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社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

キレる、スネる、自己中「モンスター部下」の猛威

2019年07月20日 17時39分33秒 | Weblog
河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
健康社会学者(Ph.D.)
2019年7月16日
 
 

 知人が、またウツになった。これで3人目。いずれも40代後半の管理職の男性である。

 1990年代以降、管理職の死亡率が急増している実態は先日書いたが(「中間管理職がヤバい!死亡率急増と身代わり残業」)、40代のメンタル不全者は2010年以降、急増している(日本生産性本部の企業アンケート調査)。

 長時間労働、睡眠不足に加え、仕事の要求度の高さ、さらには時間切迫度などで、ストレスの雨にびしょぬれになってしまうのだ。

 が、今回のケースは、それ以外のストレス雲が豪雨を降らせた。
「ここまで自尊心が低下したのは初めて」と語る知人を苦しめたのは、部下。

 いわゆる“モンスター部下”だ。

 2014年12月に50代の静岡市職員の男性が自殺したのも、モンスター部下が原因の1つだった。

 男性は14年4月に市の外部機関に異動となり、計6人の部下を持ったが、部下から業務の指示を巡り「いいかげんにしろ」「うそを言わないでください」などと強い口調で叱責されていたと複数の職場関係者が証言している。

これまで職場のストレスのもとは上司だったが

 本人の手帳には「部下から逆パワハラを受けている。バトウやシッセキがあり、席にいてもおちついていられない」と書き残され、異動から約8カ月後の12月24日、職場で自殺するというショッキングな事態となってしまったのだ。

 遺族は「長時間労働と部下からのパワーハラスメント(逆パワハラ)」が原因として15年5月に、公務災害認定を申請。男性は1カ月で最長約82時間の時間外勤務をしており、「異常ともいえる職場環境で繰り返し叱責・罵倒され、精神疾患を発症させる強度の精神的負荷だった」と判断。19年6月、地方公務員災害補償基金静岡市支部は自殺を公務災害に認定したという。

 これまで職場のストレスを考える上で「最大のリスクは上司」だった。それを象徴するようにキャリア研究や職場組織研究は「上司との関係性」をフォーカスし、上司=パワーある存在としてあの手この手で上司の問題を扱ってきた歴史がある。

 が、今や組織内でパワーは上司にあっても、社会的にパワーを持つのは部下だ。
時代は以前にも増して「部下オリエンテッド」。飲み会に誘うだけでパワハラと言われ、その是非がSNSで飛び交うご時世である。

 

 厚生労働省が実施した2016年度パワハラ調査でも、「上司から部下」によるパワハラが76.9%と最も多いものの、「部下から上司」によるパワハラも1.4%報告されている。

 たった1.4%と思われるかもしれないが、実態はこれ以上に存在しているのではあるまいか。

 実際、冒頭の知人は「会社には部下のことは話していない」そうだ。

 現在彼は3カ月の休養を得て、「完全復帰とは言えないけど普通に仕事ができている」状態まで回復した。そこで今回は、彼がメンタル不全に至るまでの経緯を話してくれた内容から「モンスター部下」についてあれこれ考えてみようと思う。

 「海外展開の部署に異動になって出張も多かったし、月100時間残業当たり前になっていたのが、かなり疲弊していたことは確かです。

 でも、部下のことが一番しんどかった。もうね、いちいちムカつくんです」

自己中心的でビジネスマナーに欠ける部下

 お客さんにシワシワの資料を平気で出す。注意すると突然、幽体離脱したみたいに無表情になって聞こえないふりをする。自信家さんで自分の意見が通らないと感情的になる。社内評論家のように、偉そうなことばかり言う。

 自分がやりたくないことは絶対にやらない。どんなに突然の仕事が入って、周りが残業していても視界に入らないのか見向きもしないで、とっとと帰る。地味な仕事は「それ、なんの意味があるんですか?」とやたらと聞いてくる。

 そのくせ結構ナイーブで、すぐに自信喪失する。そのたびに周りが慰め、褒めなきゃならない。それをしないと貝になり、誰かに優しく声を掛けてもらえるまでスネ続ける」

 

「1つひとつのことは、大きな問題じゃないし、余裕があれば対処できることなのかもしれない。でも、毎日毎日こうしたミニ事件が起こるわけです。ついこっちもカッとなる。でも、そこで大きな声でも出そうもんなら、パワハラになってしまうから我慢するしかない。

 すると、次第に自分を責めるようになるんです。自分に能力がないんじゃないかって。消えてくれればいいのに、とか思うようになってしまってね。

 家でもストレスを引きずっていたみたいで、妻からあるとき病院に行った方がいいって言われたんです。自分でもなんか俺おかしいって自覚もあったから、妻のアドバイスを素直に聞くことができたし、医者にすぐに会社を休まないと、取り返しのつかないことになるって診断されたときは『これであいつらから逃れられる』ってホッとしました。

 でも、心身が回復していくのと並行して、自尊心が著しく低下するんです。部下を教育できない自分が嫌で嫌で。この先、部下を持つのが怖いというか、二度と持ちたくないのが本音です」

ストレスにはライフイベントとデイリーハッスルの2種類

 おそらくここまで読んだ人の中には、「これってただ単に、知人くんの方に部下マネジメントの能力がないのだよ」だの、「メンタル低下したのは長時間労働が問題であって、モンスター部下は関係ないんじゃない」だのと思われた人もいるかもしれない。

 だが、人間の感情は複雑に交差し、感情は割れる。だからこそしんどい。第三者の目には「大したことじゃない」と映っても、当事者にとっては土砂降りのストレス豪雨となったりもする。

 私たちが感じるストレスは、ライフイベントとデイリーハッスルという、2つのシーンに分けられ、前者は人生上で起こる節目の出来事で、転勤や異動、転職、結婚、離婚、あるいは大切な人の死などが相当する。想定していなかった突然の出来事であればあるほど衝撃が強く、誰にとってもストレスフルで、ダメージも大きい。そのため周りからの共感も得られやすい。

 一方、デイリーハッスルは、日常的に遭遇するイライラ事で、人間関係のもつれや悩み、仕事上の失敗、忙しさからくる不満や怒りなど、誰もが普通に生活していれば遭遇するストレスである。

 が、何がデイリーハッスルになるかは個人により異なり、ストレス対処力の高い人は、そもそもストレスに感じない、あるいはストレスと感じてもうまく対処できるので、個人の性格の問題や能力の問題にされがちなのだ。

 

 ストレス研究の専門家の中にも、「日常イライラしたり、悩んだりするのは、この世の中に生きていれば当たり前だ」として、デイリーハッスルをストレッサー(ストレスの原因)として扱わない人も少なくない。

 とはいえ、リアルの世界は学問じゃ語りきれない問題だらけで、デイリーハッスルの慢性化ほど、つらいことはないのである。

 とりわけ上司と部下の関係のように毎日顔を合わさなくてはならない、相手を避けることも逃げることもできない状況では、地獄の苦しみとなる。上司がリスクなら「そうそうその通り!」と満場一致の賛成票を集められても、部下の場合はそうはいかない。知人が言うように自責の念も強まるため、余計にタチが悪い。

 私は講演会などで大抵質疑応答の時間を設けるのだが、最近のトレンドはもっぱら「ゆとりモンスター部下」だ。

「ゆとり‥‥という言葉は禁句らしいのですが‥‥」
「ゆとり‥‥と呼ぶこと自体、パワハラらしいのですが‥‥」
「自分たちの時代もそうだったのかもしれないけど、やはりゆとりは‥‥」

 といった具合に相当に気遣った前置きをした上で、心情を吐露する。

少子化がコミュニケーション下手を助長した

 ゆとり世代=モンスター部下では決してなく、モンスター部下にゆとり世代が多いと感じられているだけなのだが(と、ここでも気を遣わなきゃならないわけでして)、仕事のアドバイスをすれば「上から目線」と批判され、ちょっとでも厳しく指導すると「パワハラ」って騒がれてしまう上司たちは、「新しきが良きこと」という極めて短絡的な価値観を最優先し、「評価されない」とまるで子供のように機嫌をそこねる「ゆとりモンスター」に手を焼いているのである。

 いったいなぜ、モンスター部下なんて言葉が生まれるような時代になってしまったのか?

