改訂版渡辺松男研究3【地下に還せり】
『寒気氾濫』(1997年)12~
参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放(再構成版)
23 同性愛三島発光したるのち川のぼりゆく無尽数の稚魚
★三島が同性愛だったこと、発光は切腹をあらわすこと。それを境にしてというわ
けではないけど同性愛が途方もなく広がって行ったこと。それがこの歌の解釈で
す。発光をどう捉えるかに苦慮しました。(崎尾)
★上の句と下の句は全く関係のないことがら。これを歌としてどう結びつけるのか、
どう繋げて解釈をするのかをお聞きしたい。(鹿取)
★上の句は読者をびっくりさせる。あとは普通に読んだらいいのでは。発光は性的
なエクスタシー、無尽数の稚魚は精子。それで解釈できるが、これだけではつま
らないので頭に同性愛を入れたのではないか?(慧子)
★すると同性愛はこの一首で重要ではないわけ?(崎尾)
★いや、崎尾さんのように読むと広がりが出ていいかも。(慧子)
★同性愛の三島がそれを世間に発表したので、そういう気持ちを持っている若者達
が稚魚のように多く続いたということかなあと思ったけど。(曽我)
★これを契機に他のこともどんどん解禁されていった。他人はどうでもいいとか夫
婦別姓とか日本は悪い方向に行った。(崎尾)
★いや、歌を道徳的な意味合いに広げるのは反対です。話が出たので言いますけど
三島の同性愛が契機になっていろんなことが解禁されたって、どこにそんな根拠
があるんですか。それにどうして同性愛から「他人はどうでもいい」に繋がるん
ですか。同性愛は悪、夫婦別姓も悪と決めつけているけど、同性愛は生まれつき
の性向だから他人がどうこう言えることではないし、夫婦別姓に関しては様々な
考え方がある。三島は確かに同性愛をカミングアウトしたかも知れないけど、そ
れで同性愛が増えた訳ではない。人目につきやすくなったことはあると思うが。
有史以来同性愛はあったし、僧坊にだって教会にだって武家社会にだっていくら
でもあった。生まれつきの性向という面のほかに、男だけ女だけの社会という特
殊な状況もある。私は慧子さんの説に同意します。そして放出された精子のイメ
ージとして無尽数の稚魚が置かれている。それが生まれ故郷を求めて川を遡るの
だが、この辺りはわりと爽やかなイメージがある。(鹿取)
★では発光が切腹のことだというのは間違いなのね?(崎尾)
★私は「発光=切腹」とは思わないですが、三島と言われたら誰でも切腹の情景は
思い浮かべますよね。解釈については、作者に聞いた訳じゃないから何が正しい
かなんって分からない。もしかしたら作者にだって分からないかもしれない。だ
からいろんな解釈があっていいんじゃないの。(鹿取)
★では男性なら誰でもよいのに、なぜ三島をもってきたんだろう。(崎尾)
★男性なら誰でもいいわけじゃないでしょう。「同性愛○○」って誰も知らない名
前持ってきても歌にならない。三島の切腹事件には作者も衝撃を受けたのでしょ
う。文学者としても興味があるでしょう。(鹿取)
『寒気氾濫』(1997年)12~
参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放(再構成版)
23 同性愛三島発光したるのち川のぼりゆく無尽数の稚魚
★三島が同性愛だったこと、発光は切腹をあらわすこと。それを境にしてというわ
けではないけど同性愛が途方もなく広がって行ったこと。それがこの歌の解釈で
す。発光をどう捉えるかに苦慮しました。(崎尾)
★上の句と下の句は全く関係のないことがら。これを歌としてどう結びつけるのか、
どう繋げて解釈をするのかをお聞きしたい。(鹿取)
★上の句は読者をびっくりさせる。あとは普通に読んだらいいのでは。発光は性的
なエクスタシー、無尽数の稚魚は精子。それで解釈できるが、これだけではつま
らないので頭に同性愛を入れたのではないか?(慧子)
★すると同性愛はこの一首で重要ではないわけ?(崎尾)
★いや、崎尾さんのように読むと広がりが出ていいかも。(慧子)
★同性愛の三島がそれを世間に発表したので、そういう気持ちを持っている若者達
が稚魚のように多く続いたということかなあと思ったけど。(曽我)
★これを契機に他のこともどんどん解禁されていった。他人はどうでもいいとか夫
婦別姓とか日本は悪い方向に行った。(崎尾)
★いや、歌を道徳的な意味合いに広げるのは反対です。話が出たので言いますけど
三島の同性愛が契機になっていろんなことが解禁されたって、どこにそんな根拠
があるんですか。それにどうして同性愛から「他人はどうでもいい」に繋がるん
ですか。同性愛は悪、夫婦別姓も悪と決めつけているけど、同性愛は生まれつき
の性向だから他人がどうこう言えることではないし、夫婦別姓に関しては様々な
考え方がある。三島は確かに同性愛をカミングアウトしたかも知れないけど、そ
れで同性愛が増えた訳ではない。人目につきやすくなったことはあると思うが。
有史以来同性愛はあったし、僧坊にだって教会にだって武家社会にだっていくら
でもあった。生まれつきの性向という面のほかに、男だけ女だけの社会という特
殊な状況もある。私は慧子さんの説に同意します。そして放出された精子のイメ
ージとして無尽数の稚魚が置かれている。それが生まれ故郷を求めて川を遡るの
だが、この辺りはわりと爽やかなイメージがある。(鹿取)
★では発光が切腹のことだというのは間違いなのね?(崎尾)
★私は「発光=切腹」とは思わないですが、三島と言われたら誰でも切腹の情景は
思い浮かべますよね。解釈については、作者に聞いた訳じゃないから何が正しい
かなんって分からない。もしかしたら作者にだって分からないかもしれない。だ
からいろんな解釈があっていいんじゃないの。(鹿取)
★では男性なら誰でもよいのに、なぜ三島をもってきたんだろう。(崎尾)
★男性なら誰でもいいわけじゃないでしょう。「同性愛○○」って誰も知らない名
前持ってきても歌にならない。三島の切腹事件には作者も衝撃を受けたのでしょ
う。文学者としても興味があるでしょう。(鹿取)