かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌の一首鑑賞 194

2022-09-06 12:50:50 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞  おいたるダビデ  
                  鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


194 ゆううつなでんえんをゆくならわかばうめかきくぬぎけやきわかばの
        「かりん」2002年7月号

 ここに出てくる植物を漢字で書くと、楢、梅、柿、椚、欅となる。田園風景だが、街路樹や家々の庭先の木々を見ながら歩いているような感じだ。
 横浜の郊外に佐藤春夫が「田園の憂鬱」を書いた家があり、その家の前に記念の石碑が建っている。その碑を作者と見に行ったことがあった。この歌の1,2句目は小説の題「田園の憂鬱」の語順を入れ替えて使っている。
 ところで、佐藤春夫は文学に行き詰まり、神経衰弱を病み、愛人を伴って東京からこの歌に詠まれた神奈川都筑の里に移り住んだ。今もその付近は田園風景が広がっているが、樹木の明るく若葉する田園をうつむいて歩む佐藤春夫と作者が二重写しになって見えるようだ。
 宮沢賢治の「春と修羅」に「いかりのにがさまた青さ/四月の気層のひかりの底を/唾(つばき)し はぎしりゆききする/おれはひとりの修羅なのだ」があるのを思い出した。

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