 個人的には少子化、SNSによるコミュニケーションスタイルの違い、大学のキャリア教育が影響していると考えている。

 今の若者たちの多くは「一人っ子」だ。1970年代前後から30年以上、兄弟の数は2.2人前後で安定していたが、2005年で2.09人に減少し、2010年には1.96人とついに2人を割り込んだ。

 そういった少子化に加え「子供の個性を伸ばせ!」だの、「褒めて育てろ!」だのといった“英才教育本”が普及し、親たちの「子への期待」は加熱。昭和時代はお父さんの指定席だった家庭の“主役”を子供が取って代わり、親からチヤホヤされて育ったのが平成生まれの若者である。

 彼らは「今日、学校はどうだった?」「勉強は?」「お友達は?」などと常に、親が先回りし、気持ちを察してあれこれ言ってくれるから、ゼロから話を組み立てる必要がない。いつも「自分」を気にしてくれるオトナがいれば、「はい」「いいえ」だけでコミュニケーションは成立するし、「今日はこんなことがあって、誰々ちゃんがこんなことをやって、僕はあれをやって」とひたすら言いたいことを発信すれば、伝わったとか、わかったかな?とか案じる必要はゼロ。

 

 その結果、相手に伝えるための言葉を持たない、伝わったかどうかも気にならない子供が量産される。それは「受け止める力」の弱い子供が量産されることでもある。

 自分の伝えたいことを必死で伝える努力を経験して初めて、相手の言わんとしているメッセージを「受け止める力」が育まれるため、その経験がない若者には、そもそも上司の言っていることが伝わりづらい。

 さらに、SNSがメインのコミュニケーションツールとなり、顔と顔を突き合わせてのぶつかり合いが激減した。それはコミュニケーションの神髄が身体に染み込む経験の喪失である。

 Twitter、facebook、Instagram、YouTubeなどでは、いいねの数やツイートの数、フォロワーの数など他者評価が溢れるため他人の評価にも過敏になる。

 親にチヤホヤされて育ったのに、会社にチヤホヤしてくれる上司はいない。そのため余計に他者評価への関心が過剰になり、ささいなことで自信過剰になったり、自信喪失してしまったり。時には「本当の自分はこんなもんじゃない」という気持ちが、モンスターの芽になってしまうのだ。

 極め付きは大学のキャリア教育だ。ただ、この件については長くなるので簡単に要点だけを書くことにする。

 つまるところ、私はキャリア教育の必要性と重要性は重んじているが「自分に合った仕事を見つけましょう!」「自分の能力を発揮できるやりがいのある仕事を見つけましょう!」的教育は大反対。そういった誤ったキャリア教育が「自分のやりたいことしかやらない若者」を量産し、彼らの伸びしろを狭めているのではあるまいか。

モンスター化を防ぐには組織で腰を据えた教育を

 と、あれこれモンスター化の原因を書いてきたけど、モンスター部下を量産しないためには、彼らの教育には手間がかかるという共通理解のもと、彼らの力を生かす方法をとるしかない。

 具体的には、部下にチャレンジする機会を与え、役立つ情報をきちんと伝達し、彼らができている点、できていない点を客観的にフィードバックし、彼らの心を周りが支える仕組みが必要不可欠。「上司1人=点」に任せるのではなく、「組織=面」で彼らを教育する。

 繰り返すが、それはとてもとても手間がかかる作業だ。

 だが、いつの時代もそうであるように、上司や先輩の真摯な気持ちは必ずや部下の心に響く。時には上司や先輩が若いときの失敗した経験を話してあげれば、部下たちは「自分と同じなんだ」という気持ちになり安堵する。上司への共感が、部下たちのモンスター化を防ぎ、そのエネルギーを成長に転嫁させるのだ。

 学生や20代の社員と話をすると、彼らが本質的には私たちの若い頃となんら変わらないと感じたりもする。むしろ今の若い世代は、私たちが若い頃になかったような優しさを持っている。ボランティアに参加する腰の軽さ、人に役立ちたいという気持ち。さらには様々なITスキルや新しい世代ならではの価値観は「私」の学びにもなると思うのだ。

 そして、どうか会社は、モンスターが部下であるが故に、その苦しみを打ち明けられない上司たちを救う仕組みもきっちりと検討してほしい。

■変更履歴
記事掲載当初、本文中の表記に誤りがありました。本文は修正済みです [2019/07/16 10:25]

 

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、 日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が 原因だった? “ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。 “ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。

 

 

キレる中高年に従業員が潰される!増えるカスハラ問題

 「カスハラ」問題が深刻化している。

 カスハラとは、カスタマーハラスメント。明確な定義はないが、「顧客や取引先からの自己中心的で理不尽かつ悪質なクレームや要求」のことで、先週ILO(国際労働機関)の定時総会で採択された「ハラスメント禁止条約」でも対象になっている。

 で、いつもどおり“遅ればせながら”ではあるが、厚労省もガイドラインの作成に乗り出す方針だそうだ。

 そんな中、民間の調査で「カスハラが最近3年間で増えた」と感じる人が6割近くいて、約7割がカスハラを経験していることがわかった。

 「カスハラの対応で、どんな影響があるか?」との問いには(複数回答)、「ストレスが増加」93.1%、「仕事の意欲が低下」82.1%、「体調不良」73.2% 、「退職」59.6%「休職」54.2"など、カスハラに対応した人に過剰な負担がかかることも明らかになっている。

 「せっかく大卒を積極的に採用して1年間コストをかけて育成しても、お客に潰されるんです。職業差別がひどくなってませんかね」

  つい先日タクシーに乗ったときも、運転手の方がこう嘆いていた。

 どう考えても「このコースしかないでしょ」というときでさえ、「ご希望のコースはございますか?」だの、「●●通りから△△に入る道でよろしいですか?」と聞いたり、「お話してもいいですか?」と断ってから雑談を始めたりするるのも、運転手さんによればすべてカスハラ対策だという。

若い社員が早々に辞める一因にも

 というわけで今回は、「カスハラ」についてアレコレ考えてみようと思う。

 「私も40年くらい運転手やってますけど、“普通のお客さん”に怒られるようになるなんて想像したこともなかったですよ。つい先日もね、『さっき確かめた金額と違う!』って怒りだしちゃって。

 こちらの都合で指定の場所を過ぎたときは、メーターを止めます。ほら、交差点とかで止められなかったり、危なかったりするときがあるでしょ。でも、その時は私が止まろうとしたら『もっと先まで行け!』って言われたんです。参りますよね。

 ホントね、大人しそうに見える人が突然怒りだすから、怖いですよ。
 まぁ、私くらいになれば、言われてもなんとか対処したり、あまりにひどいことを言われたら車止めて『会社に電話しますので』とか言ったりできるけど、若い人はそんなことはできない。

 だから、メンタルやられて辞めちゃうんです。会社はタクシー業界のイメージをよくしようと賃金上げたり、福利厚生充実させたり、いろいろやってるのに。お客さんに潰されちゃうんだもん。やってられないよね」

 

「え? どんなこと言われるのかって? まぁ、いろいろありますよ。

 ‥‥そうね、ほとんどは言葉の暴力だけど、あれは結構、あとからこたえるんですよね。トラウマっていうのかな。アホだの、ボケだの、すごい怒鳴り方されて。今の若い子たちはそんなに怒られた経験がないし、年上と話すのも下手。1回でもやられるとお客さんとコミュニケーション取れなくなって、完全に悪循環ですわ。

 特にね、理不尽なこと言うのは年配の男性に多いんです。命令口調でね。自分の運転手だと勘違いするんですかね。殴られたら、警察呼べばいいけど、言葉の暴力じゃあ通報もできませんから。いやな世の中になってしまいましたね」

 ‥‥せっかく育てた社員が辞めてしまうほど怒鳴り散らすとは。事態は想像以上に深刻である。しかも、年配の男性。ふむ、確かに。

 コンビニでアルバイトをしている学生が、意味不明の横暴な態度を取るのは、決まってダーク系のスーツをきちんと着たビジネスマンとぼやいていたことがあった。社会的に強い立場にいる人たちの特権意識が高まっている傾向は確かにあるのだと思う。

