部屋の整理をしていて偶然ナージム・ヒクメット(1901-63)の詩を見つけました。
映画『チェルノブイリ・ハート』(マリアン・デレオ監督)の冒頭、
この詩がゆっくりと流れていたそうです。
『生きることは、笑い事ではない・・・・・・。』
どう音読しようか、練習しようと思います。
心の奥で理解し、表現し、伝えるために。
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『生きることについて』
生きることは笑い事ではない
あなたは大真面目に生きなくてはならない
たとえば
生きること以外に何も求めないリスのように
生きることを自分の職業にしなければいけない
生きることは笑い事ではない
あなたはそれを大真面目にとらえなくてはならない
大真面目とは
生きることがいちばんリアルで美しいと分かっているくせに
他人のために死ねるくらいの
顔を見たことのない人のためにさえ死ねるくらいの
深い真面目さのことだ
真面目に生きるとはこういうことだ
たとえば人は七十歳になってもオリーブの苗を植える
しかもそれは子供たちのためでもない
つまりは
死を怖れようが信じまいが
生きることのほうが重大だからだ
この地球はやがて冷たくなる
星々の中の一つでしかも最も小さい星 地球
青いビロードの上に光り輝く一粒の塵
それがつまり
われらの偉大なる星 地球だ
この地球はいつの日か冷たくなる
氷魂のようにではなく
ましてや死んだ雲のようにでもなく
クルミの殻のようにころころと転がるだろう
漆黒の宇宙空間へ
そのことを今嘆かなくてはならない
その悲しみを今感じなくてはいけない
あなたが「自分は生きた」と言うつもりなら
このくらい世界は愛されなくてはいけない
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ナージム・ヒクメット(1901/1902-1963)
トルコ出身の詩人・戯作家・革命家。
作品を発表する毎に投獄された時期もあって、
獄中生活はトータルで十数年に及んだ。
1951年紆余曲折を経てモスクワに亡命したが、
その後、生きて故国の土を踏むことはなかった。
ナージムの作品がトルコで発禁処分を解かれたのは
彼の死の2年後のことだった。
広島の少女の詩『死んだ女の子』はナージムの詩。
海軍学校時代の写真(Wikipedia)
「死んだ女の子」の原稿と広島折鶴の会から没後のナージム・ヒクメットへ宛てた手紙
(Wikipedia)
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