かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 195

2024-02-01 12:09:07 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究23
    【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
    参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
        S・Iと鈴木良明は紙上参加
    レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放            


195 深谷葱の数万本の首に吹き風は平野をかがやかしたり

      (当日意見)
★前の歌を工場視察ととったので、この歌も首というのは人間の首のようなイメージを
 持ちました。上が風を吹かせればお前等の首は飛んでいくんだぞと。しかし結句が
 「かがやかしたり」ですから、この解釈はダメかなと。(真帆)
★これは、前の歌(生産を見にいかんかなふんぜんと真夜のセメント工場の白煙)の続
 きでものを作り出すことへの賛歌ですね。また、平野を輝かせる圧倒的な葱の生命を
 も讃えています。
  歌としては「首」がとても生きていますよね。葱坊主だから首なんですね。「首
 に吹き」って上手いですね。また、セメント工場も深谷葱も作者の地元の親しい風物
 だと思います。
  前にも言ったけど、この歌集のあとがきに現実の社会、いろんな働く人がいて、ど
 れもが大事だ、当たり前の事実の部分に自分を繋ぎ止めておかなければ心が痩せてい
 く、という意味のことを書かれています。だからセメント工場も数万本もの育つ葱も
 彼にとって大切なものなのですね。(鹿取)

      (レポート)
 埼玉県深谷市でつくられる深谷葱。深谷市は葱の生産量で日本一を誇る。一面の葱畑に風が吹き、平野をさっと輝かせるようすが印象的だ。(真帆)


    (紙上意見)
 北風が一斉に数万本の葱を揺らし、凍てついた平野が、しろく輝いたのであろう。それまで何気ない景だったものが、風が吹くことによって、様相が一変した。壮観である。(S・I)


 「深谷葱」は、根深葱なので、白い首の部分が長い。そのような葱の数万本の首を吹く風が、平野をかがやかしている。(鈴木)


コメント
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