goo blog サービス終了のお知らせ 

Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

三角関係のかたち(2)

2025年03月15日 06時30分00秒 | Weblog
 私見だが、「イノック・アーデン」を愛好する人には、共通点があるように思う。
 まず、夏目漱石が「イノック・アーデン」を激賞していたことはよく知られている。
 そういう事情もあってか、前期&後期「三部作」では、これでもかというほど三角関係に陥る男女を描いている。
 その漱石について、かつて江藤淳氏は、「嫂との密通説」を主張したらしい。

 「明治20年(1887)7月、長兄、次兄の二人が相次いで病死したので、三兄の和三郎直矩が夏目家の家督を相続し、9月に妻を迎えたが3ヶ月で離婚。翌明治21年に2番目の妻として登世と結婚した。
 漱石は同じ年の1月に塩原家から籍を抜いて正式に夏目家に復籍、9月には第一高等学校本科第1部(文科)に進学、それまでの下宿生活から自宅に戻った。
・・・
 登世と漱石は同じ年齢で、しかも同じ家の中で生活していたので、この二人の間には恋愛感情よりも更に進んだ不倫関係が存在したのではないかというのが江藤説である。」 
 
 真偽のほどは明らかでないが、それなりに説得力がありそうに思う。
 次に、「イノック・アーデン」に付曲したリヒャルト・シュトラウスも、不倫をしていた時期があるらしい。

 「もしシュトラウスが大きな共感をもってこの詩に音楽をつけたのだとすれば、その理由のひとつは、この筋が彼にとっておおいに身に覚えのあることだったからではないだろうかと想像する。つまりシュトラウス自身、結婚よりかなり以前に、年上の人妻と交際していたということがあったのだ。ドーラ・ヴィ―ハンという美しい女性で、シュトラウスの恩人だったチェリスト(彼の若書きのチェロ・ソナタを初演してくれたりした)の妻だった。」(公演パンフレットp24~岡田暁生氏の解説)

 なるほど、「ばらの騎士」のネガは、「イノック・アーデン」だったのかもしれない。
 さらに、シュトラウスのこの作品を”発掘”したグレン・グールドも、人妻と不倫関係に陥っていた時期があった。

 「グールドの演奏仲間にはルーカス・フォスという優秀なピアニストが居たのだけど、彼の妻で画家のコーネリアス・フォスと不倫してたワケなのだ。
 グールドが引退して4年後、コーネリアは夫との関係がうまくいかなくなり、家を出て、彼の家の近くに子連れで家を構え暮らすようになって暫くしてグールドが可笑しくなってくる(涙)
 アイドル顔だったグールドはストーカーになり、常備薬を服用し杉て、頭はハゲてきて、かつての面影どこっ?になってしまう(号泣)
 ルックスも性格も惨憺たるものになった挙句に、コーネリアスは画家なのに『絵を描くのなんかやめちまえ』といいだしたものだから、彼女はグールドの偏執凶に耐えきれず『うまくいかなかった』はずの夫のもとに戻る。

 なるほど、グールドの異常なやつれ方の背後にはこんな事情があったのか!
 ちなみに、シュトラウスの作品について、グールドはこう酷評している。

 「語弊はあるにせよ、《イノック・アーデン》は空疎な作品だ。ここまで居心地の悪くなるほど感傷的な音楽はシュトラウスには存在しないからだ。」(宮澤淳一先生訳)

 この曲を聴いてグールドが「居心地が悪くなる」理由は言うまでもないだろう。
 ・・・というわけで、漱石、シュトラウス、グールドはもしかすると「同じ穴のムジナ」なのかもしれない。
 いずれにせよ、人妻と浮気相手は確実に「悪い」と言う点が、「誰も悪くない」ストーリーである「イノック・アーデン」とは大きく違っている。