 だが、女性であれ、おばさんであれ、若者であれ、カスハラ加害者はいるし、今回は「どんな人が加害者になりやすい」ということがテーマではないので、「あくまでもこういう話を私が聞いた」というレベルにとどめておいていただきたい。

カスハラは心に深く長く傷を残す

 昨今のカスハラはエスカレートの一途をたどっていて、暴言や恫喝だけではなく、土下座を強要したり、SNSで広めるぞと脅しをかけたり、数時間にもわたりクレームを言い続けたり、賠償金を求めるケースも存在する。

 カスハラは介護の現場でも横行している。「介護職員への暴行、杖(つえ)を股に当てるセクハラも」に書いたとおり、利用者の家族からの迷惑行為も「カスハラ」である(以下、抜粋)。

・“挨拶ができていない”、“太っているナースは来るな”など、訪問する度に暴言をはく
・“おまえなんかクビにしてやる!”と激高。杖を振り回してたたこうとした
・料金請求時“カネカネばっかり言いやがって”“ボランティアって気持ちがないのか”と言われた。

 カスハラを受けた人が「10年以上前のことだが、思い出すだけで涙が出る」「言われるだけで何もできなかった」と告白しているように、心が引き裂かれるほどの深い傷を負うことになる。

 被害者の心情を慮れば「ガイドラインを作成する」などと悠長なことを言っている場合じゃない。早急になんらかの防止策に乗り出して欲しい。というか、これこそ「働き方改革」だと思うのだが・・・。

 

 いずれにせよ、運転手さんが“普通のお客さん”と表現したように、ひと昔前であれば、堅気の人はやらないようなクレームを、ごくごく普通の人が「お客様」の立場を利用して、従業員を追い詰めているというのだから困ったものである。

 が、これは裏を返せば、なんらかのスイッチが入った途端、誰もが「カスハラ加害者」になる可能性があるとも言える。人のふり見てわがふり直せ、ではないけど、自分や家族が加害者にならないよう気をつけねばならない。

 そもそも、この数年社会にまん延している「カネさえ払えば何をやっても許される」「客の要求を満足させるのは当然」という歪んだ“お客様”意識はどこから生まれたのか。
 個人的には大きく2つの要因が引き金になっていると考えている。

 まず、1つ目は「お客様第一主義」という理念の下、モノを作ることに専念してきたメーカーまでもが、「モノ」の付加価値を高めるために顧客サービスを強化し、競争に打ち勝とうとしたことである。

 その結果、本来であれば顧客サービスとは無縁の職業についた従業員にまで、顧客サービスが課せられ、それが従業員の資質の問題として処理されるようになった。

顧客の声とカスハラを明確に区別する企業は少ない

 例えば、システムエンジニア(SE)だ。
 数年前に行ったヒアリングでは(河合らの研究グループ)、多くのSEさんたちが顧客のところに出向いて要求を聞きながら作業を進める“サービス”を課せられていた。もともと「人と接するのが苦手だから、プログラマーの道を選んだ」という人が少なくないにもかかわらず、だ。

 システムの不具合の原因が顧客の側にある場合でも、途方もない要求を突きつけられる。「顧客が不機嫌というだけで、怒鳴られたり罵倒されたりした」と語る人たちもいた。

 企業側からすれば、現場で社員が耳にする「お客様のクレーム」は商品改善の大切な声かもしれない。だが、「大切な声」と「カスハラ」を明確に区別する企業は少ない。

 ただただ「お客様を満足させよう!」を合言葉に、ときにゲキを飛ばし、従業員たちに丸投げする。銃も防護服も身につけずに、丸裸で従業員は“危険なサバンナ”に放り出されているのだ。

 

 実際、冒頭で紹介した調査では、顧客対応マニュアルを作成している会社は31.4%だった。そのうち、カスハラに対応していないマニュアルが約4割で、全体の半数以上は「作成予定もない」という。

 で、ここからが2つ目の要因になるのだが、そもそもサービスとは“感情”を提供することであり、サービスを提供する労働は「感情労働(emotional labor)」と呼ばれ、それなりのスキルなくしてできるものではない。

 つまり、本来であれば従業員のサービスの教育や感情コントロールの訓練を行ったり、感情労働分の賃金を上乗せしたりするなど、お客様を満足させるためのコストが必要不可欠。付加価値を高めるためのサービスは、タダじゃないのだ。そんな認識もないままに、対人サービスを当たり前としていることが問題なのだ。

 2012年にスカイマークが、[スカイマーク・サービスコンセプト]という冊子を座席のシートポケットに入れ、顧客からのクレームで回収するという事態に至ったことがあった。

「感情労働」を切り分けてみせたスカイマーク

・荷物の収容はしない
・従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けていない
・安全管理のために時には厳しい口調で注意をすることもある
・メイクやヘアスタイルやネイルアート等に関しては「自由」
・服装については会社支給のポロシャツまたはウインドブレーカーの着用だけで、それ以外は「自由」
・客室乗務員は保安要員として搭乗勤務に就いており接客は補助的なもの
・幼児の泣き声等に関する苦情は一切受け付けません
・地上係員の説明と異なる内容をお願いする際は、客室乗務員の指示に従うこと
・機内での苦情は一切受け付けません
・ご理解いただけないお客様には定時運航順守のため退出いただきます
・ご不満のあるお客様は「スカイマークお客様相談センター」あるいは「消費生活センター」等に連絡されますようお願いいたします

 私はこの問題が発覚し、大バッシングが起きた時に、スカイマークを褒めた。「オ~、よくぞここまで言い切った!」と。このサービスコンセプトこそが搭乗料金の値下げにつながっているというロジックが成立するからである。

 [スカイマーク・サービスコンセプト]は、「我が社の飛行機に乗っているのは、客室乗務員ではなく、保安員です。ですから、他の航空会社さんとは違うのです」というお客さんへのメッセージであると同時に、「我が社はあなたたちに、乗客を感情的に満足させることを求めていない。あなたたちは、安全に乗客を届ける仕事に専念してください」という社員へのメッセージでもある。

 

 誤解のないように言っておくが、社会人の当たり前の振る舞いとして、お客さんに感謝したり、仕事をスムーズに進めるためにお客さんとコミュニケーションを取ったり、自分がお客さんを喜ばせたくてサービスすることと、「何が何でもお客さんを満足させる!」ことは別。

 お客様を「大切」に思って丁重に接することと、感情を売り払ってまでお客様を満足させることは、決して同じではないのである。

 「感情労働」は働く人の資質でも自主性に任せる問題でもない。「企業がコストを払う労働」である。「顧客を満足させるのは、タダじゃない」という当たり前を、一体どれだけの企業が理解しているのだろうか。

 企業は本当に「サービス」が最後の切り札なのか?を、きちんと考えた方がいい。

 その上で「『お客様を満足させる』ために我が社が従業員に求めるものは何か?」をとことん突き詰めてほしい。“顧客を満足させる”ことに疲弊しきって、しまいには金属疲労のように心がポキリと折れることがないように働く人を守ってほしい。

 これ以上、お客さんのモンスター化が進行しないためにも。

『他人の足を引っぱる男たち』(日本経済新聞出版社)


権力者による不祥事、職場にあふれるメンタル問題、
日本男性の孤独――すべては「会社員という病」が
原因だった?“ジジイの壁”第2弾。
・なぜ、優秀な若者が組織で活躍できないのか?
・なぜ、他国に比べて生産性が上がらないのか?
・なぜ、心根のゲスな権力者が多いのか?
そこに潜むのは、会社員の組織への過剰適応だった。
“ジジイ化”の元凶「会社員という病」をひもとく。

 

 


自民党本部が配布した「トンデモ野党」冊子を作成した黒幕は誰か

2019年07月20日 16時11分28秒 | Weblog

まぐまぐニュース!

