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マハティールさん

   5月11日(金)毎日新聞1面の「余録」は、「日本の戦後復興と高度成長を支えた花形は……」からはじまる興味深い内容でした。

  750字前後の文章ですので、以下全文を掲載します。

  日本の戦後復興と高度成長を支えた花形は、技術屋と商社マンだった。焼け跡の工場で技術屋がもの作りに汗を流した。商社マンが世界中を回って材料を調達し、売りさばいた。

 鈴木一正氏が三井物産に入社したのは1959年。「三丁目の夕日」が描く昭和30年代だった。父も商社マン。学習院大では、テニス部で皇太子時代の天皇陛下の相手をした。入社するまで自分で電話をとったこともないお坊ちゃんだった。

 初仕事でマレーシアに銅線を買いに行かされた。治安の良くない地方の銅産地に行き、夜は泥棒に盗まれないように倉庫の中で銅線と寝た。その後はマレーシア一筋。青年時代のマハティール前首相が食品公社の社長に左遷された。公社のパイナップル缶詰は粗悪でまるで売り物にならなかった。

 不遇のマハティール氏と出会った鈴木氏は、その能力に賭けた。米国製缶詰製造機の導入に奔走した。いい缶詰ができた。商社が輸出の権利を争った。鈴木氏の提示した条件は悪かった。よそに決まりかけたとき、マハティール氏の一言で逆転した。「ここまできたのは誰のおかげだ」(マハティール著『立ち上がれ日本人』新潮新書)。

 見抜いた通り、マハティール氏は信義を重んじた。首相になってからルック・イースト政策をやった。日本から「規律・勤勉・忠誠心」を学ぼうという運動だったが、この日本人イメージは商社マン・鈴木氏から得たものだという。

 鈴木氏は、国王から「タン・スリ」という称号を授与された。約30年暮らしたマレーシアに骨を埋めるつもりだった。が、前立腺の治療で入院した東京の病院から戻る体力が回復しないまま、先月74歳でなくなった。生前「このごろ商社マンらしい商社マンが減った」と嘆いていた。

         毎日新聞 2007年5月11日 東京朝刊


    マハティールさんの『立ち上がれ日本人』をもとめて本屋さんに。金曜の朝刊で日曜の書店廻りですから、関心を持った人が何人かいたのか、ジュンク堂にもリブロにもありませんでした。

  家の近くの図書館から借りてきました。

  加藤暁子氏の訳者まえがきによると、

 「1年ほど前、新潮社から『日本が元気になる処方箋』をマハティールに書いてもらえないかという申し出をいただきました。数回のインタビューに加え、本人からは電話帳数冊分ほどにもなる、これまでの演説原稿の束を渡されました。『インタビューだけでなく、演説にも目を通して、重要なところを使ってほしい』というのがマハティールの要望でした」

 「そして、私がまとめた英文の原稿を『忙しくて直す時間がない』と側近にこぼしながら一語一語直し、言い足りなかったところをつけ足してくださいました。引退前の最も忙しいときの作業でしたが、言葉に忠実なマハティールの姿に改めて感銘を受けました」

 「この本は、マハティールの真摯な語りかけです。日本人にエールを送りつづける彼からのビタミン剤のようなものですが、それとともに、哲学者マハティールの思いが綴られています」

 「偏向する世界のメディアを批判し続けたマハティール首相の言葉は、新聞記者出身の私への戒めでもありました」

   というような出版(2003/12/15)までの経緯が書かれています。

 

   第2章教育こそ国の柱より

  「教育は国の根幹です」

 「国家を発展させるには、国民が深い知識を持っていることが重要です。私たちの一人ひとりがことの善悪を見極め、国の繁栄にとって何が必要かを判断しなければなりません。よりよい知識がよりよい結果を導くのは、当然のことです」

  「知識は教育を通して得られるものです。それも学校教育だけでなく、生涯を通じて勉強を続けることが必要です。私たちは日々学び、その知識を毎日活用していかなければならないのです」

  「本を読み、経験を積み、人と話し、その話を注意深く聴く能力は、何にも増して大事なものです。そしてシンポジウムやセミナーに参加し、議論をすることで得た情報が知識となります。知識とは、情報を自らのものとして吸収することです」(P51)

 「私は数学と科学を小学校のころから学び、医学生時代には医学の基礎となる化学、生物学、物理学を勉強しました。したがって私は、体系的な思考に慣れています。患者を診断するとき重要なのは、まず今どういう状況かを丹念に聴くことです。熱があるのか、寒気がするのか、咳が出るのか――。その上で診察し、検査をする。すべてが済まないと、結論は出せません。診断結果から処方箋を書き、薬を調合していくのです」

  「科学は綿密で整然としたもので、論理的思考を必要とします。私のように専門家を目指さない人にとっても、数学や科学は順序立てて物事を考えるための基礎となると信じています。競争を勝ち抜くためには、論理的であることが重要なのです」(P57)

 「私は小学生のときには学校で『本の虫』と呼ばれていました。クラスの図書係を務め、週末には級友のために雑誌や本を集める。私自身、雑誌に載っている物語はすべて読破しました。週末だけで、西洋の映画に関する記事や探偵小説、冒険小説、第一次世界大戦の戦記物など、その数は30をゆうに超えていたと思います。読書の習慣をはじめにつけてくれたのも両親でした」(P67)

 ラストに50ページほど、元毎日新聞記者でもあった加藤氏によるマハティール氏の伝記・思想の解説があります。

 99年2月からは、その日本の読者に語りかけるために、「どくどるマハティールの世界診断」と題するコラムを月1回毎日新聞朝刊に連載することを快諾してくれた(P140)。

 広報担当秘書官は常に同席しているが、念のため会話を録音しているだけで、首相が助けを求めることは一度たりともなかった。私はその知識量の豊かさ、バランス感覚、新しいものを受け入れる好奇心、判断力、決断力に舌を巻くと同時に、日本の政治家を憂えた(P141)。

 人の話を聞き、本を読み、情報を集め、最終的に決断するのが政治家であるというのが、マハティールのリーダー論である(P169)。

 こちらが知らないだけなのかもしれませんが、もっともっと読まれていい本のような気がします。本の中身をもう少し詳しく知りたい場合はアマゾンのカスタマーレビューが参考になります。手許におきたい1冊でした。  

 


             ※クリエイト速読スクールHP  

   

 

  

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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連日お邪魔します (小川なおし)
2007-05-17 11:17:04
59行目の「重要なところをを」(赤い文字)は、「を」が一つ余分だと思います。なんて、こんなコメントは載せないでいいと思うんですけど。
この本には興味がそそられます。すぐ図書館で見つかって良かったですね。私も探して読んでみます。
 
 
 
感謝です (m)
2007-05-17 12:42:29
なおしさん、こんにちは。
間違い探し、本当にありがとうございます。
 
こちらが気づけずずっと誤字のままは辛すぎます。
これからもよろしくお願いします。
その前に誤字脱字ないように注意します

「マハティールさん」は、
なおしさんのお薦め本のマネです
 
 
 
日々。 (古い生徒3。)
2009-11-05 22:40:48
 あ、どうも。こんばんは。とても印象に残る
記事ですね。

 日々本を読み、経験を積み、生涯勉強を続ける。
簡単なことではありませんが、少しでもその域に
近づきたいものです。

 自分の場合、まずはクリエイトにせっせと
通うことです。それと本読みですね。
 
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