第21話 3374 芳一

2005年03月03日 23時03分55秒 | Weblog

 私には8つ下の弟がいる。
私が小学2年生の時 、弟が生まれた。
私が中学の時、小学生になった弟が作文を見て欲しいといってきた。
なになに…
 耳なしほういちは、耳をちぎられてすごくいたかったと思う。
 でも、有名になれてよかったと思う。
って!「康広、耳なし芳一って、作り話やで~ほんまの話ちがうねんで~」と大笑い。
弟もしばらく一緒になって笑っていたのに、突然、泣き出した。
「え? ごめん康広、馬鹿にして笑ったんじゃないねんて…ごめん」
事実、馬鹿にして笑ったわけではない。
この作文を書いた弟がすごく可愛いかったから、なのだが…。

この時、男は女より繊細だ、女子、男子を笑うことなかれを知る。

しばらくして今度は弟が作詩を見て欲しいといってきた。
どれどれ…
 ビーチボール 空気をぬくと ただのビニールだ
………失笑。(をさりげなくごまかし…でも、なんだかこの詩、深い気がする…)
「いいと思う。私は好きだけど 」は姉馬鹿なのか?
翌日、弟は先生からやり直しを命じられていた。

私が残業後、疲れて家に帰ると、高校→大学と弟は青春の中にいた。
バレーボール部に所属する傍ら、
おしゃれになっていき、買った古着はシャツの裾位置、靴をはいた時のジーンズのたるみぐあいまでこだわっていた。
煙草の火のつけ方~吸い方研究、カラオケ・ドライブ用の音作り、車の運転~車庫入れ練習。
フロントガラスに似たような顔が二つ並ぶことを嫌がった弟は私を助手席に乗せてくれなかった…
後部座席からみる弟の運転は彼女が酔わないように細心の注意が払われていた。
弟の彼女に魅せる運転は助手席をかなり意識した設計になっていた。
すべてはモテる男になるために?! 真面目だった…。

本番に備える男の後ろ姿に、微笑む。
包容力は一日にして成らずを垣間見る。殿方も大変なんですね。
お内裏様とおひな様、二人並んですまし顔~。


※今日この話を書きながら「耳なし芳一」は本当にあった怖い話だったらどうしようと不安になる。
もし真実なら、私は弟に謝らなければならない。。。


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