2019.07.12 by

arata20190711

自民党本部が先月、所属議員に配布した冊子の内容が話題となっています。安倍首相を礼賛し自党に批判的なメディアや野党をひたすら叩く同冊子、ネットサイト「テラスプレス」掲載の記事をまとめたものとされますが、肝心のそのサイトの作成者が不明とあって、様々な憶測を呼ぶ事態に。元全国紙社会部記者の新 恭さんは自身のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』で、映画『新聞記者』にも登場する内閣情報調査室が関係している可能性を指摘し、その根拠を記しています。

 

自民党本部が配布した冊子は何者が作成したのか

東都新聞の女性記者のもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXで届いた…安倍政権を思わせる疑惑を描いた政治サスペンス映画『新聞記者』が上映中だ。

映画の原案になったのは東京新聞社会部望月衣塑子記者の同名著書新聞記者』である。モリ・カケ問題が世間をにぎわしていたころ、社会部記者ながら菅官房長官の定例記者会見に乗り込み、“シャンシャン会見”の空気を破って、何度もしつこく菅長官に質問をぶつけていた望月記者について、当メルマガでも二度ほど取り上げた。思い出していただくために2017年6月15日の記事「怪文書はホンモノだった。強行採決後の出来すぎたタイミングで発表」のなかのワンシーンを再掲する。

加計学園の獣医学部新設をめぐる「総理のご意向文書の有無について、「確認できない」と言い張っていた松野文科大臣が、前川喜平前事務次官や現役官僚からの証言を受け「追加調査すると姿勢を転換した後の官房長官記者会見

 

望月記者 「公文書管理についての告発が相次いでいます。前川さんだけでなく複数の方の告発が出ています。もう一度真摯にお考えになって文書の公開、あるいは第三者による調査をお考えになりませんか」

 

菅官房長官 「わが国は法治国家ですから法律に基づいて適切に対応している」

 

望月記者 「匿名で出所がハッキリしない文書は調べないということですが、公益通報者保護法のガイドラインに匿名の通報についても可能な限り同様な取り扱いを行うとなっています。法治国家であればこのガイドラインに沿って文書があるかないかを真摯に政府の方で調べるべきではないですか」

 

望月記者は司会者の「同じ質問を繰り返さないで」「質問は簡潔に」という声にもひるまず続けた。官房長官の記者会見では異例なことだ。窮すると菅官房長官は同じ答えを繰り返す。

映画『新聞記者』や望月記者の著書に触発されたのか、米国でも菅官房長官のメディア対応を批判する声が出始めた。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は5日、菅義偉官房長官が記者会見で東京新聞記者の質問に対する回答を拒むなど、そのメディア対応を指摘したうえで、「日本は憲法で報道の自由が記された現代的民主国家だ。それでも日本政府はときに独裁政権をほうふつとさせる振る舞いをしている」と批判した。
(朝日新聞デジタル2019年7月6日)

独裁政権をほうふつとさせる振る舞い」は、枚挙にいとまがない。気に入らない官僚には容赦なく人事で報復し、官僚はそれを恐れて官邸の意向に忍従する。政権に批判的なコメンテーターはテレビ番組から降板させるよう圧力をかける。秘密保護法や共謀罪の創設で自由、人権を脅かす…。

望月記者の著書は、真実を隠そうとする菅官房長官との記者会見でのせめぎ合いに重点がおかれているが、映画でクローズアップされているのは「内閣情報調査室」(内調)の存在だ。

内調は、公安警察、公安調査庁などと並ぶ情報機関だが、ありていに言えば、官邸内のスパイ組織”である。そのトップ、北村滋・内閣情報官は、かれこれ7年半もそのポストに在任し、何かと安倍首相に頼りにされている。

たとえば、“アベ友”ジャーナリストとして名をはせた山口敬之氏が、準強姦容疑で警察に逮捕されかけたさい、もみ消しの相談を引き受けていたのが北村氏だとされている。

安倍首相の親友が経営する加計学園の獣医学部新設疑惑をめぐり、重要な証言者、前川喜平氏が出会い系バーに出入りしていたと報じた読売新聞のネタモトは、前川氏の行動を以前からチェックしていた内調のリークであるらしいこともわかっている。

 

映画『新聞記者』では、職員たちがパソコンに向かう内閣情報調査室の場面がたびたび出てくる。政権の都合のいい情報を書き込み情報操作に励んでいるシーンだ。

 

こういうのを見ると、安倍政権の応援サイトのなかには内調がからんでいるものもあるのではないかと、つい想像してしまう。

 

昨今話題の「テラスプレス」もそうだ。このサイトに掲載されている記事をまとめた冊子が自民党本部から党所属国会議員の事務所に大量に配られている

冊子の標題は『フェイク情報が蝕むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識』。選挙演説用の参考書としての利用を勧めているらしい。

中身はというと、「トンデモ野党のご乱心」「フェイクこそが本流のメディア」「安倍政権の真実は?」の三章からなり、立憲民主党や共産党朝日新聞や東京新聞をこっぴどく叩く一方で安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げている

 

記事はテラスプレスのものとほぼ同じであり、野党党首をバカにしたような顔漫画をそえて、一冊にまとめている。

TBS「ニュース23」の党首討論でこの冊子の件が取り上げられ、キャスターが「立憲民主枝野代表の無責任を嗤う」と書かれていることを示して考えを求めた時、安倍首相は「党本部でいろいろな冊子を配っていますが、いちいち見ていない」と断ったうえでこう言った。

無責任といえば無責任だと思いますよ。統一候補を選んでいるにもかかわらず、共産党は自衛隊違憲だと言い、立憲の枝野さんは合憲だといっている」。

いつもの話のすり替えだが、安倍首相のこの言いぶりから、冊子が配られていることはもちろん野党批判の中身についても知っていることがうかがえる。

ところで、「テラスプレス」なるサイトが奇妙なのは、その名で検索してもページが出てこないことだ。つまり運営者はアクセス数にまったく興味がないようなのである。その点では、映画に描かれたようなネットによる情報操作とは多少趣が異なる

運営主体や執筆者は不明だが、昨年7月以来150本近くも記事が投稿されており、内容は安倍応援団そのものであっても、文章は分かりやすい。いわば新聞記者が書いたような感じである。

他に、はっきりしていることがある。同じ自民党なのに、石破茂氏には敵対的なのだ。

このサイトへの投稿が始まったのは昨年7月13日ごろだが、8月6日の記事では、総裁選への出馬意向を固めた石破氏について、加計学園問題とからめ「獣医師の既得権益を守るために動いたと批判している。

総裁選を安倍氏が有利に戦えるように意図した記事であるのは明白だ。だから、口が裂けても自民党本部がからんでいるとは言えないだろう。

あえて運営主体をわからないようにし、当然、連絡もとれないようにしている。この奇怪なサイトの正体は何者なのか。

その点、総裁選で内閣情報調査室が安倍氏のために活動していたという情報があるのは、気になるところだ。

総裁選から遡ること5ヶ月前、内調スパイたちは石破氏に関する情報収集に動き出していた。
(今井良著『内閣情報調査室』より)

 

サイトの実質的運営者が誰であれ、官邸か党の安倍側近が何らかの形で関与していたと考えるほうが自然だ。スタート段階ではURLを知る特定の仲間内で情報を共有するためのサイトだったかもしれないが、記事が時系列的に増えるにつれ、選挙演説の参考資料としてうってつけになってきたのは確かだろう。

 

メディアの問い合わせに対し、自民党本部は「テラスプレスの許可を得て、参考資料として配布した」と説明している。テラスプレスとの関係については、次のように書面で回答したという。

 

「テラスプレスは、1年ほど前から広く一般にネット上で閲覧されており…説得力のある内容であることから、これらの記事をまとめた冊子があるということで、通常の政治活動の一環として、参考資料として配布したものであり、テラスプレスの運営等には関与しておりません」(ハフポスト日本版より)

そうだとすると、テラスプレスが冊子にして発行したものを、自民党が買い取ったか、無償でもらったことになる。党所属の国会議員の事務所に各20冊以上配っているらしいから、相当な部数だ。

だが結局、テラスプレスの運営、執筆者などについてはいっさい語らない。おかしな話だ。自民党のような大政党がまったく知らないところから選挙にかかわる大事な資料を受け取るはずがないではないか。

 

