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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 54 アフリカ⑤

2023-09-10 10:32:47 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
  【阿弗利加2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
  参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
      田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

54 痩せすぎて広すぎてされど大地讃(ほ)むるアフリカーナの歌の明るさ

      (レポート)
 旅のいずれかの夜に、アフリカの歌姫の歌を楽しまれたのだろう。作者には、アフリカの大地は広すぎて、またその地味がやせすぎていると思われるのだが、この歌姫は明るくおおらかにアフリカ賛歌を歌っている。アフリカに住んでいる人々にとっては、そこは愛すべき郷土である。どのような土地であっても、そこに生きる人々は、その地を愛している。どこにいても逞しく生きる人間を表している。(T・H)


      (まとめ)
 アフリカの大地は痩せすぎているし、広すぎる。しかしその大地を讃める歌があり、アフリカーナが歌ってくれる。前向きで逞しいアフリカの人々が「大地讃むる」「歌の明るさ」に象徴されている。一連のまとめの歌にもふさわしいおおらかな歌。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 53 アフリカ⑤

2023-09-09 11:49:34 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
  【阿弗利加2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
  参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

53 サボテンは棘まで熱しむつちりと乙女の性のやうな実を生(な)す

       (レポート)
 沙漠のサボテンは、棘まで熱い。そしてその実はむっちりとしていて、乙女の性のようである。ここが難しい。「サボテンの実」と「乙女の性」、そこには虚と実の対比があるのではないか。生々しいけれどそこに強いものを秘めている。作者の乙女に対する思いがある。「サボテンの実」は次代を産むものである。乙女もそれを期待できるもの。そこに作者の熱い思いがある。(T・H)


      (当日意見)
★「乙女の性のやうな実」に、作者の力量を感じる。なまなましいけれどつよいもの。
    (崎尾)
★レポートのように性を産む行為と結びつけるとつまらない。もっと根源的なものだ
 ろう。(鹿取)


      (まとめ)
 ぎらぎらの太陽を浴びて育つサボテンは棘まで熱いという形容には実感がある。「乙女の性のやうな実」という大胆な言い方がこの作者らしい。「むっちり」もいかにも生命力に満ちあふれて今にも溢れ出しそうなエネルギーを伝えている。サボテンの実は食べられるそうだが、どんな味なのだろうか。色や形はネットでみることができるが、味までは分からない。濃厚なのだろうか。(鹿取)
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馬場あき子の外国詠 52 アフリカ⑤

2023-09-08 10:53:47 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
   【阿弗利加2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
   参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

52 アトラス越えの空気は土と林檎の香含めりしんみりとしてなつかしき

       (レポート抄)
 アトラス山脈を越えて憧れの沙漠への道。西の果て「アンテイ・アトラス山脈」越えの道は、土と林檎の香りを含んでいる。あのサハラ砂漠の荒涼とした荒々しさではなく、「含めり」との表現に、しっとりとした柔らかさが感じられる。「しんみりとしてなつかしき」と結句にかけて、みなひらがなで書かれた点に、その感情がよく出ている。(T・H)


        (まとめ)
 同行者の旅日記によると、アトラス山脈は2000~4000メートルくらい、バスで越えたことが分かるがけっこう険しい道もあるらしい。林檎だけだと甘くなるところを、土の香が加わったことで異国の精神的なスケールの大きさが出た。下句はまぎれもない作者のものいいだ。
 ところで、アトラスの命名の元になった神話によると、ゼウスとの闘いに敗れた巨人アトラスは天空を背負わされることになった。のちに英雄ヘラクレスが黄金の林檎を探しに来た時、一時ヘラクレスに担ぐことを肩代わりしてもらい自分の果樹園から林檎をもってくる。そのまま逃げようとするがヘラクレスに騙されてまた天空を担ぐはめになる。だから神話の絵にはアトラスが林檎をもっている場面が描かれることが多い。こういう神話が作られたのも、たぶん大昔からこの辺りが林檎の産地だったからだろう。この巨人アトラスが岩になったのがアトラス山脈だという。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 51 アフリカ⑤

2023-09-07 15:32:26 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
   【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
   参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

51 アトラスを越えんとしつつ深々とアフリカを吸へば匂ふアフリカ

      (レポート)
 今、アトラス山脈を越えて沙漠に向かいつつある。大きく深呼吸をしてみると、ああ恋しい沙漠の匂いがする。これこそがアフリカの匂いである。「深々とアフリカを吸」う、これこそ大自然の匂い、地熱の匂い。アフリカはこの匂いのほか表現のしようがないと作者は感激しておられる。詩情豊かである。(T・H)


      (まとめ)
 「アフリカを吸へば」とはたいへん大きな把握だが、ここではそれが生きている。アトラスを越えようとして深呼吸をするとアフリカそのものが匂うのだ。それは五官のすべてを通して感じ取るアフリカという存在の本質なのだろう。
 アトラス越え、は「阿弗利加」の章のいちばん初めに〈不愛なる赤砂(せきしや)の地平ゆめにさへ恋しからねどアトラスを越ゆ〉などと出てきているが、それぞれの章で発表の雑誌が違う為、時間的にラグが生じている。(鹿取)

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馬場あき子の外国詠 50 アフリカ⑤

2023-09-06 10:52:06 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
   【阿弗利加 2 金いろのばつた】『青い夜のことば』(1999年刊)P168
   参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
       田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
           

50 アルファー草の山が動くとみてあればその芯に騾馬がゐてほほゑめり

      (レポート)
 アルファー草がどういう草であるのか、私は寡聞にして知らないが、作者は、その草の山だろうと思って見ていたら、その山が動き出した。そしてその中には驢馬がいた。何ともユーモラスな不思議な世界である。「ほほゑめり」は、驢馬がほほえんだように見えたのではなく、作者この状況を見てほほえんだのではないか。(T・H)


(まとめ)
 アルファー草がどんな形状のものかネットで調べると、い草を短くしたような草で50センチくらい、高級な紙の材料になるそうだ。驢馬が体の何倍もあるアルファー草を背負って移動しているのであろう。草の山が動いているように見えたが、良く見ると驢馬が背負っているのだった。芯に驢馬がいるという表現が楽しい。そうか、そうか、驢馬が背負っていたのか、と思わずほほえんだ、というのだろう。(鹿取)
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