「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

きことわ

2011-02-20 | つれづれ
朝吹真理子さんの芥川賞受賞作品「きことわ」。一読しての感想は、「なんでこの作品が芥川賞?」というものでした。確かに美しい日本語、「私が妊娠されていた」といった不思議な、でもこの場の表現としては実に適切でしっくりとくるような言葉の使い方は、お見事だと感じました。

でも、それとても以前書いた「流跡」と比べると大人しい感じがします。日本語の美しさを最大限に引き出すような前の作品とは違うのです。「流跡」では、自分の立ち位置、時間、土台といったものがバラバラになるような不安定感、どこに連れ去られていくのかまったく予想の出来ない不安と同時に、喜びである感覚がありましたが、そうしたものも感じられません。そんな感覚、世界にもう少しで入りそうだな、と思ったところで、なぜかスッと引かれる感じで、物語世界に没入しきれないのです。腕の良い監督さんに映画に仕立てていただいたら、おもしろ脚本になるかもしれません。「かもめ食堂」の雰囲気で。

次回作に期待します。

==以下「BOOKデータベース」から==
永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。葉山の高台にある別荘で、幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、ふたたび流れはじめる―。第144回芥川賞受賞。

最新の画像もっと見る