あくまで政権とは無関係の外部ネットメディアが存在する形にしその内容が自民党の主張に沿っているから使わせてもらったのだという装いに仕立てたとしか思えない。

ニュースサイト「BUZZAP!」によると、このアカウントの位置情報から、皇居国会議事堂首相官邸霞ヶ関官庁街自民党本部の周辺に発信源があるらしい。

万が一、政府機関である内調が、特定の政党の選挙対策に一役買っているとすれば大問題である。

前川喜平氏のスキャンダルでっち上げや山口敬之氏の事件もみ消しに動き、さながら安倍首相の私的秘密工作機関に成り下がっているように見える現況からは、残念ながら、その疑いを拭いきれないのではないか。

内調には情報操作世論工作部門があるとされている。新聞、出版、テレビ、ネットなどのメディアごとに分かれてマスコミ担当の特命班が存在するとも聞く。

職務の性質上、われわれ一般人がその活動内容を知ることはできず、すべては推測の域を出ないが、逆に言うなら、内調が何をやっていても不思議ではないということになる。

公私の別をわきまえない不心得な政治権力者と、その忖度に余念のない側近たちが、年に何億円もの調査費を使う秘密機関を、思うがままに操ることができるなら、これほど恐ろしいことはない。

この件について、官邸は何も語るはずがない。冊子を配布した自民党本部が唯一の手がかりだ。

 

自民党本部は、疑惑を晴らすためにも、「テラスプレス」の実体を明らかにするべきである。

image by: 安倍晋三 - Home | Facebook

新恭(あらたきょう)この著者の記事一覧

記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。その実態を抉り出し、新聞記事の細部に宿る官製情報のウソを暴くとともに、官とメディアの構造改革を提言したい。記者クラブを通した官とメディアの共同体がこの国の情報空間を歪めている。

 

 

 

東京新聞 TOKYO Web

<参院選 くらしデモクラシー> 自民、物議醸す 演説参考資料

自民党が議員に配布した冊子

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 7月の参院選を前に、自民党本部が党所属の全国会議員に政治活動の「参考資料」として配布した冊子が物議を醸している。野党やメディアを厳しく非難するネット上のニュースサイトのコラムをまとめたものだが、サイトの運営組織や執筆者は不明。出どころ不明の無責任な言説に政権与党がお墨付きを与えている格好で、党内からもいぶかる声が出ている。 (小倉貞俊、宮尾幹成)

冊子に掲載された野党党首のイラスト

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 「フェイク情報が蝕(むしば)むニッポン トンデモ野党とメディアの非常識」と題した冊子はA5判百四十二ページ。編集・発行は「テラスプレス」とあり、前書きによると、同名のインターネットサイトにアップした記事を掲載した。

 関係者によると、党本部が十一日、「報道では語られていない真実を伝える内容。参院選に向けた演説用資料として活用下さい」と記した文書とともに、各議員事務所に二十五部ずつ配った。十部ほどの事務所もあった。

 その直後から話題になり、同党の武井俊輔衆院議員もツイッターで「妙な本(中略)ひいきの引き倒しもいいところです。扱いに困ります」とコメント。

 党職員が事務所に直接届けに来たという自民党の若手議員の一人も「こんな荒唐無稽なもの、選挙には使えないよね」と戸惑いの表情。ページをめくりながら「ほとんど読んでない。このまま捨てるつもり」と話した。

 波紋を広げている内容は「トンデモ野党のご乱心」と題した野党批判、「フェイクこそが本流のメディア」とした新聞批判に、安倍政権をたたえる三部構成。野党党首らを下品に描いたイラストを添え、立憲民主党と国民民主党を「さもしい政党」、共産党を「壮大な虚偽」、社民党を「オワコン(終わったコンテンツ)」と攻撃。安倍政権に批判的な新聞は「事実をねじ曲げた報道」、沖縄・辺野古の米軍新基地建設を問う沖縄の地元紙も「視野狭窄(きょうさく)」などとおとしめる一方、「安倍首相に代わる政治家がいるとは思えない」などと首相を礼賛するコラムを列挙している。

 版元とするテラスプレスのサイトには運営者や所在地などの情報がなく、これらのコラムは誰が何のために発信しているかはまったく明かされていない。

安倍首相のイラスト=いずれも冊子より

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◆党内からも疑問「荒唐無稽、使えない」

 自民党本部は取材に、サイトの運営には「関与していない」と回答。「(サイトは)一年ほど前から、すでに広くネット上で閲覧されている。時々の時局テーマを分かりやすく具体的に数字を示しながら解説し、説得力のある内容」「これらの記事をまとめた冊子があるということで、通常の政治活動の一環として、参考資料として配布した」と説明した。冊子の入手の経緯や、費用などについては「答えられない」とした。

<沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)の話> 素性の分からないネット上の発信者の言説であり、いわば怪文書の類い。それに価値を見いだし、平然とお墨付きを与えるなど、政権与党として嘆かわしい。政党の通常の活動として度を越している。出所不明の言説を国民が受け入れると考えているのなら、問題だ。

<NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」副理事長でジャーナリストの立岩陽一郎さんの話> 政権への批判をフェイクニュースと決めつける姿勢は、米国トランプ大統領の手法さながらで問題。メディアへの信頼を失わせようとの態度が先鋭化している。メディアの役割が弱まれば、民主主義が危うくなる。

 
 

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2010年に東北大学の出澤真理教授のグループによってはじめて発見・報告されたミューズ細胞

2019年07月02日 11時46分19秒 | Weblog

 

http://www.stemcells.med.tohoku.ac.jp/common/files/dezawa_publication_201904.pdf

https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20180306_01web.pdf

http://www.lsii.co.jp/pdf/20180903-1.pdf

細胞組織学分野 研究概要

生体に内在する新しいタイプの多能性幹細胞:Muse細胞

私たちの研究室では成人ヒトの間葉系組織に多様な細胞に分化する能力を有する新たなタイプの多能性幹細胞 Multilineage-differentiateing Stress Enduring (Muse)細胞を発見しました(Kuroda et al., 2010, PNAS;Wakao et al., 2011, PNAS; Kuroda et al., Nature Protocol, 2013)。
この細胞は

  • 骨髄、皮膚、脂肪などの間葉系組織にメインに存在し、また様々な臓器の結合組織にも内在する。市販の間葉系の培養細胞からも得られ、アクセスしやすい。
  • 1細胞から体中の様々なタイプの細胞に分化可能。自己複製能も有する。
  • そもそも体内に自然に存在する細胞であり、腫瘍化の危険が極めて低い。
  • すでに施行されている骨髄移植 (0.03%)や間葉系幹細胞移植 (~1%)の一部の細胞に相当し、安全性の実績がある。
  • 線維芽細胞と同程度の増殖力を持つ。

などの特徴を有します。

一般に体性幹細胞(組織幹細胞とも言う)は、その幹細胞の存在する組織を構成する細胞群を分化させることの出来る細胞と考えられております。例えば神経幹細胞であれば神経とグリアが、造血幹細胞では血球系の細胞が作られるのがその例です。しかし間葉系幹細胞では骨、軟骨、脂肪などの間葉系細胞の他に、神経(外胚葉)、肝細胞(内胚葉)など胚葉を超えた分化が報告されてきました。このことから間葉系幹細胞には多能性の細胞が内在するのではないかと議論されてきましたが、間葉系幹細胞はもともと均質な細胞によって構成されているわけではなく、複数種の接着性細胞の集団ですので、仮に多能性幹細胞が存在するとして、その実態はどのような細胞なのか、ということが長らく議論となっていました。

当教室では成人ヒトの皮膚や骨髄などの間葉系組織から多能性幹細胞を同定することに成功し、この細胞をMuse細胞と命名しました(Kuroda et al., 2010, PNAS)。Muse細胞は1細胞から3胚葉性の細胞に分化可能で、またストレス耐性能、多能性幹細胞マーカーの発現、自己複製能などを有します。そもそも生体に存在することからも腫瘍性増殖を示さないという大きな利点があります。間葉系幹細胞と多能性幹細胞の両方の特徴を備えており、間葉系マーカーCD105とヒトES細胞マーカーSSEA-3の二重陽性細胞として組織や間葉系の培養細胞から単離可能です。

