緩和による成長戦略をうたう安倍は、幾度となくこのフレーズを口にしてきた。

 小泉純一郎政権のときにできた従来の特区制度は、自治体などの提案の可否を規制官庁が判断するため、思うような成果が出なかった。そこで、国家戦略特区では、規制官庁を意思決定から排除することにした。

 規制緩和に積極的な有識者が提案された特区内容を審査。首相をトップとし、経済財政担当相などを務めた規制改革論者の竹中平蔵(67)らが名を連ねる「諮問会議」で認定する。同じ特区でも、規制に対する突破力は比べものにならない。

 その国家戦略特区を取り仕切っていたのが、内閣府地方創生推進室次長の藤原豊(55)だった。柳瀬と同じ経済産業省出身。構造改革特区の創設にかかわった特区の第一人者で、国家戦略特区でも、手腕をかわれて内閣府に呼び戻された。

 省庁の役職でいえば局長と課長の間だったが、内閣府関係者は「総理や官邸を後ろ盾に権勢を振るっていた」と言う。藤原周辺からは「上司の頭越しに官邸から指示が来た」「特区について官邸に説明に行くのは藤原さん」「総理が出席する特区諮問会議の原稿も書いていた」といった実力者ぶりが聞こえてくる。

 内閣府のある職員は「強引なやり方に反発もあったが、上司も他省庁も何も言えなかった」と明かす。「藤原さんの意向は官邸の意向」。それが内閣府内での共通認識となっていた。

 一五年四月二日、藤原は内閣府で学園や愛媛県、今治市の幹部らと面会し、「国家戦略特区を使って突破口を開きたい」と伝えた様子が県の内部文書に記されている。

 「既存の獣医学部とは異なる特徴を」「ペット獣医師を増やさないような卒業後の見通しをしっかり書き込んでほしい」と指示するなど、藤原のアドバイスはかなり具体的だ。まるで試験官が受験生に答えを教えるようなもの。内閣府の職員は「申請者に提案内容を細かく指示することはありえない」と証言する。

 事情に詳しい政府関係者が批判する。「加計ありきのストーリーを書いたのは官邸。官邸主導で特区の手続きがゆがめられた」(敬称略、肩書は当時)

(2018年8月14日)

 

第1部(7)選定迫り消えた主役 学園の痕跡 議事から隠す

2017年8月、加計学園の出席者名や発言を特区WGの議事要旨に記載していなかったことが発覚し、記者会見で経緯を説明する八田達夫WG座長=東京都千代田区で

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 二〇一五年六月、愛媛県今治市に国家戦略特区を活用して獣医学部をつくりたいという申請が内閣府に出された。申請者に名を連ねたのは県と市だけで、加計(かけ)学園の名前はなかった。

 学園の幹部が県や市の担当者と一緒に首相秘書官の柳瀬唯夫(57)に面会したのは申請のわずか二カ月前。「官邸に県や市を連れてきたのは学園側。学部開設は加計学園が主導した」と政府関係者が言うように、そこまでの主役は学園だった。だが、計画が公の特区選定作業に入った途端、主役の存在は消えていた。

 国家戦略特区選定の第一段階として、申請者は特区ワーキンググループ(WG)のヒアリングを受ける。規制改革派の民間有識者で固めたWG委員のヒアリングは、認定を左右する重要な選定手続きだ。

 県と市が作成した獣医学部特区案に対するヒアリングは、申請翌日という異例の早さで実施された。東京・永田町の合同庁舎七階の会議室。長机を挟んで委員と向かい合った申請者の席には、県や市の担当者と並んで学園の幹部三人が座った。

 「獣医学部設置の相談を(県や市から)受けている。今治市には(学園傘下の)岡山理科大学獣医学部を設置したい」。そう発言したのは学園相談役の田丸憲二(70)だった。

 ところが、内閣府が公表したヒアリングの議事要旨には、田丸の発言はおろか学園の三人の出席者の名前すら載っていない。

 昨年八月、この「加計隠し」が発覚すると、WG座長で大阪大名誉教授の八田達夫(75)は「学園は説明補助者。公式な発言とは認めていない」と抗弁した。

 ヒアリングに同席した内閣府幹部はいずれも「説明補助者」という言葉を聞いたことも使ったこともないという。幹部の一人は「走りながら決めるような状況で、ルールもはっきりしなかった」と証言する。

 別の内閣府職員は特区を仕切っていた地方創生推進室次長の藤原豊(55)の秘密主義ぶりを批判する。「主に動くのは直属の部下。周りへの指示は細切れで、組織全体に情報が伝わるのを避けていた」と明かす。

 首相のトップダウンで規制の突破を狙う国家戦略特区。強権ゆえに権力の私物化を招く危険性をはらむ。首相の安倍晋三(63)が友人に便宜を図ったのではないか-学部開設を巡る疑惑で指摘されるのもその点だ。

 「すべてオープンになっている。一点の曇りもない」。安倍はそう強調するが、関係者の証言からは特区選定過程の不透明な内幕が浮かび上がる。 =おわり

 (敬称略、肩書は当時。この連載は、中沢誠、池田悌一、池内琢、井上靖史、中野祐紀、伊藤隆平、小坂亮太が担当しました)

 (2018年8月14日)

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