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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 115

2020-11-01 18:44:20 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 渡辺松男研究13【寒気氾濫】(14年3月)まとめ
      『寒気氾濫』(1997年)48頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:崎尾廣子 司会と記録:鹿取 未放
          


115 まばたけば深まりてゆく静寂の花敷(はなしき)月あかり冴ゆ

      (レポート)
 群馬県吾妻郡に一軒宿の「花敷の湯」がある。「花敷」はこの花敷温泉がある集落なのであろう。夜更けと共に集落の人々の眠りも深まっていく。「まばたけば」から「花敷」に月の冴ゆる集落の「静寂」を改めて実感している。地名が歌に静かな調べを作っており余韻も生まれている。山間部の奥深さを詠いながらも月も詠っている。(崎尾)
  花敷温泉:猪狩りのためにこの地を訪れた源頼朝が発見したとされています。そのときに、
       桜の花びらが一面に敷きつめたように湯に浮かんでいたことから「花敷」と名付
       けられました。歌人の若山牧水もこの地を訪れ「一夜寝てわがたちいづる山かげの温
       泉(いでゆ)の村に雪降りにけり」の短歌を残しています。花敷温泉には一軒宿
       の「花敷の湯」があります。(インターネット)
                               

      (発言)
★インターネットとあるのは「中之条町観光協会」のHPからの引用ですね。源頼朝が発見とか牧
 水が歌を詠んだとか権威付けがされてますけど。花敷は牧水が「みなかみ紀行」で訪れた村
 の一つでたくさん歌を詠んでいて、たくさんの歌碑も建っています。(鹿取)
★私は「まばたけば」が分からない。まばたかなくても月明かりが冴えているのは見える。(藤本)
★でも「まばたけば」があるのが渡辺さんですよね。(鹿取)
★ここがうまいところだ。普通の人は情景だけ詠むんだけど。「まばたけば」があるから静止画で
 はなく時間の移り変わりが出ている。まばたいて見る度に風景が深まっていく。まばたく度に新
 しい視点を更新していくような感じ。それに実感ができる。(鈴木)
★そうですね。「まばたけば」があるから渡辺さんの肉体がでているというか、肉体を通してリア
 リティを保証している。(鹿取)
★前登志夫が盗賊のように村を見下ろすと言う歌を作っていてあれを思いだしました。(鈴木)
★レポーターは「山間部の奥深さを詠いながらも月も詠っている。」と書いているけど、月と村は
 一体化しているので分けない方がよい。(鈴木)


        (後日意見)
鈴木発言の前登志夫の歌は、記憶と少し違って下記のものだろう。(鹿取)
     夕闇にまぎれて村に近づけば盗賊のごとくわれは華やぐ
             『子午線の繭』
コメント
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