多能性を備えながら腫瘍性が無いので再生医療への応用が期待されているわけですが、Muse細胞の持つ最大の利点は

  • 誘導もせずそのまま血中に投与するだけで組織修復をもたらす。

ということです。すなわち

  • 腫瘍を作らないという安全面だけでなく、分化誘導もせずにそのまま生体内に投与するだけで組織修復細胞として働く簡便性にある。

ということです。例えばES細胞やiPS細胞を再生医療に用いる場合には、目的とする細胞に分化誘導し、さらに腫瘍化の危険を持つ未分化な細胞を除去するという2つの要件が前提となります。しかしMuse細胞の場合、採取してきて体内に投与すれば障害部位を認識し、そこに生着して組織に応じた細胞に自発的に分化します。ですからCell Processing Center (CPC)での分化誘導などの操作を必ずしも前提とはしません。さらにMuse細胞の母集団となる間葉系幹細胞は現在世界中で数多くの臨床試験が展開されており安全性が担保されています。従ってMuse細胞以外の間葉系細胞が残存したとしても腫瘍化の危険は極めて低く、再生医療への応用が現実的であると考えられます。

現在、我々の研究室では

  • Muse細胞の発生学的な起源
  • 生体内での機能とMuse細胞動態の制御因子の開発
  • microRNA発現系の制御
  • Muse細胞の増殖能の制御因子
  • 組織間Muse細胞の比較検討

などの基礎的研究だけでなく、心筋梗塞、肝疾患、脳梗塞、神経損傷、糖尿病、感覚器障害などの多様な疾患をターゲットとした再生医療への応用に向けて国内外で研究を展開しております。

Muse細胞由来のクラスター/ES細胞由来の胚葉体

中枢神経系に存在する神経前駆細胞の探索

中枢神経系には多種の神経前駆細胞が存在すると考えられています。代表的な例が神経幹細胞ですが、神経幹細胞以外の前駆細胞の生体内での動態はあまり研究がされていません。こうした観点から、神経幹細胞の存在が同定されている脳室下帯や海馬以外の部位に注目し研究を行い、脈絡叢および第3脳室、脊髄中心管周囲の上衣細胞が、神経前駆細胞としての活性を有することを明らかとしてきました。現在、それら前駆細胞の正常および損傷時における性質や動態について解析を行い、発生・再生過程における動態の分子機構の解明を目指し研究を進めています。これらの知見を集積し、真の目的である内在性神経前駆細胞の賦活化による神経疾患治療法の開発につなげたいと考えています。

研究に関する詳細は下記までお問合せください。
〒980-8575 仙台市青葉区星陵町2-1
東北大学大学院医学系研究科細胞組織学分野
教授 出澤真理
FAX:022-717-8030
 
 
メールアドレスは「*」を「@」に変換してください。
出澤 真理

出澤 真理

細胞組織学分野
教授
mdezawa*med.tohoku.ac.jp
若尾 昌平

若尾 昌平

細胞組織学分野
講師
wakao*med.tohoku.ac.jp
串田 良祐

串田 良祐

細胞組織学分野
助教
y-kushida*med.tohoku.ac.jp
黒田 康勝

黒田 康勝

細胞組織学分野
助教
y-kuroda*med.tohoku.ac.jp
廣原 ゆかり

廣原 ゆかり

細胞組織学分野
研究員
y-hirohara*med.tohoku.ac.jp
李 根

李 根

細胞組織学分野
大学院生 D4
li.gen.t6*dc.tohoku.ac.jp
山口 理奈

山口 理奈

細胞組織学分野
大学院生 D3
r-yamaguchi*med.tohoku.ac.jp
アダム マテヨビッチ

アダム マテヨビッチ

細胞組織学分野
大学院生 D2
a.matejovic*gmail.com
ハーリド ハタビー

ハーリド ハタビー

細胞組織学分野
大学院生 D1
hatabi.khaled.s4*dc.tohoku.ac.jp
大川 香奈

大川 香奈

細胞組織学分野
大学院生 M1
kokawa*med.tohoku.ac.jp
菖野 佳浩

菖野 佳浩

大学院生(先進外科学分野 D4)
shono*med.tohoku.ac.jp
鷹谷 紘樹

鷹谷 紘樹

大学院生(心臓血管外科 D4)
takaya*med.tohoku.ac.jp
海野 裕一郎

海野 裕一郎

大学院生(肝胆膵外科 D3)
yumino68*surg.med.tohoku.ac.jp
高橋 誠

高橋 誠

大学院生(心臓血管外科 D3)
makoto.t*med.tohoku.ac.jp
南方 邦彦

南方 邦彦

特別研究学生(和歌山県医大)
kunihikominakata1178*gmail.com
梶原 千絵

梶原 千絵

細胞組織学分野
技術補佐員
c-kajiwara*med.tohoku.ac.jp
佐藤 美菜香

佐藤 美菜香

細胞組織学分野
技術補佐員
m.sato*med.tohoku.ac.jp
佐々木百合香

佐々木 百合香

細胞組織学分野
技術補佐員
yurika.sasaki.d8*tohoku.ac.jp
屋代智恵

屋代 智恵

細胞組織学分野
技術補佐員
t-yashiro*med.tohoku.ac.jp

TPP交渉の焦点「ISD条項」 海外投資トラブル回避 2013年3月1日

2019年05月31日 19時43分14秒 | Weblog

東京新聞 TOKYO Web

2013年3月1日

 
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 安倍政権が近く参加表明するTPP(環太平洋連携協定)は「ヒト・モノ・カネ」の行き来を活発にするため、関税の引き下げに加えて企業の投資や知的財産の保護などのルールづくりも協議している。中でも参加国の交渉では「ISD条項」の扱いが焦点となっていて、日本国内でも注目度が高まっている。どんな仕組みなのか。 (岸本拓也)

 Q ISD条項って何。

 A 英語の「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」の頭文字の略称で、「国家と投資家の間の紛争解決」という意味になる。要するに企業などの投資家を保護するためのルールだ。

 具体的には外国企業が投資先の国の対応によって損害を受けた場合、国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えることができる。

 制度が利用されるケースで想定されるのは、日本企業が新興国で建てた工場などに対し、その国が急に法律を変えて没収(国有化)する場合など。企業はその国に対し賠償金を求めることができる。

 Q 外資企業が差別されないための仕組みなのかな。

 A ISDがないと企業は投資先の国で不利益を被っても「泣き寝入り」の恐れがある。だから日本が経済連携協定(EPA)や投資協定を結んだ二十四カ国との間にはISDがある。例外はフィリピンとのEPAだけだ。これまで日本政府が訴えられた例はないが、世界各国での訴訟件数は二〇一一年末時点で四百五十件に上る。

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 Q そのISDが、なぜTPPでは問題視されるの。

 A 訴訟大国の米国の存在が大きい。日本の「TPP反対派」は「米国企業が、日本政府を次々と訴えるのでは」と心配している。「訴訟乱発によって日本独自の厳しい環境規制や食品安全規制が脅かされる」との見方もあり、ISDを「米国の毒まんじゅう」と批判する有識者もいるよ。

 Q 心配しすぎでは。

 A 「反対派」は米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結ぶカナダ、メキシコの例を挙げている。これまでにISDを使って四十六件の提訴があったが三十件が米国企業が原告。中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がいくつかあった。逆に米国政府が負けた訴訟はなく「ISDは米国優位」と指摘されている。ただ、米国企業の敗訴は十一件あり一概に米国有利の仕組みとも言えない。

 Q TPPでのISDの交渉はどうなっているの。

 A 豪州はTPPにISDを盛り込むことに反対しまだ決着していない。安倍晋三首相は「国の主権を損なうようなISDは合意しない」と主張しているが、日本が交渉に参加した場合、主張がどこまで通るかは見通せないのが現実だ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013030102000124.html

 

 

 
 
 

TPP 隠された真実 第1回「多国籍企業の企てを許さない」内田聖子

 
https://www.youtube.com/watch?v=pCKZbzKjo8s
 
 
 

TPP 隠された真実 第2回「ISDS条項という毒薬」孫崎享

https://youtu.be/p9i0Wy1kc8I

 

 

 

「国の主権を損なうような ISDS 条項」になっていないか

http://www.nohken.net/isoda1212.pdf

 

 

 

 

