小松左京「ゴルディアスの結び目」(角川文庫 昭和55年)
「神への長い道」を「自伝」の中で触れたとき宗教をテーマにしたということで「ゴルディアスの結び目」にも少し触れていました。で、引き続き小松左京を読みました。「ゴルディアスの結び目」は今回初めて。
主人公がブラックホールの中でルシファーと出会うんですけど、あたくし、絶対悪には興味がないもんで、ピンとこないんですよ。
地獄の描写にも力が入っている。ダンテの「神曲」を意識していたそうです。ですが、地獄にもあたくしは興味なし。そんなもの在ると思ってないし。ま、マルチバースとして理解するなら地獄もアリかな、とは思いますけど。別宇宙の世界としてならね。こちらの意識でその別宇宙を観ればその世界が地獄に感じられることもあるでしょう。あちらからこちらを観ればこちらの世界が地獄に感じられたり、とかね。互いにそっちは地獄だと思ってる。そんな構図はあるかもしれない。
あたくしの興味でいえば、少女の潜在意識がブラックホールにつながっているという設定ですね。
「潜在意識の中に秘められた、強い欲望が、さまざまな怪現象をひきおこすのではないか」「特に、思春期の女性のそれが……」
この小説はSFの味付けがされたホラーといった体でして、少女のトラウマがさまざまな怪現象を起こすんですけど、じゃそのエネルギーはどこから来てるんだってことで潜在意識に潜ってみるとそこにブラックホールがある、ト。この孔を通じて別宇宙からエネルギーがこっちに来てる、ト。
「思春期の女性」なんて表現をみると「まどマギ」を思い出しますね。「魔法少女まどか☆マギカ」。少女の希望と絶望の相転移のエネルギー。ま、男からみれば女は不可解で、それが少女となるとますます訳がわからない。だから、なんだか世界をひっくり返してしまいかねない潜在エネルギーをそこに見てしまうのは気分としては分かりますね。単純に怖いんですよ、男にとって女は。
ま、それはさておき。
ブラックホールなので縮潰します、部屋ごと。部屋が小さな球体になりますが、その球体が徐々に縮潰を続けているという状況で話は終わっています。このままいけば、この世界もいずれ呑み込まれるってことかしらね。
意識ってのはこのくらいのことはやりかねない、なんてとこがこの小説のあたくしの面白がりポイントでした。「AKIRA」だって別の宇宙うみ出しちゃったしね。意識っていうエネルギーは何をしでかすことやら。
この短編集には「ゴルディアスの結び目」ほか3編が収めれていますが、あたくしの好みでいえば「岬にて」と「あなろぐ・らゔ」ですね。
残る1編「すぺるむ・さぴえんすの冒険」もおもしろかったですが、あたくしとは問いの立て方が違う。
長くなったので、それはまた次回。