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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 47、48 アフリカ⑤

2025-07-15 09:34:26 | 短歌の鑑賞

  2025年度版 馬場あき子の外国詠 ⑥(2008年3月実施)
   【阿弗利加 2 金いろのばつた】
  『青い夜のことば』(1999年刊)P168
   参加者:KZ・I、KU・I、N・I、崎尾廣子、T・S、Y・S、
      田村広志、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H        司会とまとめ:鹿取 未放
                                                            

                            
47 職人のスークに一生きもの縫ふ青年の指の静かな時間

              (レポート)
 前回と同じスークの場面である。スークはイスラム世界独特の職人達の集まりの市場であるが、バザールとは違う。業種ごとにまとまって軒を連ねている。青年は一針一針真剣に作品に取り組んでいた。そのきものは地元の民族衣装なのか、輸出用のものなのか分からないが、針を持って真剣にどこかをまつったりしている。ああ、彼はこうして一生針を持って過ごすのかな、と作者は「静かな時間」という言葉の中に、青年の未来とモロッコの国の未来を見つめておられる。一生、静かな時間という言葉に、既に決められた人生を歩む青年の悲しさが表されている。作者の青年に対する愛情、優しさが込められている。(T・H)


          (当日意見)
★人生が決められていてそこから逃げられない悲しさ。愛情をもって見守っている作者の気持ち。(崎尾)


             (まとめ)
 ここに詠われた青年はきものを縫って一生を生きるおのれの運命を受け入れているのであろう。懸命にものを縫う青年の指に注目して、静かに時間を流すことで作者はここに生きるほかない人々に思いを寄り添わせている。(鹿取)

    
48 縫職(ぬひしよく)の前に必ず青年のありて見習ふ糸わざ・手わざ

              (レポート)
 今、ベテラン縫職老人の前に、見習いの青年が座って、縫い方や針の運びなどを教わっている。「糸わざ・手わざ」の語句により、その親身な教え方と、青年の真剣な目差しが見えるようだ。ここには、職人の体で覚えていくという原点が、よく出ている。(T・H)


           (まとめ)
 日本ではもうあまり見かけなくなった親方と弟子の関係が生きていることが「縫職の前に必ず青年のありて」で分かる。「糸わざ・手わざ」という聞き慣れない語が、親方から弟子への伝授の細やかさを読者に伝えている。青年の指や体の動きや、一生懸命学び取ろうとしている心のありようまで見えるようだ。歌から少し外れるが、若者がしっかりと伝統を受け継いでいるという点でそれは羨ましいことである。しかし一方、産業が充分に発達をみない国ゆえの継承である点、複雑な問題も含んでいよう。(鹿取)

コメント
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