世界を支配するグローバルな裁判所の秘密 BuzzFeedの調査報道で明らかに

https://www.buzzfeed.com/jp/chrishamby/super-court-jp

 

 

 

ISDS条項って何だ - 京都府職員労働組合

http://www.k-fusyoku.jp/merumaga/16melmaga/tppix/5.6gatu/ins.html

 

 

https://www.cas.go.jp/jp/tpp/q&a.html

https://www.cas.go.jp/jp/tpp/qanda/pdf/170601_tpp_qanda_hayawakari.pdf

 


中国の遠吠え。「元号は中国の影響」が大嘘であるこれだけの証拠

2019年04月05日 01時30分32秒 | Weblog
まぐまぐニュース!
まぐまぐニュース!
第一線の専門家たちがニッポンに「なぜ?」を問いかける
 
2019.04.04
496

 

4月1日、新元号を各国に一斉通知した日本政府。もちろんその中に台湾も含まれていたわけですが、中国は快しとしなかったようです。伝えられているように「令和」の出典は国書である万葉集なのですが、早速「万葉集は中国の影響を受けている」と横やり。これを受けた台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、現在中国で使われている漢語の7割近くが日本生まれのもので、「日本の影響を消し去ることができないのは中国」としています。

 

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年4月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【日本】新元号を台湾に通知した日本に対し、中国は「中国の影響から逃れられない」

日本の対台湾窓口機関、新元号を駐日代表処に通知=外交部

 

4月1日、新しい元号が「令和」に決定しました。早くも「令和」をモチーフにしたお菓子やTシャツ、歌まで登場するなど、日本では大フィーバーが起こっています。また、諸外国でも元号決定について大きく報じられているようです。

日本政府は新元号について一斉に各国に通知しましたが、一部の台湾メディアでは、日本が承認する195カ国に台湾は含まれないため台湾には通知されないと報じていました。しかし、台湾外交部は、日本の新元号が日本の対台湾窓口機関である日本台湾交流協会から台北駐日経済文化代表処大使館に相当に通知されたと発表しました。

「自由時報」によると、台湾側に通知されたのは台湾時間で10時45分つまり日本では11時45分であり菅官房長官が新元号を発表した時間とほぼ同じです。日本は即座に台湾にも通知していたわけです。しかも通知内容も各国と完全に一致しており、日本政府は台湾を他国と分け隔てなく接していたことがわかります。

打臉假新聞!日本同歩通知台灣新年號 日網友讚:台灣是國家

このことを知った日本のネット民からは、「台湾にも告知されて嬉しい」「台湾は独立国家だ」「台湾の皆さん、平成時代のご厚誼を感謝しています。日台の互助関係が続きますように」といったメッセージが次々と発されました。

もちろん面白くないのは中国です。しかも、新元号はこれまでの中国の漢籍ではなく、初めて万葉集という国書から取られたわけです。

中国共産党系の「環球時報」は当初、新元号が万葉集から取られたことについて、「初めての脱中国」と速報しました。しかし、午後になって「万葉集は中国の古典文学の影響を受けている」ということで、「『令和』は中国の影響を消し去ることができない」と記事の内容を修正しました。

新元号「令和」 中国メディアが報道内容を修正

 

いかにも中国は「いまだ日本は中国の影響下にある」ことを強調しようとしているわけで、非常に滑稽です。いわゆる「中国のおかげ論」であり、文化すべてを中国が日本に下賜したというフィクションを語り、新たな「天朝朝貢冊封体制」を構築しようとしているわけです。また、日本政府が台湾に通知したことも中国は気に食わないのでしょう。「日本は勝手に台湾に新元号を通知したけれど、その元号は中国のお陰で生まれたものだ」と釘を刺したわけです。

 

たしかに漢字は中国から入りましたが、日本では音読み・訓読みに分け、さらに仮名を創出して独自の使用法を展開してきました。9~11世紀ごろは、アジア諸国で独自の文字を創作することがブームになり、日本では仮名がつくられて、国風文化が花開きました。要するに、中国離れの末に独自文化が隆盛したわけです。894年に遣唐使が廃止になったのも無関係ではありません

 

新元号の「令和」は、8世紀前半に大宰府の大友旅人の邸宅で開かれた「梅花の宴」で詠まれた32首の歌の序文から取られたものです。大宰府といえば、京の都から左遷された菅原道真(845~903年)が祀られている太宰府天満宮が同地のシンボルとなっています。

道真は京の邸宅の梅の花を非常に大切にしていて、太宰府赴任にあたり「東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ(忘れるな)」という歌を呼んでいます。そして、道真によって可愛がられていた梅の木は、大宰府に赴任した道真を慕って、京の邸宅から梅が飛んで来たという「飛梅」が有名です。

そして、894年に遣唐使を廃止したのはまさに菅原道真であり中国からの影響を排除したわけです。そのような由来からすると、漢籍ではなく、万葉集から「令和」という新元号が生まれたのも、ある意味で歴史的転換なのかもしれません。

 

とはいえ、漢字については、多くの人が勘違いしています。確かに中国からもたらされたものですが、その表現の創造性には限界があり、約10世紀の唐末には、造語力のみならず拡散力も衰えました

その結果、日本の仮名文字創出のように、アジア諸国で独自の文字創出が進み、東南アジアを中心に、インドサンスクリット系の表音文字だけでも60前後が創出されています。

 

漢の天下崩壊によって、中華文化史は歴史の没落を迎えました。10世紀以後の文字史からすると、仮名文字が主役となったわけです。

また、現在の中国で使われる漢語にしても、近代用語の7割近くが和製漢語となりました。加えて、中華人民共和国の憲法は75%以上も和製漢語が使われています。中国では和製漢語を「新辞・新語」と称していますが、科学、哲学、経済、革命から、共産主義、共和国などに至るまで、日本人が西洋の言葉を漢語に翻訳したものであり、現代中国もこの用語なしでは近代の概念を説明できないのです。

 

中国政府が日本の新元号制定にあたり「中国の影響を消し去ることはできない」というなら、今年で建国70周年を迎える「中華人民共和国の名称こそ日本の影響を消し去ることができない」ものであり、「中国共産党」にしてもそれは同様なのです。

今や元号を使っている国は日本のみですが、それは「万世一系が続いているからです。宋の太宗は日本からの留学僧・奝然に謁見し、日本では皇統が途切れずに続いていることを知って驚き、「これ蓋(けだ)し古の道なり」「これ朕の心なり」と羨ましがりました。

ちなみに元号の歴史ですが、東洋史の大家、宮崎市定博士の説によれば、それは漢の武帝からであり、秦始皇帝の天下統一からではなかったそうです。そのため、真の中国統一は漢の武帝だと宮崎博士は説いていますが、私もそれに賛成します。

 

中国の制度は秦から始まったものが多いですが、秦はわずか3世で滅びてしまい、万世一系はできなかったのです。漢の時代に王莽が「新」という王朝をつくり、孔子が理想としたユートピアをつくろうとしましたが、これも一代で滅びました。

日本の最初の元号は「大化」ですが、独自の元号をつくったのは、日本が中華王朝とは別の存在であることを示すためであり、その意義は非常に大きいのです。

易姓革命によって王朝がころころ代わった中国では不可能だったことを、日本では現在に至るまで続けているわけです。こうして考えると日本が「中国の影響下」にあるどころか、中国が日本を羨み続けていることがわかります。

清末の戊戌維新にしても、明治維新をモデルに行おうとしたものですし、孫文を始めとする革命の志士も、日本からの多大の援助があったことはよく知られています。中華人民共和国になってからも、日本からの巨額のODAが中国の近代化経済大国化を支えました

まさに近代中国は日本がつくった」と言っていいほどなのです。中国が自慢する高速鉄道からして、日本の新幹線の技術提供をそのまま「自国の独自技術だとパクっているわけです。

 

そもそも中国は地名を国名にし、他国に「中国」の使用を禁止しました。日本に対しても中国地方などの名称を変更するようにクレームをつけてきたことがありました。それは「中国という表記の独占を狙ったからです。黄河流域の中原で王朝が樹立されるたびに、それらの王朝は「中国」を自称してきました。

 

