百田氏は、第一の謎として、亡くなった元ご主人(享年28)の父が、「夜中の三時頃に貸していたハイエースのバンを返してもらうために息子の家に行った」点が不自然であると指摘しているが、必ずしもそうではないと思う。
というのは、元ご主人の職業は「風俗店勤務」とあるから、半ば昼夜逆転の生活を送っていて、午前三時頃までに帰宅するという生活パターンだった可能性が考えられるからだ。
とはいえ、私も、「奥さん(X子さん)が義父を自宅に呼んだ」という百田氏の推理は当たっているように思う。
父が「夜中の三時頃に目覚め」、直ちに息子宅に向かったのは、電話があったからだと考えるのが自然だからである。
ここで、百田氏は、「X子さんに呼ばれた」点を父が述べていない点が不可解だと指摘する。
だが、これも、当時の状況を考えれば容易に理解できる。
動画で百田氏が触れていない最重要ポイントは、
(元ご主人の)「体内からは致死量の覚醒剤が検出された」(p24)
という事実である。
つまり、死の直前、元ご主人は大量の覚醒剤を使用していたと考えられる。
そうすると、彼は、幻覚・妄想などのために(ナイフを持つなどして)暴れており、X子さんが父に助けを求めたというのが、一番あり得るスジだと考えられるのである。
ここで、X子さん・父も元ご主人が覚醒剤を所持・使用していたことを知っていたと仮定してみる(あくまで仮定である。)。
この場合、X子さんと父との実際のやり取りを警察に明らかにしてしまえば、自分たちも覚醒剤所持・使用の点について警察から追及されることは必至である。
したがって、X子さんと父は、このやり取りを出来るだけ隠したいと考えるのが普通だろう
そこで、父は、「貸していたハイエースのバンを返してもらうために息子宅を訪れた」という事実ではない口実を述べた可能性がある(もっとも、その後通信記録を警察から指摘され、真相を話したかもしれない。)。
とはいえ、この仮説にも難点がないわけではない。
薬物事案で、同居している家族も所持・使用の事実を知らないというケースは結構ある(私も数か月前、同じ部屋で暮らしている配偶者が約3年気づかなかったという事案を弁護した。)。
なので、自身は関与していないのであれば「知らない」と述べて通せば済む話なのであり、あえて手の込んだ虚偽を述べたとすれば、X子さんにおいて、「絶対に第一発見者にはなりたくない」やむにやまれぬ理由があったと考える方が、より整合的と考えられるのだ。
そして、この場合、X子さんは、父に対し、実際に「夫がバンを返したいと言っています。もうすぐ仕事から帰って来るので、夫が寝てしまう前に鍵を取りに来て下さい。玄関の鍵は開けておきますから、2階の夫の部屋に行ってください」などと電話で呼んだ可能性が考えられる。
そうだとすると、この場合の父は、(一応)虚偽は述べていないということになる。
他方、第二の謎=当時X子さんと親密な関係にあったYさんの行動については、私も百田氏の推理は当たっていると思う。
Yさんが、X子さんから呼ばれて父よりも先に自宅を訪れ、そこでX子さんにいろいろとアドバイス(父を呼ぶ、玄関のドアを開けておく、など)を行ったと考えれば、一連の出来事をスムーズに説明出来るからである。
・・・さて、真相やいかに?