ciel étoilé…

一心に満天の星みる眼(まなこ) 輝き清(す)めり幼な子の夜

adieu…

軽トラを走らせ友が大声で別れのことば告げし初夏来る

après la guerre…

節くれた百姓の手を口惜しむ「戦後」は農を毀し畢(おわ)んぬ

papillon…

蝶楽し新樹のかげにいまし見る 初夏(しょか)揺り起こす澄みし生命(いのち)よ

lune voilée…

月の音聴く心地する 花人のさざめき絶ゆる朧月夜は

lumière de fleur…

身の辺(ほと)りひとりの春にかたちあり 寝(いぬ)るかたはら花明り置く

beau coeur…

桜いろ四方を染めたるころに生(あ)れ 凸(つばく)みひとつ持ちて生きたし

yamato…

へこたれる私にはこべ 桜色染みる大和のせせらぎの風

petit bonheur…

佇(たたず)めば春のこころはとほけれど 良き人たらん淡墨(うすずみ)の空

chiot…

農さなか親を慕ひて戯るる子犬よきみに春の風吹く

jeunesse…

思春期のこころの花に風立ちて春の夜闇(やあん)を転がる寝息

mon arome cheri…

三月の澄みたる黄金月の夜に未だ見ぬ彼方とどけ花の香

fil sorouge…

紅き糸いづこへ失せぬ寒暁の彼方につづくうろこ雲追ふ

cuisine maison…

家々の燈(あかり)少なき山部(やまべ)の娘(こ) 賄(まかな)いの手の美しきかな

prière…

音消えし宙(そら)を幾つも流れ星あの時あなたと手をつなぎしを