アメリカ政府は最近、「台湾旅行法」「国防権限法」のみならず、北京にある大使館の土地面積の10倍以上、99年の土地租借契約で台湾にAIT米国在台湾協会を設置しました。

 

日本政府も2017年の1月早々に、日本の駐台湾の外交機構である「交流協会」を「日本台湾交流協会」に名称変更しました。

台湾が対日機関の名称変更、中国が「強烈な不満」

「台北駐日経済文化代表処」の名称も、「台北ではなく台湾に早く変更すべきであり、日台の有志に働きかけていくことが必要でしょう。そのことにもどかしさを感じている台湾人も少なくありません。

 

もしアメリカが突如として台湾を国家承認した場合、日本はどうするでしょうか。また、もし中国軍が台湾を占領して太平洋進出の基地とした場合、日本のシーラインはどうなるでしょうか。

いまだ代表処の名称が「台北」のままなのは、外務省のチャイナスクールの妨害があるのか、または総理府に問題があるのかはわかりません。しかし、「令和」を他国同様に台湾に告知したということで、日本の姿勢が確実に変わってきたことを信じたいと思います。

image by: 首相官邸 - Home | Facebook

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年4月2日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込648円)。

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2019年3月配信分

  • なぜ中国は経済減速でも軍事・治安維持費の増大が不可避なのか/社会主義の中国で愛人文化が流行る理由(3/5)
  • 蔡英文「日本との安全保障対話を進めたい」日米台印連携で中国は軍拡で潰れる(3/12)
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2019年2月配信分

  • 中国で最先端科学が発展する恐ろしい理由/外国を知っても中国人は中国を変えられない(2/6)
  • 「日本に国王を奪われた」と嘘の歴史で天皇侮辱を正当化する韓国/国民監視と同化政策の中国は確かに「人類の恥」(2/12)
  • 中国でまたもや発覚した日本人拘束(2/20)
  • 中国が喜び、台湾に懸念が広がった沖縄県民投票/習近平の失態で支持率回復した蔡英文と台湾の行方(2/26)

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2019年1月配信分

  • 武帝時代に広がった貧富の格差(1/1)
  • 文在寅政権と対決することは必然だった日本/「一国二制度」を台湾が受け入れられない理由(1/8)
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中国は覇権国家になれず。世界的経済学者が予言する習政権の末路

2019.04.04
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世界的な経済減速懸念の広がる2019年は、世界覇権を競う米中にとって改めて重要な年となりそうです。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、通貨ユーロの創設に深く関わったことでも知られる著名経済学者の言葉をひきながら、2大覇権国家のうち中国が近い将来に、国として大変革を迎えることが避けられない理由を解説しています。

 

ジャック・アタリ、中国は覇権国家になれるか?

皆さん、ジャック・アタリさんをご存知でしょうか?フランスの著名な経済学者です。ミッテラン大統領の側近。1981年から91年まで大統領補佐官をつとめた。その後、欧州復興開発銀行の総裁をされていました。

この方、何が有名かというと、「EUを東欧やトルコに拡大し、共通通貨ユーロをつくれば、欧州は、アメリカに匹敵する超大国になれる」といった。

アメリカとソ連の時代が来る前、欧州は約400年にわたって世界の中心でした。ところが、第1次大戦、第2次大戦で、没落した。世界の中心は、欧州人が「田舎者」「野蛮人」と考えるアメリカロシア(ソ連)に移った

 

1991年12月、ソ連が崩壊した。世界から欧州の脅威は消滅し、アメリカの保護も必要なくなった。それで、アタリさんは、「もう一度欧州が覇権を握るチャンスが到来した!」と考えた。しかし、イギリス一国、フランス一国、ドイツ一国で覇権をとるのは難しい。だったら、西欧東欧を一つにしてドルに匹敵する共通通貨をつくればアメリカに対抗できる。そんな風に、彼は考えたのです。そして、EUは東欧を飲み込み、ユーロができ、リーマンショック前、ものすごい「ドル離れトレンド」が起きていました。

 

ジャック・アタリさんというのは、とても影響力のある人なのです(大昔に活躍していたので、もう90歳ぐらいだと思っていたのですが、まだ73歳だそうです)。そんなアタリさん、中国の未来についてどう考えているのでしょうか

歴史が示す中国独裁の末路

プレジデントオンライン3月28日から転載します。

 

【アタリ】しかし私は、中国のポテンシャルを過剰に評価してはいけないと思っています。第1の理由は、中国人の生活水準がアメリカ人の生活水準の15%にも満たないこと。西欧人や日本人に比べても、中国人の生活水準はかなり低い。この先も、低いままでいくと思います。金持ちになってから人口が減少し始めた日本と比べればよくわかりますが、中国は人民が豊かにならないうちに人口減少社会に突入したからです。

皆さんご存知のように、中国のGDPは世界2位です。しかし、国民の豊かさを表す一人当たりGDPはどうでしょうか?IMFによるとアメリカは2017年、世界8位で5万9,792ドル。日本は同年、3万8,448ドルで世界25位。中国は、8,643ドルで世界74位。つまり、中国の一人当たりGDPは、アメリカの約7分の1。日本の4.4分の1。

もちろん、中国はこれからも少しずつ順位をあげていくでしょう。しかし、この国のGDP成長率は、年々鈍化しています。成長期が終わりに近づいている中国は、もはや高成長できない。日本よりはるかにひどい少子化問題が起こる一人っ子政策の反動)。

人民が豊かにならないために内需が拡大しなければ、これから先の経済成長も大いなる輸出で賄っていくしかありません。これはそう簡単ではないというのが、第2の理由です。
(同上)

国民が貧しくて内需が拡大しない。それで、成長は、輸出で賄う。そうはいっても中国の価格競争力はもはやなくなっています。中国国民は、全体で見るといまだ貧しい。その一方で、人件費は、外国企業から見ると魅力がないほどあがっている。それで、日本企業も、中国からベトナム、インドネシアなどに生産拠点を移しています。これから中国が輸出を激増させることは難しいでしょう。

 

2つ目は、独裁であること。習近平主席は憲法を改正して、国家主席の任期を撤廃しました。共産党の指導部がどれほど優秀だとしても、やはり全体主義的な体制には脆弱な部分があります。独裁の中に市場経済を取り入れていくとブルジョワジーが台頭して、結果的に独裁を追い詰めることは、今までの歴史が示してきた通りです。10年後か20年後か、あるいは50年後なのかもしれませんが、独裁体制が続かないことを中国の指導者は、完璧にわかっているはずです。
(同上)

同感です。

独裁は、意志決定が迅速だという長所はあります。その一方で、「政権交代のシステムがないのは致命的。民主主義国家、たとえば日本であれば、自民党がおかしくなれば、「民主党に試しにやらせてみようか」となる。その結果さらにひどくなったので、「やっぱり自民党にもどそう」となる。その時、自民党は、「もう少し真面目にやろう」となるでしょう。このプロセスは、選挙によって革命なしで行われます。

 

しかし、中国では、こういうことができない。国家主席の任期を撤廃した習近平を倒すためには、党内でクーデターを起こす?共産党政権を交代させるためには革命しかない。これ、脆弱ですね。

一党独裁ソ連は崩壊したが…

【アタリ】これからの中国には、どういった社会モデルがつくられていくのか。独裁モデルは長続きするのか、一種の革命のようなことが起こりうるのか、体制への反逆者が出てくるのか。ソ連の体制は1世紀は続くだろうと誰もが信じていたのに崩壊したわけですからね。

 

私は、中国人の心理をあまりよく知りません。車やマンションさえ手に入れば自由がなくてもいいと諦められるのか、物質的な豊かさだけでは満足できなくなるのかどうか。しかしパンだけでは満足できなくなってペンを欲する日が、必ずくると確信しています。
(同上)

私もそう思います。これは、「きれいごと」に聞こえるかもしれませんが。「自由」というのは大事です。自分で自分の人生を決めることができる自由。いいたいことをいっても捕まらない自由。一度体験したら、元には戻れないですね。

 

今、欧米に留学していた中国人たちが、大挙して中国に戻っています。一度自由な空気を吸った彼らが中国で自由を抑圧されて生きていけるとは思いません。

 

中国、共産党の一党独裁。そんなに長くは続かないでしょう。

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

 

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