「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

対決―巨匠たちの日本美術

2008-07-18 | つれづれ
上野の国立美術館で開催中の「対決―巨匠たちの日本美術」を見てきました。平日だったのですが、すごい人出! まあ、企画展としての視点が面白いですよね。アイデアの勝利といったところ。日本の歴史に名を刻む芸術家を、ライバルや師弟関係などで2人ずつ組み合わせて国宝や重要文化財などの名品を「対決」させる形で展示しているのです。

例えば、雪舟vs雪村、狩野永徳vs長谷川等伯、円山応挙vs長沢芦雪、伊藤若冲vs曽我蕭白など12組。正直、私にはあまりわからないものもありましたが、面白いと思った比較は先にあげた人たち。

雪舟は生真面目で硬そうなそうな人柄を感じ、絵からは殺気というか、見るものの背をピンと伸ばさせるような雰囲気が漂います。対する雪村はのびやかで、頬が緩む感じ。

狩野永徳と長谷川等伯はほんとに歴史上でライバルで、特に画壇の中心だった永徳にしてみれば遅れて来た等伯の才能は脅威以外の何ものでもなかったのでしょう。でも、永徳も素晴らしい。豪快な襖絵で、独特の誇示・強調の手法は圧巻。対する等伯の消え入らんばかりのボンヤリとした墨絵も素晴らしい。深山、森の中に分け入ってもやに立ち込められたかのような錯覚さえ感じます。襖絵という平面の中に奥深い世界が存在している。

円山応挙と、その弟子(破門説もあるそうですが)長沢芦雪。これは題材も同じ「虎」の襖絵。いずれも見事ですが、芦雪の虎は襖という檻が狭苦しそうなほど勢いあって飛び出してきそう。応挙の綿密な描写力もさすが、というばかり。

私的には最も面白いと思えたのが、伊藤若冲と曽我蕭白。そもそもがあまり見たことがなかった人たちなのですが、18世紀京都で活躍した、どちらかというと正統派画壇からは異端的存在と見られていたような絵師なのだそうです。ほんとに二人ともその特異な才能に驚きます。若冲の、対象を凝視し続けた末に描いたように感じられる絵。特に鶏がたくさん描かれた襖絵は、鶏たちが生き生きとしている。写実的でありながら独特のデフォルメも入っていて、みていて飽きがきません。対する蕭白はまさに鬼才! 現代に出現してもさぞや面白いものを生み出すのではないかと思います。なんと表現しましょうか、どの絵も「目」が独特。じっと見つめあうと、笑えるような、怖いような、こちらの心の持ちようでいかようにも感じられそうな目です。それに竜や仙人を題材に選んでいることからわかるように、自由奔放な構図と動きの表現。墨絵の中に色彩を施すなどアイデアも斬新。ただただ面白いと思えました。

総じていい企画と思いましたが、残念なのは運慶vs快慶と鉄斎vs大観。「え、これだけ?」という作品数(だって、ひとり1作ですよ、この人たち)で、全然楽しくない。あと、配置の問題で一言苦言。第1会場入り口に運慶vs快慶の仏像を置いてしまい、絵と違ってぐるっと像の周りを眺めようとする人が多くなり、ただでさえ込む入り口が一層人でいっぱいになっていました。やはり入り口は絵にしておいた無難だったのでは? 第2会場から先に見て正解でした。

最新の画像もっと見る