文屋

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◆八木重吉、八木とみ子、吉野秀雄、文で結ばれた愛情。そして山口瞳も。

2006年01月10日 20時06分40秒 | 





先日宴会の前に立ち寄った北白川の「ガケ書房」で
吉野秀雄のエッセイ集を、飲みに行ってどこかで無くした。
それでアマゾンで調べたら、講談社文芸文庫に「やわらかい心」という
本があるので注文した。

ガケ書房は、一乗寺の恵文社みたいなコンセプトの書店で、
店の外壁が、文字通りガケのような石にかこまれている。
なぜ、「ガケ」かというと、コンセプトが「ロック」であるという。
その心に、ロックがあるならば、
本でもCDでも雑貨でも置いている。

そんな店になぜ、吉野秀雄の本があったのかというと、ショップインショップで
どこかの古本屋の委託でたまたま置いていたのである。

買う前に立ち読みをして、そこに八木重吉にふれた文があったから
購入した。

前々からずっと、詩人八木重吉とともに
それにもまして、その妻八木とみ子のことが気になっていて
重吉が夭折した後に、その子も次々に亡くなり
独りになったとみ子が、数年を経て
歌人吉野秀雄宅の家政婦となり、やがて結婚する。

そして二人は、並々ならぬ情熱をもって
八木の命日に、編纂した「八木重吉詩集」を出版する。

ぼくは、八木重吉の詩は、随分前から好んで読んでいる。
十代の頃よりずっと読んできている数少ない詩人のひとりだ。

でも、十年くらい前だろうか、たまたま見た彼ととみ子、そして娘の
三人が映っている写真を見、巻末の年譜を見てショックをうけた。

それ以後ずっと気になっていたのが、八木の死後の行く末だった。

アマゾンで調べたら、山口瞳が書いた「小説吉野秀雄先生」というのが
見つかった。山口は、鎌倉アカデミアという私塾で吉野の教え子だったのだ。

いままで、「年譜」だけでしかわからなかったことが書かれている。

この山口瞳の小説、冒頭からいきなり八木重吉の詩が引用されている。

その中の詩



 悔    八木重吉

 うなだれて
 明るくなりきつた秋のなかに悔いてゐると
 その悔いさへも明るんでしまふ