かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 130&127訂正版(ネパール)

2019-12-18 18:49:47 | 短歌の鑑賞
 *渡辺松男歌集の続きをリクエストくださっている方、もう少しお待ちください。月1度、6首
  ~10首ほどを鑑賞していますので、なかなか追いつけません。

  馬場あき子の外国詠15(2009年1月実施)
    【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)81頁~  
     参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会とまとめ:鹿取 未放
                    

ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
  近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)

130 真夜さめて七千メートルの処女峰の月光を浴ぶむざねと対す

     (レポート)
 今、馬場先生はムスタンの宿にご就寝中、フト夜中に目が覚められた。窓からは眼前に白雪を被った高い峰が月光を浴びて煌々と輝いているのが目に入った。ニルギリは北峰(7061メートル)と南峰(6839メートル)とがある。そのどちらを眺めているかわからないが、これら両峰はいずれも地元住民の反対があって、いまだ未踏峰である。「むざね」と対す……馬場先生は今、何万年前か、インド大陸がユーラシア大陸にぶつかってヒマラヤができた、その生まれたままの姿のニルギリと対峙しておられる。自分の全存在を賭けて対峙しておられる。そこでは人間の小ささ、有限な人間の命など、もろもろの感慨があったことだろう。ここには悠久の地球の歴史と人間の儚い命との対峙がある。(T・H)


      (当日意見)
★インド大陸がユーラシア大陸にぶつかったのは7000万年くらい前だと読んだ記憶があります。最
 もヒマラヤが今の高さに落ち着いたのは2000万年前~数万年前と諸説があるみたいです。 (鹿取)


       (まとめ)
 夜中に目が覚めると月の光に照らし出されたニルギリが見えた。まるで、月の光に呼ばれたような印象を受ける。処女峰であるニルギリが煌々と照る満月の光を受けて神々しく輝いている。一人月光に照り輝く処女峰を眺めていると、おそらく自分にだけ山が真実の姿を開示してくれたと思えたのではなかろうか。〈われ〉は、震撼しながら山の「むざね」とむきあっているのである。「むざね(実)」とは、広辞苑に「身実」の意、まさしくその身、正身、正体などと出ている。(鹿取)


* 地図で調べると、西、東が逆でしたので訂正版を掲示します。

訂正版 127 高き雲西へ去りゆき低き雲東へわたるニルギリの朝

     (まとめ)
 ジョムソンはとにかく風が強いことで有名だそうで、時には風速50メートルということもあるようだ。そんな強風のイメージではなかろうか。ホテルにいて向かいのニルギリを眺めていると、強風に乗って高い雲は西方へ、低い雲は東方へ流れていったということだろう。東西の方向に自信はないが、ホテルからニルギリに向かって左(たぶん、こちらが東)がアッパームスタン、つまりチベット方向、右(西)がポカラの方向で雄大なダウラギリが常に白い姿を見せていた。ということは高い雲はチベット方向へ、低い雲はダウラギリ方向へ流れていたということか。132番歌に〈いつしかに弓月が岳に雲わたる声調を思へりき雲湧くヒマラヤ〉という人麻呂を下敷きにした歌があって、同様にヒマラヤの朝の雄壮な情景をうたっていることがわかる。(鹿取)
 

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