改作・寿限無（その1）

ふと、寿限無の改作を思いつきました。


「ご隠居、いますか？」

「はいはい、おや、誰かと思ったら八っつぁんじゃないか。まあまあ、おあがり」

「ありがとうございます。実はご隠居にお聞きしたいことがあって来ました」

「おや、そうかい。いつになく、真剣な顔つきだね。仕事の話かい？」

「ええ、そうなんで。商店街の役員をおおせつかりましてね。それで、このあいだの寄り合いで『この商店街をより良いものにしていきたい。ついては、今度の寄り合いまでに、皆さん何かアイディアを出してくださいね』なんて言われましてね。あっしゃあ、力仕事なら人様に負けねえ自信がありますが、頭を使う仕事はからっきしで・・・。で、ご隠居は昔大きな会社で『しお』だったって聞きましてね。お知恵をお借りしてえと思って来たってわけなんで・・・」

「そうかい。用向きは分かったが、なんだい？『しお』っていうのは？」

「いえ、みんなが言ってましたよ。『ご隠居は昔、でっけえ会社でしおだった』って・・・」

「・・・・そりゃあ、もしかしてCEOのことかな？」

「しーいーおー？なんです、それ？ あ、わかりました！　アメリカの中央情報局ですね 」

「それはCIAだな」

「スターウォーズに出てくる通訳ロボット」

「C3POだな」

「長野に住んでる作家の・・・」

「Ｃ．Ｗ．ニコルさんだな。なんだかだんだん外れていくな」

「じゃ、なんです？いったい『しーいーおー』ってな？」

「英語だよ。CEOというのはチーフ・エグセクティブ・オフィサー。その頭の文字を取ってCEOというな。日本語で言うと『最高経営責任者』という・・・」

「ああ、そうですか？みんなが『ご隠居は塩だ塩だ』ってえから、おかしいなと思った。なるほど、そりゃあ、てえしたもんだ。だったらぜひお知恵をお借りしてえもんだ。お願えしますよ」

「そうかい。あたしも今じゃ隠居の身だ。お力になれるかどうかはわからないが、せっかく来てくれたんだ。昔取ったなんとやらで、ご意見申し上げましょうかな」

「ありがてえ！ひとつよろしくお願いします」

「まずは視察だな。有名なところでいうと『巣鴨地蔵通り商店街』だ。『おばあちゃんの原宿』と言われて人気だな。ああいう所に視察に行って、なにが人気なのか、調べてみるのがいい」

「なるほどねえ。あ、せっかくですからメモしてもいいですか。『巣鴨』と・・・」

「『巣鴨』はぜひ行ったほうがいいな」

「そうですか。そんなに大事ですか。じゃあ、2回書きます」

「2回書かなくてもいいよ」

（続く）

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