先日宴会の前に立ち寄った北白川の「ガケ書房」で
吉野秀雄のエッセイ集を、飲みに行ってどこかで無くした。
それでアマゾンで調べたら、講談社文芸文庫に「やわらかい心」という
本があるので注文した。
ガケ書房は、一乗寺の恵文社みたいなコンセプトの書店で、
店の外壁が、文字通りガケのような石にかこまれている。
なぜ、「ガケ」かというと、コンセプトが「ロック」であるという。
その心に、ロックがあるならば、
本でもCDでも雑貨でも置いている。
そんな店になぜ、吉野秀雄の本があったのかというと、ショップインショップで
どこかの古本屋の委託でたまたま置いていたのである。
買う前に立ち読みをして、そこに八木重吉にふれた文があったから
購入した。
前々からずっと、詩人八木重吉とともに
それにもまして、その妻八木とみ子のことが気になっていて
重吉が夭折した後に、その子も次々に亡くなり
独りになったとみ子が、数年を経て
歌人吉野秀雄宅の家政婦となり、やがて結婚する。
そして二人は、並々ならぬ情熱をもって
八木の命日に、編纂した「八木重吉詩集」を出版する。
ぼくは、八木重吉の詩は、随分前から好んで読んでいる。
十代の頃よりずっと読んできている数少ない詩人のひとりだ。
でも、十年くらい前だろうか、たまたま見た彼ととみ子、そして娘の
三人が映っている写真を見、巻末の年譜を見てショックをうけた。
それ以後ずっと気になっていたのが、八木の死後の行く末だった。
アマゾンで調べたら、山口瞳が書いた「小説吉野秀雄先生」というのが
見つかった。山口は、鎌倉アカデミアという私塾で吉野の教え子だったのだ。
いままで、「年譜」だけでしかわからなかったことが書かれている。
この山口瞳の小説、冒頭からいきなり八木重吉の詩が引用されている。
その中の詩
★
悔 八木重吉
うなだれて
明るくなりきつた秋のなかに悔いてゐると
その悔いさへも明るんでしまふ