子に体調異変じわり 原発50キロ 福島・郡山は今
大量の鼻血、下痢、倦怠感…
「放射線と関係不明」
収束の兆しさえ見えない福島第一原発の事故。放射線汚染の範囲は拡大し、避難区域の外側でも、子どもの健康被害不安視する声が目立ち始めた。しかし体調不良と放射線の関係には分からないことが多い。それだけに親たちは疑心暗鬼で苦しむ。子どもたちを守るために今、できることとは-。
(山田阿生)
「上の子が1週間くらい毎日大量に鼻血が出続けていたので心配で…。下の子も、時期は導つけれど、やはり一週間くらい鼻血が出て」。思い詰めた表情で母親つ一もが、医師に相談していた。
NPO法人「チェルノブイリへのかけはし」が12日、福島県郡山市で開いた医師による無料問診会。放射線被害を心配する親子連れ計50組が参加した。
同市は福島第一原発から約50Km。
この親子の場合、震筑後いったん埼玉県内に避難したが、3月下旬に郡山市に戻った。すると小学校一年の長女(6つ)が、4月上旬から三週間、鼻血が出続けた。このうち1週間は両方の鼻から大量に出血。耳鼻科で診察を受けたが、「花粉症では」と言われた。「花粉症なんて初めて言われたし、普段は滅多に鼻血を出さないんですけど…」と母親は言う。長男(2つ)も4月下旬から5月に鼻血を出し続けた。
診察した小児科医の橋本百合香さんは「放射線被害かどうかは判断できないが、ひとまず小児科で血液検査をして白血球を詳しくみてもらって。記録を残すことが大事」と助言した。
母親によると、小学校ではクラスの1割が避難していなくなった。次々と児童が転校するので、新入生には出席番号がつけられていない。放射性物質が濃縮されやすい牛乳を給食で出すかどうか、学校ごとに対応が異なる。「うちは保護者の選択制。娘が仲間外れにされたくないというので、今は飲ませてます」
福島市から4カ月の長女咲空ちゃんを連れてきた平申昭一さん(40)は「症状は出ていないが、24時間不安で、外出を一切させていない。自衛といってもどうしたらいいのか」と苦悩の表情。生後、他人をほとんど見たことがない
という咲空ちゃんは、記者が近づくとおびえた。
問診会場近くの植え込みで、放射線測定器をかざすと、毎時2.33μSvの値を示した。地面から離すと一帯酎台に下がる。郡山市内の12日の最大値は1.38μSv。東京都内で計測された同日の最大値が0.0635μSv。約22倍だ。市内の最大値は3月15日の8.26μSvで、5月中旬からは1.3μSv前後で推移している。
文部科学省では3.8μSvが計測された学校では屋外活動を制限するとしているが、一方で年間の積算線量の子どもの丘限値を1mSvから20mSvとしている。これは毎時1.3μSvの場所で1年間暮らせば十分に到達してしまう値でもある。
「医者や学者も言うことが違い、避難の基準が分からない。飯館村は1ヶ月も放射能を浴びさせて、値が低くなってから避難させた。国も県も信用できない」。長男(6つ)を連れた母親(40)は、こう憤る。自宅は新築。遭難して経済的にやっていけるのか、何年後に戻れるのか…。費用や子ども初心に与える影響を考えると踏み切れない。