かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 207

2024-02-22 15:09:08 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究 25(15年3月) 
   【光る骨格】『寒気氾濫』(1997年)86頁~
    参加者:S・I、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放
    

207 見上ぐれば風を巻き込み俺様は貪欲なるぞと椨(たぶ)の木がいう

    (レポート)(慧子)
 見あげた作者に椨の木が言った内容は「風を巻き込み俺様は貪欲なるぞ」。なるほどあの椨の木であればその言葉もうなずける。ゆれる、しなう、そよぐ、そんな言葉では追いつかない感じをレポーターも思う。ここは対象になりきるのではなく、人間の特性を木に見て、ユーモラスな一首。
  *椨:クスノ木科の常緑高木。葉は厚くつやがある。5~6月に枝先に黄緑色の小
     さな花を群生する。果実は直径1センチ内外の球形。本州以南、台湾、中国
    などの暖地の海岸近くに自生、材は枕木、家具、楽器など、樹皮は黄八丈織
    物の染色に用いる。(新世紀百科辞典)


      (当日意見)
★「風を巻き込み」は叙述部分で、椨の木が言っているのは「俺様は貪欲なるぞ」だ
 けですよね。(鹿取)
★椨は綺麗だし、風にも強い逞しい木ですね。(曽我)
★「対象になりきるのではなく」、は作者が椨の木を客観的に見ているというこ
 と?(S・I)
★はい。(慧子)
★客観的に見ているだけで、それを人間に投影しているとは思いません。「人間の特性
 を木に見て」はなくていいと思います。椨の木の生命力の強さとか生きる逞しさを風
 さえも巻き込むと例示して「俺様は貪欲なるぞ」と言わせている。(鹿取)

コメント
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