バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

うちの年賀状

2017-01-12 14:05:55 | ライフスタイル
ブログ書くことから遠ざかっていた。
これを書こうと頭に描くものの、いつもちょっと淋しいエンディングになりそうだから、書こうかな、やっぱり今日はやめておこう。こんなことを繰り返していた。

何か書こうとすると、どうしても話はバンにいってしまう。
口を開くとバンの話になってしまい、子ども達には「また、バンー!?」と言われたけど、最近はバンはねって話し始めても皆スルーするようになってきたから、淋しいエンディングにならないように気をつけ今日はバンネタで『バネの風』復活です。

年賀状どうするか。
娘が1歳の時にその成長を鉛筆デッサンで書き留め年賀状にした。これが我が家のデッサン年賀状のスタートだった。
これは自分で言うのもなんだけど、皆さんに好評で、年賀状楽しみにしてますと声をかけられることたびたび。ではしばらく続けようと、娘が鉛筆持って字を書くようになった、三輪車乗れるようになった、小学校に入学したなど、成長の節目を絵で切り取ってきた。

子どもが小さい頃はいい。
娘が小学高学年になる頃には「恥ずかしいからやめてくれ」とか「バンの絵にしてくれ」などとささやかな抵抗にあうようになった。
そりゃそうだよね。その気持ち分かる、分かる。自分だってもしこんな風に父親にやられ、見ず知らずの人に「あー、あの年賀状の子ですか?」なんて言われたら、自分が子どもの頃だったらそれはとっても嫌だ。

そんな本人の抵抗を交わしながら、娘が成人を迎える年までは続けようと決め、成人式の絵でめでたく終了!と思っていたものの、「ここでやめてはだめだろう」とか、いっそのこと孫が生まれるまで描いて、その後は孫の絵にしたら? などいろいろなご意見いただき、ずるずると大学生時代を描き続けた。
そして娘が社会人となり遠方にいる2016年の年の瀬、何描く?
ここから方針転換で、ドーンと自分が描いた油絵にするという方法もあった。超インパクト大でしょう。油絵の裸婦像。しかし一般には裸婦は抵抗あるだろうと家族から却下。
ではこうしよう。
今一番心を占め、溢れそうになるのに外に出さないように押さえ続けているものを、この際出してしまおう。このハガキサイズの紙にアウトプットすれば、少しは容れ物にゆとりができるかもしれない。

バンの絵を描く。
これが苦行の始まりだった。

まずいつのバンを描くか。
若く溌剌とした時を描きたいと思うけど、そんな時があったはずなのにその姿が全く思い出せない。つらつらと過去を振り返っても、いつも哲学者のような目でこちらを見ていたバンの姿しか浮かんでこない。
それでも元気いっぱいの時の写真を引っ張り出し、当時を振り返りながら描き始めた。

写真をじーっと見て、イメージを抜き取り、目の奥で一旦絵にして、そして紙に落としていく。
大抵こうやって描けば渾身の1枚ができるのに、描き上がったバンはイメージ通りでななかった。
一緒に庭を走った日々を思い返しているのに、バンの顔が悲しそう。
何がだめなんだろうと目を直し、口を直し。
描いたものをぐしゃぐしゃにして、もう一度最初から描き直して。
冬期講習を終えた深夜、教室で何度も描き直したけど、結局時間切れで、納得の一枚にならないまま印刷。

毎年書き上げた年賀状を、「いい絵だな」と振り返り自画自賛している。
それは絵の出来がよいというのではなく、娘の成長のシーンを想い出しながら心を膨らませて描いているときの満足感が蘇るから。
この絵は後に、「いい絵だな」と手にとって見るようになるだろうか。そう思いながら何度も描き直したけど、元旦に届くように印刷して投函するにはタイムリミットの夜だった。

正月は実家で迎え、自分が実家宛に出したバンの絵の年賀状を実家で見た。
母はすかさず
「バン、悲しそうな顔している。」

帰宅すると郵便受けにどっさり入っていた年賀状の束の中に、宛先不明で戻ってきたバンの絵が数通。このバンもじっとこちらを見つめている。

こうやってアウトプットして、時間の経過に助けられ少しずつ収めていくしかないのだろうか。

それから数日後、バンの生家、川上村のHさんからの年賀状が届いた。
16年前の4月、川上犬が生まれたから引き取りに来て下さいと連絡があって向かったお宅。
数匹いた子犬の中で最後までじゃれついてきた子がバンだった。
そのHさんの年賀状に「バンちゃん愛おしい目をしていますね」と書き添えられていた。

Hさんの年賀状を見て、あの日のことが鮮やかに蘇った。
まだ雪残る川上村に子犬を迎えに行き、バンと初めて対面したこと。
親や兄弟から離されたことに気づいたバンが、川上村から最初の峠を越えるまで遠吠えしたこと。
帰りの車の中で名前をつけたこと。
うちに戻り車から降ろすと、初めて見るアリを追いかけ、庭の月見草に埋もれ、芝生でゴロゴロしたこと。
この日から始まったバンとの16年8ヶ月。
いろいろ浮かんできた。

そうだね、じっと見ると、愛らしい顔だね。


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