かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 217

2024-03-09 11:36:36 | 短歌の鑑賞
  2024年版 渡辺松男研究26(15年4月)
     【光る骨格】『寒気氾濫』(1997年)89頁~
      参加者:かまくらうてな、M・K、M・S、鈴木良明、
      曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放


217 沈黙を守らんとする冬の木のなかにひともと紅梅ひらく

     (レポート)
 沈黙を堅持しようとしている冬木々の中にあって、その空気を和らげるようにひと足早く、紅梅がいっぽん明るく咲き始めた。(鈴木)


    (紙上意見)
 沈黙に耐えられなくなった紅梅はいちはやく人間に迎合して、鮮やかな容姿をみせつける、冬枯れの世界で、目立ちたい紅梅はナルシストで、裏切りものだ。(S・I)


     (当日意見)
★S・Iさんのナルシストというのは唐突だなと思います。(鈴木)
★まあ、以前の歌から導き出された意見なのでしょうね。私は季節が来ればやがてみん
 な花開いていくので、先に咲いたからって人間に迎合したとかナルシストだ、裏切り
 者だとは思わないですけれど。先駆けに対する評価の違いですよね。(鹿取)

     (後日意見)
 次の218番歌(土屋文明をわれは思えり幹黒き樹は空間に融けゆかぬなり)を読むと、「目立ちたい紅梅はナルシストで、裏切りものだ」というS・Iさんの意見はあながち突飛なものでもないように思われてくる。この読みですんなりと土屋文明に繋がるのだ。(鹿取)


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